今も私を励ますのは、先生がくれた「大丈夫」の言葉

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
時田友理さん(仮名) 39歳 女性
会社員
千葉県在住
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小学生低学年の頃、学校が終わると毎日のように入り浸っていた、こども館。人見知りで大人びていた私は、同学年の子と遊ぶのは苦手で、いつもある女性の先生の側にいて、高校生と先生が、小学生が知らない世界の話をしているのを、そっと聞いたりしていました。
その先生は、こども館に届く新聞についてくる貴金属店のチラシにあったド派手な指輪を、「これいいわ〜」と言いながら眺めていたりする、おちゃめでミーハーなところも印象的でした。
高学年から高校までは部活に入ってしまったので、なかなかこども館には遊びに行けなくなってしまい、いつのまにか先生も異動して会う機会もありませんでした。大学生になり、時間に余裕が出来た頃から、年に1回、花見の時期に先生たちを囲んで行う同窓会のような会に毎年顔を出すようになりました。
先生とも、その席で久しぶりに再会。ジョニー・デップとお酒が好きな、以前の楽しい先生のままでした。でも自分が大きくなったからでしょうか。久しぶりに会った先生を、小さく感じたことを覚えています。
たしかに小学生の頃に比べると体は大きくなったものの、その頃の私の内面は、小学生のときのまま。いつも自分に自信がなく、主張もしなければ人を引っ張っていくのも怖い、そんな典型的な引っ込み思案タイプでした。
あるとき先生に、この性格が自分のコンプレックスになっていることを話すと、先生はすかさずこう言って、あとから励ましのメールもくれたのです。
「無理しないで、今のままでいいですよ。友理ちゃんなら、大丈夫!!」
このあと人生の壁にぶつかるたび、先生がくれた「大丈夫」という言葉を思い出しては、何度救われたことか。今もつらくなったときはいつも先生のあの時の「大丈夫」を思い出し、沈んだ心を復活させています。
その先生が病気で亡くなったのは9年前。まだ50代という若さでした。ほかの先生から訃報(ふほう)を知らされ、お葬式にも参列。以来毎年、お墓参りを欠かさないようにしています。
亡くなった今も、私を励まし続けてくれる先生への感謝を込めて、先生がきっと好きな、思い切り「ド派手」なお花をプレゼントしていただけませんでしょうか? 先生は一人暮らしだったので、お届けしたいのは、先生と出会ったこども館。天国の先生に届けるほか、通っている子どもたちや先生にも、お花を見て元気になってもらえればうれしいです。

花束をつくった東さんのコメント
拳サイズのダリアなど、大ぶりなお花を中心にして、亡くなった先生に喜んでもらえそうな派手めなアレンジに仕上げました。ほかにもラナンキュラスやグラデーションのあるマムなど、色合いもカラフルなさまざまなお花を入れています。
今回のお花の贈り先は、投稿者様と先生が出会い、お世話になったこども館。天国の先生だけでなく、今の子どもたちにも見てもらいたいという投稿者様のお気持ちも込められています。
大きな花の奥にもたくさんの花々が隠れているので、のぞき込んで、みなさんに楽しんでもらえたらいいですね。




文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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