楽園ビーチ探訪
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東洋のドーバー、北海道にも 白い断崖絶壁「シラフラ」

“東洋のドーバー”を検索していて偶然見つけたシラフラ。屛風ケ浦(千葉県)も有名だが、断崖が白いという点で、シラフラ(北海道)はよりドーバーっぽい!?

「どうして、乙部町に来たんですか? 何もない町ですよ」。開口一番、町の人にそう言われて、どきり。今回の旅の目的は、たまたまネットで見かけた「シラフラ」(北海道乙部〈おとべ〉町・江差町)が目当て。その延々と続く真っ白な断崖絶壁を、この目で見てみたかったのです。もしかして、あれは加工した映(ば)え写真? けれど、そんな疑念はすぐに晴れました。

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する筆者が訪れた、各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

圧倒的な迫力、高さ30メートル 軽石の断崖が延々

シラフラがあるのは、北海道南西部の渡島(おしま)半島の西部に位置する乙部町。箱館戦争時に新政府軍(明治政府軍)が蝦夷地奪還のために上陸した地です。人口は3500人足らず。観光名所をうたう大仰な看板はほぼ見かけず、国道沿いに観光客を誘う土産物店もありません。

シラフラ展望台から見渡すのも、絶景!
シラフラ展望台から見渡すのも、絶景!

滝瀬海岸にあるシラフラは、古い言葉で“白い傾斜地”という意味。その名のとおり、高さ30メートルほどの真っ白な断崖絶壁が、約500~600メートルも続いています。目の前は真っ青な日本海、茶色の砂地。写真よりも、実物の方が圧倒的な迫力です。この絶景、展望台から見渡すことも、海辺から見上げることもできます。

霧が立ち込めても、風情を感じるシラフラ
霧が立ち込めても、風情を感じるシラフラ

シラフラが誕生したのは約500万年前。噴火した火山から噴き出た軽石が海底に降り積もった、軽石凝灰岩の地層です。近寄ってみると、白一辺倒ではなく、赤や黄色みがかった部分もあります。層の中には石も交じっています。触れてみると、ざらざらとした感触で、いかにももろそうです。

四百余年前にうがたれた「くぐり岩」

乙部町の魅力はシラフラだけではありませんでした。

シラフラから北へ海岸線を600メートルほど歩くと、岩壁にぽっかり穴が開いた「くぐり岩」があります。こちらはシラフラよりも細かい凝灰岩で、噴火した際に噴き出た火山灰が降り積もった地層。シラフラよりも年月としては古いそうです。

四百余年前、ニシン漁のために石壁に穴をうがったくぐり岩。成人男性もかがむことなく通れます
四百余年前、ニシン漁のために石壁に穴をうがったくぐり岩。成人男性もかがむことなく通れます

このくぐり岩周辺は400年ほど前の慶長年間の頃に、ニシン漁で取れた魚介を海に入ることなく運ぶために穴が掘削されたとか。ちなみに乙部町は当時、“ニシンの千石場所(たくさん取れる場所)”と呼ばれるほど、ニシン漁で栄えていたそうです。

「館の岬(たてのさき)」も、これまた絶景。この時はがけ崩れの復旧作業中で近くに行けなかったのですが、遠くから見てもその地形の特異さがわかります。形成された経緯は、噴火した火山灰が海底に堆積(たいせき)し(灰色の軽石凝灰岩)、火山活動が休止中に砂が積もり(黒い砂岩)、この現象が繰り返されました。やがて軽石凝灰岩と砂岩の互層、つまり灰色と黒のミルフィーユ状の地層のできあがり。

国道229号の向こうに館の岬。この時は通行止めで近寄れず……。乙部町は観光地というより、暮らしやすそうな町
国道229号の向こうに館の岬。この時は通行止めで近寄れず……。乙部町は観光地というより、暮らしやすそうな町

また、「窓岩」は、1905年まで窓枠のように穴が開いた岩だったのが、上部が崩れて今の姿に。壁面を見ると、岩の中に岩が埋まっています。これは、噴火したマグマが上方から流れるにつれ表面が固まっていき、まだ溶けた状態の下方へ落ちたため。後に固まった岩の方が軟らかく、浸食によって先に固まった岩が表れてきたもの。ここは、凝灰岩ではなく、安山岩(火成岩)。

北海道で唯一「快水浴場百選」に選ばれた元和台海浜公園
北海道で唯一「快水浴場百選」に選ばれた元和台海浜公園

ちなみに、窓岩のある元和台海浜公園の「海のプール」は、北海道で唯一の快水浴場百選(環境省)に選ばれたビーチ。防波堤によって波から守られ、安心して海遊びができます。さらに夏のシーズン時の土日祝日には子供を対象にウニ、ツブ貝、ホタテの手づかみ体験も(2022年の開催は乙部町商工会〈0139-62-2920〉または乙部町役場産業課〈0139-62-2311〉に問い合わせを)。

さらに北上した「鮪(しび)の岬」は、マグロの背に似ていることから命名された岬。海に突き出た岬の上方は、まるでウロコのように多角形の割れ目が入り、下方は縦の柱状になった柱状節理(溶岩が急速に冷やされ、収縮して形成)です。この地球のパワーを感じる風景は、1972年に北海道の天然記念物に指定されました。

地層のデパート、そしてお手頃美味な海の幸

地質について地元の小学校の子供たちに授業を行っている、乙部町公民館の学芸員、藤田巧さんに、お話を聞きました。

興味深かったのは、シラフラを含め五つの地層(多くが断崖)が海岸線に沿った、国道229号沿いに点在していること。加えて内陸に「貝子沢化石公園」も。藤田さんいわく「自分たちの地域の六つの地層を、まとめて効率よくみられるお得パックのよう」といいます。

ちなみに六つの地層は、北へ行くほど古く、南へ行くほど新しいのが特徴。窓岩を境に北は安山岩、南は凝灰岩に分かれているそうです。

何もないと言われた乙部町ですが、新鮮なカキやホタテ、ウニなど海の幸がびっくりするくらいお手頃で、美味! そして何より人が、あたたかい。乙部町はいいもの、たくさん持っています。

ホタテやカキを1000円で見繕ってもらって、こんなに豪華!
ホタテやカキを1000円で見繕ってもらって、こんなに豪華!
町の中心部から車で約10分。林野庁「森の巨人たち百選」に選ばれた縁桂(えんかつら)。2本のカツラの木が地上7メートルで1本の木に結合することから、縁結びの神様が宿るとされています
町の中心部から車で約10分。林野庁「森の巨人たち百選」に選ばれた縁桂(えんかつら)。2本のカツラの木が地上7メートルで1本の木に結合することから、縁結びの神様が宿るとされています

【取材協力】 乙部町商工会 TEL0139-62-2920(※乙部町観光協会のサイトはこちら

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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