「ラウンジ感覚」広い室内で先進技術を楽しむ 日産のピュアEV「アリア」に試乗

日産自動車がピュア電気自動車「アリア」の発売を開始した。発表は2020年7月。約2年待って、ようやく22年4月に、前輪駆動の「アリアB6」に試乗。まずこのモデルからデリバリーが始まるそうだ。
アリアは全長4595ミリ、全高1655ミリのクロスオーバー型SUV。ちょっと大きめサイズで、そのぶん、余裕ある室内空間を特徴とする。トヨタ自動車が5月12日に発売したピュアEV「bZ4X」(全長4690ミリ、全高1650ミリ)と外寸は近い。

アリアのよさは、ひとつはスタイリングだ。クリーンな面作りで、全体に洗練された印象が強い。いっぽうで、黒いツヤありのパネルをグリルの代わりにはめこみ、上下幅の狭いヘッドランプと、Vモーションなる昨今の日産車のシンボルといえるLEDによるポジションランプが、斬新さで強く目を惹(ひ)く。
ルーフラインも個性的で、きれいな弧を描くような輪郭が、背が高めのプロポーションと合わさって、それなりの迫力をもつ。さらにそこにシャークフィンと呼ばれる独特な形状のアンテナが2本つく仕様も(オプションによる)。いままでと違うクルマ、という印象なのだ。

このあと、e-4ORCE(イーフォース)と名づけられた2モーターの全輪駆動仕様や、容量91キロワット時のより大容量バッテリーのB9が追加される予定だ。日産の技術者によると、四つの車輪の駆動力を走りに合わせて最適制御する技術には強い自信を持っているとのこと。魅力的に思えるが、「B6」の前輪駆動しか乗っていないとはいえ、これもけっして悪くないと私は思った。
のけぞるような加速はないものの、走りは力強い。モーター車のつねで発進はスムーズで、そこからぐんぐん加速していくときは、パワーの出方が気持ちよく感じられる。
ステアリングホイールの操舵力は、ドライブモードセレクターで「スポーツ」を選ぶと適度な重さとなり、とくにカーブでは、低重心のボディとやや硬めに設定されたサスペンションシステムのおかげもあって、自然なかんじで気持ちよく曲がっていける。ここは抜かりがない。

アリアは、回生ブレーキといって、アクセルペダルを離すと摩擦を起こして発電しバッテリー充電が行われる仕組みを活かした「eペダル」も装備。これは日産ならではの装備。
eペダルを使うと、アクセルペダルを踏む力をゆるめると制動力が働く。そのためブレーキペダルをひんぱんに踏む必要がなくなり、アクセルペダルの戻しかげんを右足で調整することで、得られる制動力も変わる。いわゆるワンペダル走行。慣れるとなかなか楽チンだ。ボルボのEV「C40」も同様の仕組みを採用している。

もうひとつ、アリアには大きな特徴がある。いわゆるコネクテッド技術を追求している点。なかでも特筆すべきは、同一車線内ハンズフリー走行を可能にしている「プロパイロット2.0」がさらに改良されたことだ。
アリアでは、カーナビゲーションに準天頂衛星「みちびき」を使う。そのため精度が大きく向上し、従来では地図上の車両の位置における誤差が10ないし15メートルだったものが、なんと50センチに縮まっている。同一車線内ハンズフリー走行の支援がより的確になっているのだ。
2775ミリのホイールベースと、エンジン、変速機、左右輪の差動装置、排気管といったものがないためのスペース効率のよさを活かして、室内空間は広々している。日産では「ラウンジ感覚」などという。私がおもしろいと思ったのは、「アマゾン・アレクサ」も搭載できること。

音楽のストリーミングも(契約すれば)可能だし、自宅がスマートホーム化していれば、たとえば突然の気温の変化をみて、自宅のエアコンを22度でオンにして、などという音声指示も車内から可能なのだという。
さきにフォルクスワーゲン・ゴルフなどにもオプション設定されている技術であるが、実際に(音楽だけでも)体験できたのは、このアリアが私には初めてだ。クルマが従来のクルマでなく、あたらしいモビリティになってきているのだ。
アリアの価格は「B6 FWD(前輪駆動)」が539万円、「同Limited e-4ORCE」が720万600円、「B9 Limited FWD 」が740万800円、「同 Limited e-4ORCE」が790万200円。
写真=筆者撮影
【スペックス】
車名 Nissan Ariya B6 FWD
全長×全幅×全高 4595×1850×1655mm
電気モーター 前輪駆動
最高出力160kW
最大トルク300Nm
バッテリー容量 66kWh
一充電走行距離 約470km