裏路地は、ゆったり美味! 激戦区・下北沢で見つけた南インドカレー「アンジャリ」

また激戦区・下北(東京・下北沢)のカレー店の底力を見せつけられた。「アンジャリ」は、インドでは女の子の名前にも使われる縁起のいい言葉。有名な映画俳優もいるくらいだ。手を合わせる、合掌するという意味もあり、言葉の響きのよさと、手にまつわる名前を付けたかったという理由から選んだそうだ。商店街の雑踏から一本細い路地を入ったところにあり、オリジナルの南インドカレーの味と店全体の雰囲気がなんとも良くて、何度も足を運びたくなるような居心地のよさがある。
2014年のオープン当時は、今ほど南インドカレー店が多くない時代。店主の市原健一さんは元来がカレー好きで、アパレルから飲食業に転身するにあたって、自分でやるならカレー屋と決めていた。和食店、オーガニックレストラン、吉祥寺のカレー店「まめ蔵」などを経て、自身の店をオープン。ただ、オープン前に本場インドで食べ歩くうちに、いわゆるルーを使った日本のカレーではなく、素材を生かし、スパイスを融合させるインドカレーの魅力にはまってしまい、方向転換したそうだ。
インドでの体験にはかなり刺激されたが、そのまま再現したのではなく、今の店のカレーはオリジナル。現地で買い込んだ料理本などを見て、味を想像しながらレシピを考え、何度も試作を繰り返して完成させたのが「チキンカレー(辛口)」「エビカレー(マイルド)」「サンバル(豆と野菜)」「マトンキーマ(中辛)」のお気に入りの定番4種だ。そこに、いい素材が入ったときにフィッシュカレーなどのメニューが追加される。1種類が1100円(以下税込み)、2種類なら1300円だ。

エビカレーの評判が高いので、迷いに迷った末に、あえてチキンカレーとマトンキーマの2種類を選択した。まずはチキンカレーを賞味。いい感じだ。激辛ではなく、ほどよい刺激で、ライスとの相性もいい。国産米にジャスミンライスを混ぜて、スパイスとオイルでふんわりと香りづけしているのだが、これがカレーと抜群に合う。

水を加えないで作るというマトンキーマは、水分がない分、スパイス感がしっかりと感じられる。ターメリック、コリアンダー、マスタードシードなど、基本のスパイスは押さえるが、レシピはシンプル。スパイスを何十種類も使うのがよいという風潮もあるが、インドでは、自分が思っていた以上にスパイス使いはシンプルだった。それもあって何となく入れてみようかなと思うスパイスは不要だというのが、市原さんの持論だ。

付け合わせは、ミニサイズのダルカレーとコサンバリ。南インドではサラダ的な存在のコサンバリは、緑豆(ムング)、キュウリ、ココナツ、ショウガ、青唐辛子を混ぜて、塩とレモンで味付けして、カレーリーフやマスタードシードをテンパリング(油で炒めて香りを油に移すこと)して投入する。これがあるのとないのでは、完成度が全く違ってくる。心地よいBGMが流れるなか、ゆったりとおいしいカレーが味わえるアンジャリは、外せないカレー店のひとつに加わった。

アンジャリ
東京都世田谷区北沢2-15-11 センヤビルB1
03-5787-6622
https://www.facebook.com/anjali.curry.spicefoods
むやみにスパイスを使わないからこそ、使われているスパイスのそれぞれの良さが調和するのだと思いました。いい食材が入った時だけシーフードカレーがメニューに追加されるとなると、限定に弱い私はそれを食べたくなりますね。