城下の商都の活気がよみがえる「黒壁の町」 滋賀県・長浜市

琵琶湖の北東畔を大きく占める長浜市。中心市街は「羽柴」を名乗っていた秀吉が、初めて城持ちとなって築城してひらけた城下町である。
長浜城と北国街道で歴史に思いはせ

北陸と畿内を結ぶ北国街道の宿場や琵琶湖湖上航路の港として、人や物資の往来が盛んで商都としても大いに栄えた。もう一つの顔が浄土真宗の長浜御坊・大通寺の門前町である。
駅の西側には1983(昭和58)年に鉄筋コンクリ-ト造りで再興した長浜城の天守閣が、古城の趣を見せて建っている。内部の長浜城歴史博物館の展示を見ながら、最上階の展望台に立つと、琵琶湖が一望、薬草で名高い伊吹山が近くに浮かぶ。

駅の東側に出ると、“三献の茶”の逸話でおなじみの「秀吉・三成出逢いの像」が目につく。2分も歩くと北国街道と交わる。

「黒壁」を拠点に町を再生
町は城下の時代、自由な商活動が許された楽市楽座で大いに栄えたが、30年ほど前、郊外に登場の大型店舗などで中心市街は廃れ始めていた。
そこでかつての黒壁洋館の銀行の建物を活用して、官民一体で「黒壁の町づくり」に挑戦。ガラス工房、ギャラリー、レストラン、カフェなどを集めた「黒壁スクエア」を拠点に、周辺の古民家や仕舞屋(しもたや)を次々に飲食や土産、小物などの店に再生。

年間10万ほどの入り込み客がみるみる50万、100万、150万と急増。他の町からも視察や見学が多く、200万人近くを数える観光都市にまでなった。
縦横に延びる通りにも改装や再生の店が連なり、にぎわいは広がり、街歩きも楽しめる。食べ処も郷土性を大事に名物の焼き鯖そうめん、アユ料理、近江牛料理、カモ鍋など季節感と多彩さで飽きさせない。

見どころは、駅前通りと北国街道の角に立つ1874(明治7)年建築の洋風3階建てのしゃれた元小学校の「開知学校」、町おこしの原点となり中核をなす「黒壁ガラス館」、絢爛(けんらん)豪華な山車(だし)や子ども歌舞伎で有名な曳山(ひきやま)まつりを通年、目にできる「曳山博物館」などたくさんある。

市街の東寄りの表参道の正面には、壮大なケヤキ造りの山門を振り仰いで入る大通寺がある。安土桃山時代の絢爛とした建築様式の伏見城の遺構と伝える大広間、円山応挙や狩野山楽らのふすま絵がみごとである。

軒を連ねて立ち並ぶ街中を巡る北川や米川などの澄んだ細流も潤いを感じさせる。食べたり、買ったり、祈ったり、見学したり……広すぎないので、ぶらり歩きがほどよい街である。
〈交通〉
・JR北陸線長浜駅下車
〈問い合わせ〉
・長浜観光協会
0749-53-2650
※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。