青じそ風味でさっぱりと。手作りミンチの焼き餃子

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はビールにも、ごはんにも相性バッチリの餃子(ギョーザ)。青じそを入れた、爽やかな風味を楽しみます。
―― 冷水先生、こんにちは。じめじめした日が多くなってきましたが、楽しくお過ごしですか?
冷水 はい、お天気に翻弄(ほんろう)されつつ、元気にやっていますよ。
―― 気温も高くなってきて、ビールがおいしいですね〜。
冷水 ビールは雨の日もおいしいです(笑)。
―― 今日は、来たるべき夏本番に向けて、ビールの最良の友である餃子を基本の「き」から教えていただきたいなと思っています。
冷水 定期的に登場する基本のシリーズですね!
―― これまで鶏のから揚げやハンバーグなどを教えてもらいましたが、どれも基本に忠実に作ると驚くほどおいしくて。これは餃子にも革命が起こるのでは!?と期待しています。
冷水 え〜、ちょっとプレッシャーですが……。頑張ります!
―― 今日は市販の皮で挑戦してもいいでしょうか……。皮から作るとなると、ちょっとハードルが高いかなとひるんでしまって。
冷水 もちろんです。市販の皮もいろいろありますから、お好みのものを見つける過程も楽しいものです。

―― よかった〜。
冷水 ニンニクたっぷりの餃子が好きな方も多いかと思いますが、今日はニンニクを入れずに、青じそを加えた、さっぱり、爽やかな風味にしたいなと思っています。
―― 青じそ、いいですね。私、ベランダで育ててます!
冷水 あと具材のポイントとしては、ひき肉を使わずに、豚の薄切り肉を自分で叩(たた)いてミンチにすることです。
―― おお、ひと手間ですね。食感が変わるんですか?
冷水 ひき肉はどうしても臭いが気になることがありませんか? あとはやっぱりジューシーに仕上がりますね。
―― なるほど。使う部位はどうしたらいいでしょう?
冷水 今日は肩ロースを使いますが、もっとジューシーにしたい場合はバラ肉、逆にさっぱりさせたい場合はロースを使うといいです。肩ロースはバラとロースの中間くらいの感じです。肩ロースにバラを少し混ぜるとか、微妙な調節ができるのも、いいところです。
―― おお、自分好みの仕上がりに近づけられるのは、すごくいいですね!

冷水 まずは野菜の準備からしていきましょう。キャベツは葉の部分をバラバラにして、沸騰した鍋に入れて2分ほど茹でます。バットにあげて冷まし、粗熱が取れたらみじん切りに。おにぎりのようにぎゅっと手で握って、しっかりと水気を絞ります。
―― すごい水分! ちなみに塩もみだとダメですか?
冷水 塩もみでも水分は出ますが、ちょっとしょっぱくなってしまうので、茹でる方がおすすめです。次に長ネギと青じそをみじん切りにしますね。
―― おっと、かなり細かいみじん切りですね(汗)。
冷水 野菜が大きいとミンチと混ぜたときにうまくまとまらないんです……。
―― たしかに、たまに餡に結束力のない餃子がありますね……。あれは悲しくなるので、頑張ってみじん切りします!

冷水 包丁をよく研いでおくと、スムーズですよ。さて、じゃあ、いよいよお肉の出番です。冷蔵庫から出したての豚肉を重ねた状態でまな板の上に置いて、千切りするような感じで細く切ります。その後、お肉かまな板を90度回転させて、同じく千切りに。あとは包丁で叩いて、ミンチにします。
―― 自分でミンチにするって大変かと思っていましたが、結構、手軽ですね。
冷水 ボウルにミンチを入れて、塩を加えて、よくこねます。塩が入ることで肉がなめらかな質感になるんです。
―― 料理は化学!
冷水 次に合わせた調味料を加えますが、一度に全部入れるとお肉に味が入りづらいので、3回くらいに分けて加えて、その都度よく練ってください。
―― だんだんペースト状になってきましたね。
冷水 はい、ペースト状になったら野菜を加えて混ぜ、冷蔵庫で休ませます。
―― あれ、すぐに皮で包んだらダメですか?
冷水 餃子は食べた瞬間に溢(あふ)れる肉汁が命でしょう? こうしてお肉を練っている間にも手の熱が伝わって、どんどん脂が溶け出してしまうんです。なので、一度冷蔵庫で冷やします。休ませたほうが、調味料の味も入りますしね。
―― なるほど〜。
冷水 その間に作業台を片付けて、スピーディーに包む作業ができるように整えます。これも肉汁を守るための大切なことです。

―― テンパってはいけない!(笑)
冷水 じゃあ、いよいよ包んでいきます。と言っても、餡がしっかり包まれていれば、どんな包み方でもいいんです。ここはさほど神経質にならなくても大丈夫。
―― ちょっと不格好だけど……、まあいいか!
冷水 では、焼いていきましょうね。慣れていない人は、まず火にかけていないフライパンに落ち着いて餃子を並べて、それから中火にかけます。すぐに餃子の3分の1の高さくらいまで水を入れて、蓋をして蒸し焼きにします。
―― いい音〜!
冷水 水がほぼなくなったら、仕上げに油を回しかけて、皮をパリッとさせて完成です。熱々を食べてみてください。
―― あれ? なんだかすごく……、さっぱりしています! 青じその風味はもちろんですが、お肉の感じがいつもと明らかに違います。お肉の旨味はしっかり感じて、ジューシーさもあるのに、脂のギトギト感がないというか……。
冷水 脂ではなく、肉汁でジューシーさを感じてもらえたらいいなと思っていたので、よかったです。
―― 本当に、これは餃子観が一変しますよ! いくつでも食べられそうだし、胃がもたれなさそう。上品で、やさしい餃子です。
冷水 ぜひ、いろいろな部位のお肉を使って、自分好みの餃子を作ってみてください!
焼き餃子
材料(2人分)
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豚薄切り肉200g
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キャベツ200g
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長ネギ(白い部分)10cm分
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青じそ20枚
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塩1.5g
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皮適量
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油適量
A
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酒大さじ1
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砂糖小さじ1
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ショウガすりおろし小さじ2
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醬油小さじ1
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水大さじ2
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ごま油大さじ1
- キャベツは2分ほど茹でてザルにあげ、粗熱が取れたらみじん切りにして水気をよく絞る。
- 長ネギと青じそはみじん切りにする。
- ボウルに叩いた豚肉を入れ、塩を加えてよく練る。
- 合わせたAを3.のボウルに何回かに分けて加え、その都度豚肉にもみこみながら練る。
- 4.に1.と2.を加えて混ぜ、冷蔵庫で少し休ませる。その後、皮で包む。
- 薄く油を引いたフライパンに5.を並べる。餃子の3分の1くらいの高さまで水を加え、フタをして水分がほぼなくなるまで中火で蒸し焼きにする。仕上げに油を大さじ2分の1程度まわしかけ、焼き目をパリッとつけて仕上げる。
- 酢やコショウ、ラー油など好みのタレをつけて食べる。