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永遠の恋人、悠遠の山脈、要塞の村々……スペイン・アラゴン州はいざなう

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「テルエルの恋人」のミイラが眠る石棺。2人の手は触れていないが、床の影はつながれて見える。この世で結ばれなかった悲恋©Fundación Amantes de Teruel

スペイン北東部、アラゴン州・テルエルのサン・ペドロ教会。一組の男女のミイラが霊廟(れいびょう)に横たわる。この2人はついぞ結ばれることなく非業の死を遂げた13世紀の恋人同士と伝えられる。亡きがらを覆うのは石膏(せっこう)の彫刻で、手をつないでいるように見えるが、ぎりぎりのところで触れあっていない。イベリア半島に攻め込んだイスラム勢力との攻防と、身分の壁に阻まれた2人の愛だったが、いま床に映る影に目をやると、2人の手はしっかりとつながれている。800年の時を越えた、壮大で悲しい愛の物語からアラゴンの旅を始めよう。

永遠の恋人、悠遠の山脈、要塞の村々……スペイン・アラゴン州はいざなう

世界遺産の教会に眠っていた「テルエルの恋人たち」

1200年代初め、テルエルにイサベルとフアンという若いカップルがいた。イサベルは富豪の娘。貧しい育ちのフアンとの結婚はとうてい許されなかった。当時イベリア半島はレコンキスタ(国土回復運動)の世。フアンは「戦に加わって裕福になり、5年後にイサベルを迎える」と決意し、テルエルを離れた。ところが約束の期限である5年を過ぎてもフアンは帰還せず、イサベルは父親の勧めた縁談をのんでしまう。すぐさま結婚式が執り行われたその日、テルエルに戻ったフアンは、悲嘆にくれて亡くなってしまった。後悔と悲しみにさいなまれたイサベルは、亡きがらが安置されていたサン・ペドロ教会に駆けつけ、フアンに口づけをした後、後を追うように息を引き取ってしまった。2人は二度と離れることがないようにと、一緒に同教会に埋葬された。

それから約350年が過ぎた1555年、同教会で礼拝堂の工事中、2体のミイラが発見される。1619年には、イサベル・フアンの物語と2人が礼拝堂に葬られたことを記した古文書も見つかった。伝説の裏付けとして、大きな関心と驚きを巻き起こしたことだろう。以降、ミイラは常に安置・公開された。戦後、テルエルをあげて費用を募り、石棺が調えられ、著名な彫刻家・建築家らの手によって今の姿になった。2004年にはミイラが石棺から取り出され、「炭素14年代法」による測定の結果、性別と年代は伝説と一致したという。

触れそうで触れない2人の手。石棺の格子状の隙間からは、横たえられたミイラが見える©スペイン政府観光局
触れそうで触れない2人の手。石棺の格子状の隙間からは、横たえられたミイラが見える©スペイン政府観光局

届きそうで届かない2人の手は、この世で結ばれなかった悲恋を象徴しているのだろう。この物語は「スペイン版ロミオとジュリエット」としても知られる。伝説や物語ゆかりの地は世界各地にあるが、その「主役」がテルエルでは目に見える形で残され引き継がれている。アラゴン州南部、人口3.5万の小さな街を訪れた者は、その説得力に心を打たれる。

テルエルでは、この恋愛悲劇を再現した野外劇の祭典「イサベルの結婚式」が毎年あり、多くの観光客を集める。「愛の街」テルエルに息づく物語は、地元の、アラゴンの誇りなのだ。

テルエルの「イサベルの結婚式」©DiegoandLori.com
テルエルの「イサベルの結婚式」©DiegoandLori.com

そんなテルエルの街の教会群は、独特のエキゾチックな美しさをまとう。イスラム教建築とキリスト教建築が融合した「ムデハル様式」で、スペイン国内に広く分布し、他のヨーロッパ諸国の教会と一線を画すオーラを放つ。れんがやタイル、金属の表面にうわぐすりを施す琺瑯(ほうろう)が駆使された装飾や、幾何学模様や星などのモチーフが使われたデザインが特徴で、イスラム教とキリスト教が交錯したイベリア半島固有の様式だ。20世紀に入って修復されネオ・ゴシック様式に変わったが、「恋人たち」のサン・ペドロ教会の壁、礼拝堂、天井を覆う装飾には息をのむ。

テルエルのサン・ペドロ教会©アラゴン州政府観光局
テルエルのサン・ペドロ教会©アラゴン州政府観光局

天井には、紺色の背景に浮かび上がる金色の星や紋章、十字架など中世と関連があるモチーフが多用されている。また、赤と金をメインカラーにした内装は、東洋やビザンティン建築をほうふつとさせる。

テルエルのサン・ペドロ教会©スペイン政府観光局
テルエルのサン・ペドロ教会©スペイン政府観光局

同教会は、市内のサンタ・マリア大聖堂やサン・マルティン教会の一部、エル・サルバドール教会の一部とともに1986年、「テルエルのムデハル様式の建築物」として世界遺産に登録された。また、サラゴサ県の六つのムデハル建築も追加され、2001年に「アラゴンのムデハル様式の建築物」として再登録された。

テルエルのサンタ・マリア大聖堂(旅行会社エン・デスティーノ社提供)
テルエルのサンタ・マリア大聖堂(旅行会社エン・デスティーノ社提供)
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