益子陶器市×びわの白あえ うつわ探しで向き合う心の声

料理好きな俳優・渡辺早織さんが心に寄り添った手料理を紹介する連載です。ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、思い出とつながったご飯は何だか忘れられません。明日を頑張るあなたの活力になりますように……。そんな思いを込めた料理エッセーです。詳しい作り方はフォトギャラリーでご紹介します。
お気に入りのうつわを使うことは、部屋にたっぷりの花を飾るような満足感に似ている。いつから食器が好きだったか、思い返してみると一つの思い出がふわりと頭の中によみがえる。
まだ3歳くらいの頃だろうか、母が一つのプラスチックのコップを買ってきてくれた。好きなキャラクターがプリントされていたピンク色のそれは、温度で色が変わるプラスチックを使っていて、それが私にとっては日常にあらわれた初めての魔法のような存在だった。
そのピンク色に、あたたかいお湯をそそいで白にしたり、氷をたくさんいれて青くしたりして、キャラクターのプリントがもうはげてなくなっていても飽きずに毎日使っていた。
これが自分だけの特別な食器を持つという原体験のように思う。
そのおかげか今でも私はときめく食器を探すのが大好きで、料理をすることと同じくらい、食器を集めることも自分の大切なライフワークの一つになっている。
今日は特別編で益子陶器市におでかけ!
お気に入りの1枚を探しに行ってきます。

自分の“好き”に気づくうつわ探し
心待ちにしていた3年ぶりの開催。
栃木県益子町へは、東京からはアクセスしやすく電車でも車でもいくことができる。ただし昼頃になるととても混むので、眠い目をこすって朝一番で飛び出した。
益子陶器市では全国から作家さんや窯元さんが集まって、伝統的なぽってりとした益子焼から、新進作家さんの現代的な器までなんでもそろっている。
それぞれのテントにそれぞれの個性のお皿がずらりと並べられ、青空の下で太陽のスポットライトを浴びて、どのお皿も一枚一枚誇らしげに見える。
その輝くステージの間をゆっくりゆっくり歩いて進むのはなんとも心が弾むのだ。

何を買おうかな。
どんな出会いがあるかな。
あらかじめ調べて気になる作家さんをめがけていくのもいいし、その場の出会いを楽しむのもまた好きで、自分の食卓や一緒に食べる人の顔を想像しながら一期一会を楽しむ。

気になるお皿があったら足をとめ、じっと見つめ、そしてそっと手にとります。両手でもちあげた時のフィット感が自分にあうとなんだか嬉(うれ)しい気持ちに。
どんな方が作っているのだろう。益子陶器市は実際に作家さんや窯元さんが販売をしているので直接お話を聞かせてもらうことができるから、つい気になって話しかけてしまう。

ざらっとした質感の器に惹(ひ)かれて声をかけたのは「Noriko Tsuji」を出店しているご夫婦。
奥様が作家さんで、会社勤めの旦那さんは「この陶器市の時になると毎年手伝うんですよ」と困ったような、でも誇らしげな笑顔で教えてくれた。
このうつわが中心になったお二人の食卓を想像し憧れて、購入させていただきました。

たくさんのお皿を見ていると、だんだん自分の“好き”に気づいてくる。色、手ざわり、あたたかみ。
かわいいと好きの線引きや、誰かの理想が自分の理想に当てはまるかどうかなど。普段生活しているとあいまいに流してしまうようなこととも向き合えたりする。
うつわ探しによって聞こえる自分の心の奥の声。なんだか頭がすっきり整頓されていくからふしぎだ。

たっぷり吟味してお気に入りのものを選ぶことができた。
少しの名残惜しさはつきもので、また来ることを楽しみにその場を後にした。
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陶器市いいですよね!同じ器でも個性があるので、どの子を持ち帰ろうか悩む時間が好きです。器が素敵だと料理にも気合が入ります。
初夏の色合いって感じで
美味しそうです。
僕も器や食器を選んだりするの、好きです!
全く詳しくは無いんですが、京都・仁秀のようなつや消しのタイプが好みです。