30代女性に刺さる女性マンガ家とは 無類のマンガ好き・宇垣美里さんに聞く手塚治虫文化賞受賞作

第26回「手塚治虫文化賞」では、新生賞を谷口菜津子さん、短編賞をオカヤイヅミさんが受賞しました。タッチやテイストは異なりますが、ともに女性を取り巻く現実や「あるある」を丁寧に描き、共感を呼んでいるマンガ家です。無類のマンガ好きでマンガ評や著書「今日もマンガを読んでいる」で知られるフリーアナウンサーの宇垣美里さんに、30代女性の1人として、2人の作品やマンガをめぐる状況について語っていただきました。(文・中村千晶、写真・簗田郁子)

さまざまな思い、マンガの「代弁」で勇気
――谷口菜津子さんとオカヤイヅミさんについてお聞かせください。
お2人とも大好きです! 特に谷口さんは同世代でもあり、今回の新生賞受賞のきっかけになった「今夜すきやきだよ」にはすごく共感します。登場人物のあいこは家事は苦手だけれど結婚はしたい、ともこは料理は好きだけれど恋愛や結婚にはピンとこない。タイプの違う30代女性の2人暮らしを描くことで、少なくとも私が抱いてきた女性の生き方をめぐる「どうして?」「なぜ?」に対し、新しい答えを提示してくれていると感じます。

「結婚すること」や「名字を変えること」には、みんながもやもやしていたとしても、「そういうものだ」と言われてきたことだと思います。「そうじゃないよね」と、言ってもらえたようで、勇気がもらえます。
■手塚治虫文化賞記念プレゼントキャンペーン
朝日新聞社は、第26回手塚治虫文化賞を記念して、受賞者3人による描きおろし記念イラスト(複製画)を抽選で各5名様、計15名様にプレゼントします。また、マンガ大賞受賞作「チ。―地球の運動について―」(魚豊著/小学館 全8巻)を抽選で1名様にプレゼントします。
応募はこちらから。7月10日締め切り。
オカヤさんの「白木蓮(はくもくれん)はきれいに散らない」は50代の3人の女性が主人公。孤独死や親の介護など、主人公たちの悩みや迷いは、まだ私自身には身近ではありませんが、いずれ来るであろう未来の自分の感情を、リアルに想像できます。年齢を重ねたことで生まれる悲しみや、乗り越えていかなければならないものを、とても冷静に、ある意味フラットに描いていて、そのクールさが心に刺さります。

――女性が抱えるさまざまな思いを、作品が代弁してくれているんですね。
ほかにもそういう作品が増えていると感じます。30代女性と中学生の姪(めい)との暮らしを描く「違国日記」(ヤマシタトモコ)は、「人と人は、それぞれ違う人間なのだ」「孤独だけれど、誰もがそうなのだ」というテーマについて、すごく丁寧に描かれていて、「みんな同じなんだ!」と勇気をもらえる作品です。
何かを表現するときには、社会に対する批判精神のようなものを持たざるを得ないと私は思っています。マンガに限らず、小説や映画の世界でも、いま女性作家の作品にはそうした視点が増えていて、勇気づけられることが多いです。
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魚豊先生の創作に対する考え方がクールで的確だと思いました。
そして、宇垣さんのまとまった文章がとても読みやすく好印象です!