〈243〉住む人に合った動線で、暮らしも、家事も、片づけもスムーズに

Kさんご夫婦(40代)
東京都世田谷区 / 87.4㎡ / 築14年 / 総工費1700万円
Kさんご夫婦は40代の共働き。この連載の読者でもあり、私たちに住み替えのためのリノベーションの依頼をしてくれました。元々、都内で持ち家のマンションに住んでいましたが、収納が少ない、生活動線が不便など、小さなストレスが積み重なって住み替えを決意。
年齢を重ね、ゆったりと静かに暮らせる環境を求めるようにもなり、新しい住まいは閑静な住宅街のマンションを選びました。1階の物件ですが、実際は少しだけ下がった半地下。日差しがさんさんと入るわけではありませんが、暗さや湿気を感じることがない構造になっています。
さらに、お二人で昼と夜と時間帯を変えて訪問して、自分たちの感覚でチェックした上で、半地下であることでより静かに暮らせると、このマンションを購入しました。価格は、同じエリアの中でややリーズナブルでした。

リノベーションするのにあたり、まず今まで住んでいた家で、どんなことにストレスを感じていたのかを、ピックアップしてもらいました。それらの解消が、居心地いい家への第一歩です。
中でも、私たちが注目したのは、仕事から帰宅した後の動線が悪いこと。お二人ともフルタイムで仕事をしているので、帰宅してからの時間の使い方は大切。素早く着替えて食事や家事をする。翌日に備えて入浴して就寝する。そして翌朝は、さっと身支度をして出勤する。これらがスムーズにできることが、新しい家では重要になると考えました。

今回のリノベーションのコンセプトは「エスコート」です。まるで、執事がついて「エスコート」してくれているように、暮らしが回る家にしました。具体的には、それぞれ用途の違う廊下を3本作り、家の中での動線をスムーズに。1本目は、メインの廊下で玄関からLDKまで続く、ゲストも通るパブリックなもの。本棚を設置し、ギャラリー風に本を収納するスペースも兼ねています。
そして、2本目は、キッチン、洗面室、寝室をつなぐプライベートなもの。キッチンで料理しながら、洗面室で洗濯ができるなど家事がしやすくなる、暮らしの要です。夜は洗面室から寝室、朝は、その逆ルートで直行できるので、朝晩の身支度のストレスがなくなりました。そして、3本目は玄関から書斎に直行できる趣味のものです。

また、他にも、今までの家でストレスに感じたことを解消しました。帰宅後、アウターをかける場所が遠くて不便だったので、玄関にクロークを作りました。洋服の収納があちこちに点在していたのは、大容量のウォークインクローゼットで1カ所にまとめました。料理がしにくかったキッチンは、広めにして収納を充実させるプランを採用しました。

それぞれのストレスを解消した上で、3本の廊下を中心に家全体に回遊性を持たせました。毎日の暮らしは、一つの動作だけでなく、料理をしながら洗濯をする、朝起きたら洗面をするなど、いくつかの動作を連続して行うことになります。住む人の動線のバリエーションを考えながら、設計をしました。それにより、自然に家事ができ、ものが片づき、身支度ができる、ストレスフリーの家になりました。
Kさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A
Q1 一番気に入っている場所はどこですか?
家中の扉をすべて開け放したときの、一体感と風通しの良さ、そして、回遊できるつくりは、気に入っています。さらに、扉を閉めるとPP分離(パブリックとプライベートな空間を分ける)ができ、同じ家の中でも雰囲気の違う場所が作れて気分転換になります。
広くて使いやすいサニタリー、自転車が置ける土間的な玄関と、丈の長いコートなどもたくさん置けるクロークも、気に入っています。

Q2 リノベーションのプロセスで楽しかったことは?
漠然とした希望や、イメージの前段階の好みなどを伝えただけで、ブルースタジオさんが提案してくれたアイデアが、「そう、それ!」とはまった瞬間です。そして、具体的な形が見えてきたときに、想像していたよりもいい感じだったのでワクワクしました。
Q3 プロセスで大変なことはありましたか?
頭の中のイメージを、ブルースタジオさんへ正確に伝えることが難しかったです。また、予算内に収めつつ、理想の家に近づけることも苦労しました。
構成・大橋史子