映画「オートクチュール」ディオールを舞台に 最高峰の服作り 美の技と人間模様と

世界でも最高峰の服作りの場であるパリ・オートクチュール。そのアトリエでの仕事の段取りから職人技や人間模様までつぶさに物語る映画「オートクチュール」(シルヴィー・オハヨン監督)が公開されている。
舞台はオートクチュールメゾンの中でも代表的な存在で、パリの高級ブティック街モンテーニュ通りにあるクリスチャン・ディオール。そのアトリエ責任者で、引退を間近に控えたお針子のエステル(ナタリー・バイ)と、パリ郊外の団地に住む移民2世の貧しい少女(リナ・クードリ)が反発し合いながらも、共にコレクションを作っていく姿が描かれる。
物語の中には高価な生地や道具の扱い方、様々な縫い方や1ミリの間違いも許されないほど厳格な仕立て方など服作りの本格的な描写が何度も出てくる。ハサミを落としたら厄払いに手を洗うといったお針子の風習なども。それらはディオールのアトリエで働く現役の責任者が監修した。ディオールの象徴的なアイテムであるバージャケットや繊細かつ大胆なプリーツドレス、貴重なスケッチ画などブランドのアーカイブ作品もふんだんに見られる。
ファッションの世界だけでなく、2人の微妙な感情やパリの食文化、格差社会、大女優バイらによる老いや孤独なども表現されていて、様々に感慨深く楽しめる映画になっている。
新宿ピカデリーほか全国公開中。
編集委員・高橋牧子