「言われたことは一生懸命やります」からの脱却

「正しい意見」ではなく、「隠れた問題意識」を引き出す
では、これからどうするか。その女性の支店長が、3人の契約社員と定期的に会議を開いて、若山さんと同じように話を聞くことになった。その支店長はひたすら3人の話を聞いて、メモに残していった。
それから数カ月たったとき、若山さんはその女性支店長からの連絡を受けた。「3人が考えたアイデアが首都圏の事業部に採用されたんです」
それは契約社員が近隣の支店に「交換留学」のような形で一定期間、勤務をして、それぞれ各店が持っている顧客に評判のよいサービスを学ぶ、という活動だった。しかも、現場の契約社員同士でスケジュール調整をすることも話し合って決めた。女性の支店長によると、「『現場発』の活動として定着してきた」という。若山さんは変化に驚くと同時に、うれしかった。
なぜ、これほどまで変わったのだろうか。スコラ・コンサルト「対話普及チーム」の高木穣(ゆたか)さんに聞いてみよう。
「普通の会議は暗黙のうちに課題解決に直接つながる正しい意見をすぐに出して欲しいという空気になりがちです。ただ、この女性支店長は、隠れていた問題意識を引き出すために粘り強く、3人の話を聞き始めた。普段本音を話さなかった3人が心のなかにあるモヤモヤを語り始めることで、隠れていた問題意識が明確になっていき、アイデアにつながったと思います」と高木さんは分析した。
自分たちが思っていることをきちんと受け止めてくれる――。オフサイトミーティングを通して、そんな信頼関係が3人と支店長の間に生まれ、自分たちで考え、発信しようという自信やエネルギーも育まれていったようだ。

どのアイデアが正解なのか。すぐにわからない時代だ。多くの会社では、世代や序列に関係なく、成長のためのアイデアが求められている。アイデアを見つけるには、一人ひとりの隠れた問題意識を聞き出し、掘り下げていくことが問題解決の近道なのではないだろうか。
若山さんと高木さんの話を聞き、筆者は「相手の話にじっくりと耳を傾ける、聞き上手の人を増やすことが、課題解決の近道かもしれない」と思った。

流通小売業の経営を経て「ひとが生き生きと働ける素敵な組織をひとつでも多く増やしたい」との夢を持って、スコラ・コンサルトに入社。共著「オフサイトミーティング 仕事の価値を高める会議」では「本当に話すべきことを本音で話すのが会議の生産性」と語る。スコラ・コンサルト「対話普及チーム」のメンバーとして、話し合いの企画・設計、当日の不測の事態への対応法を誰にでもわかりやすく、くわしく親切に語り伝えている。現在、「人と地球を食でつなぐ」をコンセプトにした八百屋も営む。

福岡県生まれ。組織を活性化させる対話技術を磨く「マネジメント・ダイアログ・ジム(MDG)」や企業向けの「ダイアログ研修」「ファシリテーション研修」「チームの対話力向上研修」などを実施。東洋医学や禅などにも造詣が深い。ときに“楽しい場”をつくるため、ありがとうパワー研究所の有賀大蔵(ありがたいぞう)というキャラにも扮する。
変化の激しい時代、仕事の価値を高める会議を実現するには、どうすればいいのでしょうか。「気楽にまじめな話をする」という「オフサイトミーティングⓇ」という手法を通して、企業の組織風土改革を進めてきたスコラ・コンサルトのメンバーに「会議のチカラ」を最大限発揮するために必要な知恵や考え方をわかりやすく伝授してもらいます。
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確かに社内の一部の人のこんな傾向があると感じます。
「どうして」と
あえて問うことはしていませんが、もし聞いてみれば
「いままで指示に従う形で仕事をしてきたからです」という答えが返ってきそう。
このような方々に、キャリアを問うと
(『MUST』『CAN』『WILL』)
「将来のことも考えてないし、『WILL』は? と言われても困る」と言われそう。
(WILLハラスメント)
MUSTで仕事をして、ある程度のやりがいを感じている人には、 今回のようなアプローチが有効だと思いました。