三陸の景勝、味覚、街がよみがえる海の町 宮城県・気仙沼市

未曽有の大惨事をもたらした東日本大震災から11年が過ぎた。その間、復興途上の町を幾つか訪ねたが、気仙沼から大船渡にかけては機会がなかった。
そこでNHK朝のテレビ小説「おかえりモネ」の放映が終わった後の1月、東北新幹線一ノ関駅から大船渡線の列車に乗って行ってきた。
灯台モニュメントがお迎え

着いた気仙沼駅は高台なので津波を免れ、以前と変わらない「ようこそ気仙沼へ」と書いた白い灯台のモニュメントに迎えられ、ホッとした。
ところが中心街だった港周辺にタクシーを向けると、町並みは跡形もなく、記憶と少しも結びつかない。ただ高台のホテルがかろうじての手がかりで、以前、行った店や会った人の名前や顔は浮かぶのに、場所はまったく見当がつかない。もどかしい思いのまま魚市場前で降りた。

魚市場はまったく新しく建て替わったが、「市場は町の心臓部」と運転手氏。早朝には船が集まり、競り場には多種の魚が並び、活気が戻っているという。
ご存じ気仙沼は古くから遠洋、近海漁業の基地として発展した全国有数の港町。カツオ、カジキ、サンマ、サメ(フカ)など全国屈指の水揚げを誇る。とくに「フカヒレ」日本一の町として名高い。
日本唯一の「シャークミュージアム」

それにちなんで以前もあった日本唯一のサメの博物館「シャークミュージアム」が新しく建て替えられ、実物模型や写真、資料など以前をしのぐ充実ぶり。よくできた展示をじっくり見て回った。併設の魚介の保存、流通に欠かせない氷をテーマにした「氷の水族館」は、透明な氷に封じ込められて魚の姿形はよくわかるが、ちょっぴり切なかった。

1階は「気仙沼・海の市」になっていて鮮魚をはじめ水産加工品、地場産品、菓子店、飲食店も整然と並んでいる。菓子店に並ぶ「ホヤぼーやサブレー」が懐かしかった。

市場から港と高台の町を左右に眺めながら整備された道を歩いて、点々と現れる新しい建物が目立つ内湾エリアへ行った。「お魚いちば」「かもめ食堂」「気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ」などシャレた建物が並ぶ。

「迎」の文字が目に付く3階建ては、カフェやレストラン、雑貨・土産物店など旅人歓迎の商業施設「迎・ムカエル」。波一つない入り込んだ海辺には、気仙沼湾クルージングの赤と黒の船体の船が待機。観光の顔はよみがえっているように見えた。

〈交通〉
・JR大船渡線気仙沼駅下車
〈問い合わせ〉
・気仙沼観光コンベンション協会
0226-22-4560
※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。
記憶していたまちの風景がごそっとなくなるのはとても悲しいですね。おしゃれな施設や市場をつくるなど復興に向け頑張られている姿が思い浮かび応援したくなりました。