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『会いたかった』を作詞した、秋元康のすごみ 

音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載ではいしわたりが、歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の5本。

 1 “会いたかった”(AKB48『会いたかった』/作詞:秋元康)
 2 “顔見たいから、服見てない”(千鳥 大悟)
 3 “運が良かっただけって言ってる奴って出世する”(千原兄弟 千原せいじ)
 4 “裁判員裁判とジョンソン・エンド・ジョンソンって似てな〜い?”(ぱーてぃーちゃん)
 5 “やっちゃえNISSAN”(日産自動車の広告コピー)

日々の雑感をつづった末尾のコラムも楽しんでほしい。

『会いたかった』を作詞した、秋元康のすごみ 

先日、テレビ朝日の『関ジャム 完全燃SHOW』の秋元康さん特集に出演させて頂いた。秋元さんの作詞のすごさについて色々と話したのだけれど、AKB48の『会いたかった』については話すことが出来なかったのでここで書こうと思う。

AKB48の「会いに行けるアイドル」というコンセプトをそのまま歌にしたような、名刺がわりとも言うべきこの歌をおそらくほとんどの人は彼女たちらしい元気な歌だなあと、どちらかというと何となく聴いているのではないかと思う。でも、私はずっとこの曲は普通じゃないと思っている。

というのも、これまでに『会いたい』の歌はこの世にたくさんあるのだが、『会いたかった』の歌となると、そのものずばりのタイトルはこの一曲しかないのである。「会いたかった」は特にめずらしい言葉ではない。それでも、この曲以外にそのタイトルの歌はないのは、たぶん、この「会いたかった」という言葉は一般的な作詞のやり方では辿(たど)り着けない場所にあるからだと思う。

会いたいと思っていた人にやっと会えた時、「わーっ、うれしい!」となるのは誰でも一緒である。しかし、その場でノートなりスマホなりを取り出して、「ちょっと待って! この気持ちを歌にするから!」と、その場で歌詞を書き始める人など、いるわけがない。会いたかった人に会えたならば当然、その人との時間を誰でも全力で楽しむもので、もしその気持ちを歌にするにしても、帰って家で一人になってから思い出して書くはずだ。

が、そうしていざ書こうとした時には、肝心の「会いたかった」というあのよろこびの気持ちは、「また会いたい」「次はいつ会える?」「ずっとそばにいたい」みたいな別の感情にすり替わってしまいがちだ。だから、自分の気持ちに素直に歌詞を書こうとすると、「会いたかった」の歌は「会いたい」の歌になってしまう気がするのである。

おそらく、秋元さんは彼女たちのステージを見た時、「会いたかった」と歌っていたら機能的だと思って、当たり前に書いたのだろうと思う。でもそれは当たり前な作詞ではなかったのである。

「会いたかった」の他にも、誰もが経験していても、まだ歌になっていない言葉は世界中にたくさん隠れているのだと思う。いや、隠れてもいないのに、歌詞を書こうとする瞬間には書き手から見えない場所にあって、気づかれないままでいるのだ。

『会いたかった』を作詞した、秋元康のすごみ 

2月27日放送のテレビ朝日『テレビ千鳥』でのこと。ゲストの広瀬すずさんが可愛すぎてトークは緊張してしまって無理と言う大悟さんの発案で、さまざまなスポットで一瞬だけ広瀬さんが現れる「一瞬すず!」の企画が行われた。町中を移動するロケバス車内からサファリパーク感覚で盛り上がった後、テレビ局に入り、メイク室の鏡越しに廊下を通り過ぎる彼女を見つけた大悟さんが、デレデレしながら「すごいんが、服の色上下何と何か分かる? すごない? 顔見たいから、服見てない。3回見たのに、上と下の服の色、まったく分からん!」と爆笑していた。

でも、基本的に服というのはそういうものなのではないかなとも思う。仮に昨日、仕事で会った人の服を覚えているかと聞かれても、申し訳ないがまったく思い出せない。

いわゆるファッションリーダー的な人なら服に注目が行くとは思うが、おそらく私を含めたほとんどの人は「服」を着ているようでいて、「印象」を着ているだけなので、印象としてその人に合っていれば、何を着ていても記憶には残りにくいように思う。

普段ラフな服ばかり着ている人がビシッとスーツを着ていたり、逆に堅いイメージの人がゆるい服を着ていたりしたら、違和感があるのでもちろん覚えているが、そうでなければ服装など基本的にはほとんど覚えていないものである。

余談だが、さっきDJ KOOさんをテレビで見かけた。ド派手な服を着ていた気がするけれど、何色のどんな服だったかは覚えていない。あんなに派手なのに。いかにも彼らしい印象の服だったから記憶に残っていないのだと思う。

服を買う時、「また似たような服を選んでるなあ」と思うことがよくある。でも、じゃあ買わなくていいかというと、私は「服」ではなく「印象」を買っているのだから、すでに持っている服がくたびれてしまっているのなら、いくら似ていても「清潔感」という印象をあらためて買い直さなければならない。そんなこんなでクローゼットの中は似たような服ばかりなのだけれど、それはたぶん、みんな一緒なんじゃないだろうか。

『会いたかった』を作詞した、秋元康のすごみ 

2月22日放送の読売テレビ『にけつッ!!』でのこと。M-1グランプリ2021決勝戦をきっかけにブレークを果たしたモグライダーがゲストだった。彼らは、去年のM-1に出るまではネタらしいネタは作っていなくて、舞台でボケのともしげさんがあたふたする様子を、ツッコミの芝さんが好き勝手喋(しゃべ)っていじり倒していただけだったという。それではいけないと、ちゃんとネタを作ってやってみたのがM-1決勝のネタだったそうで、芝さんが「今思えばひどいやり方してたと思いますね。でも、何とか上手(うま)くハマって、運良く行けたんですけど……」と言うと、その話を聞いていたせいじさんが「運が良かっただけって言う奴って出世するって聞いたことがある」と言った。

なるほど。それは一理あるかもしれない。でも、常套句(じょうとうく)で「いやあ、たまたま運が良かっただけですよ」と言っている人と、本心で「運が良かっただけです」と言ってる人は、また少し違う気がする。日本人は何かにつけて謙遜する癖が染み付いているので、大事なのは本心かどうかだと思う。

話は変わりますが、私は今年で無事デビュー25周年を迎えることが出来ました。ここまで来られたのは、運が良かっただけだと思っています。本当に、本当に。いや、マジで、マジで。

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