あの街の素顔
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小津安二郎や大林宣彦の世界へ 尾道で映画ロケ地巡り

瀬戸内海に面した広島県尾道市。本州と四国とを結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」の本州側の発着点として知られています。しかし、尾道市にはもう一つの顔が。それは、日本映画の数々の名作のロケ地となってきたことです。小津安二郎監督の「東京物語」、大林宣彦監督の「転校生」「さびしんぼう」などなど。海があり、すぐそばに島があり、趣のある石段や坂道を上ればたくさんの古寺がある。撮影したくなる風景に満ちていて、映画人に愛されてきた街。それが尾道なのです。というわけで、今回は「尾道 ロケ地探訪の旅」。映画の撮影での監督のかけ声になぞらえて始めましょう。よーい、スタート!(文・写真、宮﨑健二)

尾道駅から海まですぐ 渡船で思い出すのは

旅の出発地はJR尾道駅です。

JR尾道駅。この日は快晴でした
JR尾道駅。この日は快晴でした

驚くのは、駅と海の近さです。駅を背にして立つと、海がすぐそこに。歩いてみると、私の足で208歩でした。海沿いには遊歩道が設けられています。

海沿いの遊歩道。パラソルとテーブルがあるので、休憩もできます
海沿いの遊歩道。パラソルとテーブルがあるので、休憩もできます

遊歩道を歩いていくと、おおっ、福本渡船の乗り場が!

福本渡船の乗り場。ここから対岸の向島行きの船が出ています
福本渡船の乗り場。ここから対岸の向島行きの船が出ています

早くもシネマ遺産を発見いたしました。尾道を舞台にした大林宣彦監督の「さびしんぼう」(1985年)。男子高校生が、思いを寄せる女子高校生と、不意に現れる自称「さびしんぼう」の不思議な少女とのふれあいを通して、人を愛することの意味を知る物語です。この作品の中で、女子高校生の通学場面として登場するのが福本渡船の乗り場なのです。富田靖子が演じた女子高校生が今にも自転車に乗って船から降りてくるような……。そんな幻を見た思いでした。

そのまま、遊歩道を進んでいくと、壁に小津安二郎監督の世界的名作「東京物語」(1953年)の写真が埋め込まれていました。子供たちの住む東京への老夫婦の旅を通して、夫婦や親子の関係のありようや、老いや死に向き合う姿などを静かなタッチで描いたこの作品も尾道で撮影されたのです。

海沿いの壁に映画「東京物語」の名場面が。映画の街であることを感じさせる場所です
海沿いの壁に映画「東京物語」の名場面が。映画の街であることを感じさせる場所です

港には、向島(むかいしま)に渡る船の乗り場が3カ所あり、それぞれ向島側の発着地が違います。私は、おのみち渡し船の乗り場から船に乗り込みました。

おのみち渡し船の乗り場。料金は100円でした
おのみち渡し船の乗り場。料金は100円でした

向島は目と鼻の先で、乗船時間はわずか約3分間。上陸すると、すぐそこに大林監督の「あした」(1995年)のロケセットがありました。

映画「あした」のロケセット。撮影後、今の場所に移設されたそうです
映画「あした」のロケセット。撮影後、今の場所に移設されたそうです

連絡船が嵐で遭難。乗客は見つからず、悲嘆に暮れる家族や恋人らは謎のメッセージに導かれて連絡船の待合所に集まることになり、不思議な一夜を過ごす。これが「あした」のストーリーです。その待合所のセットがこの建物なのです。

小高い丘に登ってみました。対岸が見えます。

向島から見た尾道。山が海に迫る地形であることがよくわかります
向島から見た尾道。山が海に迫る地形であることがよくわかります

実は私は最近、心配事を抱えていたのです。たとえば、最近自宅に届いた「年金ご送金のお知らせ」の「ごそうきん」を口に出して読んでつい興奮してしまった自分はいけない人間なのだろうか、とか、「Z世代」と呼ばれている若者たちはロシア寄りと誤解されていないだろうか、とか……。けれど、のどかな景色を見ているうちに、そんなモヤモヤは吹き飛んでしまいました。

地ラムネをごくり 後藤鉱泉所

向島の通りを歩いていると、こんな店がありました。後藤鉱泉所です。ずいぶんいかつい名前ですが、ラムネ、サイダーなどの飲料水を製造、販売しています。

後藤鉱泉所。「後藤飲料水工業所」の看板を掲げて飲み物を扱う店であることを示しています
後藤鉱泉所。「後藤飲料水工業所」の看板を掲げて飲み物を扱う店であることを示しています

税込み200円のラムネを買いました。店内の椅子に腰かけて、近所のパン屋で買ったあんパンをほおばりながらラムネをゴクリ。懐かしい味です。瓶の中のビー玉がカランと涼しげな音を立てました。

あんパンをおやつに、ラムネを飲みました
あんパンをおやつに、ラムネを飲みました

1930年創業で、代表の森本繁郎さん(45)は4代目。公務員でしたが、後継者がいない後藤鉱泉所のことをマッチングサイトで知って2021年4月に経営を引き継ぎました。「つぶしてしまうのはもったいないと思いました。観光客の方が楽しめる店なので」。私が滞在した間にも、サイクリングの男性や女子高校生ら4人が来店。なかなかの人気です。

NEXT PAGEロケ地案内図を広げたら、突然……

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