(162) 写ったのは薄れかけた記憶 永瀬正敏が撮った台湾
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回も台湾の金門島で撮った一枚です。永瀬さんの郷愁を呼び起こす甘酸っぱい刹那(せつな)が刻印されていました。

毎回思うのだが、
やはり台湾には幼き日々を思い出させる何かがある。
建物なのか、人々なのか……、
なぜか心の中の郷愁が呼び起こされ、
甘酸っぱい思い出やその刹那、様々な思いに包まれてしまう。
金門島のこの何気なくたたずむ一軒の店。
まだ何も自我がなかった頃の記憶が呼び起こされる気がした。
ごくごく幼かった頃、僕が生まれ育った宮崎の片田舎には、
まだこのような店がたくさんあったような気がする。
当時の自分には「これもあるの! アレもあるんだ!」と興奮収まらない、
何でもそろっている魔法のような店。
懐かしさをかみしめながら店内をのぞいていると、
一人のご老人が僕の目の前を横切った。
脇目も振らず、自分のペースを保ちながら歩いて行かれたこのご老人が、
この店から醸し出される郷愁と合致して、
さらにかすかな記憶の彼方に連れて行ってくれた。
中にいらっしゃる店員さん(?)と偶然シンクロした、
背中合わせの構図、おそろいのようないでたち。
薄れかけた自分の記憶を撮影できたような気がした。
(スマートフォンで撮影)
永瀬さんと台湾には、何か不思議な縁があるんでしょうね。
永瀬さんの記憶を撮影出来た写真を見る事が出来て嬉しいです。
写真にあるようなお店は日本では激減しましたね。
そこにいたわけでもその時代を知っているわけでもないのに、ノスタルジーを感じます。
「薄れかけた自分の記憶を撮影できたような気がした」ってなんて素敵な表現✨
タイムスリップしているところを写したような不思議な感覚になる写真、こういう瞬間を撮影できるのも永瀬さんの出逢いの力ですね✨