これからは笑顔の素敵な母親に。娘と孫の幸せを願って

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
葉山利香子(仮名) 58歳 女性
会社員
愛知県在住
◇
「男の子を出産しました」
妊娠4カ月の娘からそんなメールが届いたのは、娘が結婚して初めて迎えるクリスマスのことです。メールには、こんな言葉も添えられていました。
「お葬式は3日後です」
娘のおなかの赤ちゃんの心拍数が弱くなり、突然天国へと旅立ってしまったのです。娘は子どもの頃から長女らしく、自立した性格でした。大学受験も、超氷河期の就職も、そして社会人になってから専門学校で学び、小さな会社を起業したときも……人生のさまざまなチャレンジをここまで難なくクリアしてきました。
持ち前のポジティブさと、明るい笑顔が取りえ。何かあっても家族や友だちに心配をかけまいと、弱音を吐くこともほとんどありませんでした。そんな娘がこのときばかりは数日間泣き続け、私はなんと声をかけてよいか言葉が見つからず、ただただ寄り添うことしかできませんでした。
それから2年。娘は、我が子を抱く夢を見ながら、必死に大学病院へ通院しました。やがて検査の結果、娘は不妊症ではなく「不育症」という、赤ちゃんがおなかの中で育たない病気であることがわかりました。もう娘が子どもを授かることは難しいのではないか……。私は勝手にそう思うようになっていました。
あとで聞いた話では、実際その2年のうちに何度か、流産も経験していたそうです。でも持ち前の明るさを取り戻した娘は、不育症専門の医師に丁寧に原因を探ってもらい、新しい治療法にひとつひとつチャレンジしていきました。
そうして何度目かの妊娠で、とうとう安定期に入るまでになったのです。母親になろうと決意した娘は、医師のアドバイスで自己注射を毎日2回打つなど、赤ちゃんを守るためのありとあらゆる手を尽くして10カ月を過ごしました。
その思いは実りました。先日、女の子を出産することができたのです。我が子の顔を見て、「ようやく母親になることができた」と喜ぶ娘を見て、私も幸せのお裾分けをもらいました。娘には「私をおばあちゃんにしてくれてありがとう」と伝えたいです。
亡くなってしまった赤ちゃんも、きっと天国から見守ってくれていることと思います。孫娘には、その子の分まで幸せになってほしい。また娘自身も、これからは笑顔の素敵(すてき)な母親となり、幸せになってほしいです。
そんな娘と孫娘、そして娘を近くで支えてくれた娘の夫の幸せを願って、出産祝い、誕生祝いの素敵なお花を用意していただけたら幸いです。

花束をつくった東さんのコメント
アレンジの真ん中に置いた白いシャクヤクは、投稿者様の娘さんの元に生まれてきたお子さんをイメージしたもの。生まれたばかりのピュアな赤ちゃんらしく、もっとも明るい色である白のお花を選びました。
そのシャクヤクを包み込むようにアレンジしたのは、ベビーピンクという色もあるほど、赤ちゃんと相性がいいピンクのさまざまなお花です。
生を享(う)け、娘さんやご家族の希望の光となったお子さん。その健やかな成長を、みなさんがやさしく包み込みながら見守る様子を表現しています。




文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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