(163) 洗濯物干す女性の姿に癒やされたわけ 永瀬正敏が撮った台湾
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回も台湾の金門島で撮った一枚。映画撮影の合間に見かけた洗濯物を干す女性の姿に、永瀬さんは癒やされたといいます。それは……。

一つのカットの撮影が終わった。
次のカットの撮影まで、そこから少し離れた場所で待機する。
監督から次のカットの説明を受け、心の中を整えている時、
目の前のお宅から一人の女性が荷物を持って現れた。
細い路地を挟んで、ご自宅の前で何十人ものスタッフや俳優が、
ワサワサと撮影をしている。
事前にスタッフの方がお願いをしていたのだろうが、
やはり撮影隊は迷惑な存在だ。
そのご婦人は撮影隊を気にすることもなく、
おもむろにカゴの中から洗濯物を取り出し、干し始めた。
その光景がなぜだか、その時の心の癒やしになった。
前回も書いたが、郷愁漂う台湾の金門島で、
そのご婦人の姿に、幼き日の思い出を重ね合わせていた。
当時、母は親戚が経営している小さな印刷所の下請けの仕事をしていた。
その合間をぬって、同居している祖父母と父、そして僕の世話と、
家事もこなさなければならなかった。
当時は当たり前のように無邪気に思っていたので、
母の苦労なんてみじんも感じていなかった。
洗濯物を干す母にも、そんなことより僕をかまってくれと、
よく戯れていたように思う。
時間がない母は嫌な顔一つせず、作業をしながら、
そんな僕の相手をよくしてくれていた。
このご婦人の後ろ姿を見ながら、シビアな内容の撮影中の僕は、
ひとときの癒やしをいただいた気がした。
(スマートフォン撮影)
今回の写真もまた、昔の想い出と重ね合わさって癒されたんですね。
やはり、永瀬さんと台湾には縁があるんですね。
日常の一部を切り取った写真ってすごく魅力的だと思います。背中しか写っていないのに、背中からその人の気持ちなどが伝わってきそうな気がするのです。素敵な写真をありがとうございます!
台湾には緊張の糸をゆるめてくれるノスタルジーが溢れてますね✨
金門島にも行ってみたいです✈️
いつの世も、、こんなご時世、、
と言ってはいけないのかもしれません
映像と画像に、刹那に癒される事は
真実ですね