日常と絶景、絵になるギャップ 神戸・滝の茶屋駅

神戸の繁華街・三宮から、山陽電鉄の普通列車で西におよそ30分。降りたらすぐ、眼下に瀬戸内海の大パノラマを望める駅がある。神戸市垂水区にある「滝の茶屋駅」だ。たぐいまれな眺望を誇りながらも、駅の中や駅前に目を向ければ、そこは平然と人々の行き交う郊外の日常。背景の美しい海と、飾らない日常風景とのギャップが、どこを切り取っても絵になる世界を生み出していた。(訪問:2017年5月)
連載「海の見える駅 徒歩0分の絶景」は、アマチュア写真家の村松拓さんが、海のそばにある駅で撮った写真を紹介しながら、そこで出会ったこと、感じたことをつづります。
紀伊半島から淡路島まで望む大パノラマ
訪れたのは、2017年5月。以前本連載で取り上げたJR神戸線(東海道線・山陽線)の須磨駅を訪れた後、山陽電鉄に乗り換えて滝の茶屋駅へと向かった。
途中の須磨浦公園駅を過ぎると、窓の外が一気にまぶしくなる。目と鼻の先には、一面の瀬戸内海。海との間に、並行するJR神戸線と国道2号を見下ろしながら、山陽電鉄は山側の少し高いところをひた走る。東京近郊ではなかなか味わえない開放的な車窓に見とれているうちに、列車はするすると減速し、滝の茶屋駅に到着した。
扉が開くと同時に、風景を切り取っていた窓枠もなくなる。現れたのは、海と空の大パノラマ。ホームを覆う屋根も一部にあるだけで、まるで列車からそのまま展望台に降り立ったような感覚だ。

滝の茶屋駅のホームは、標高およそ25メートル。急な崖の中腹にある。おそるおそる柵の外を見下ろすと、さっきまで車窓に見えたJR神戸線と国道2号がはるか眼下にあった。ここにJRの駅はないため、列車も車もびゅんびゅんと過ぎ去っていく。
崖の下の喧騒(けんそう)をよそに、滝の茶屋駅のホームはいたって静かだ。人もまばらになったホームで、改めて海をじっくり眺めてみる。まず目に入ったのは、西にある明石海峡大橋と淡路島。地図で測ってみると、ここから淡路島までは6キロほどしかない 。

一方、ホームの正面、南から南東にかけて島はなく、かすんだ水平線が横に伸びる。目を凝らすと、30キロ以上離れた紀伊半島の稜線がうっすらと見えた。そして、明石海峡に近いこともあってか、手前の海を右から左から、大小さまざまな船がそれぞれのスピードで横切っていく。

常に景色が変わるため、ぼうっと一点を見つめているだけでも飽きない。ホームから降りてほとんど歩かぬまま、しばらく淡い青の景色を目に焼き付けた。
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関西住みですが、こんなにも絶景の駅があるとは知りませんでした。ここが最寄りの駅だと電車を待つまでの時間も楽しめそうですね。
この光景,50年も前に車窓から見て覚えていた.あれから山陽電車の車両は新しくなってしまったが,青い海と空は変わっていない.
決して平穏なだけでは無い水平線ですが、
そのコラボレーションに、私も、心惹き付けられています。