着生ランとステンドグラス 緑と光が織りなす空間「Scape ガラスと植物」

ステンドグラスと植物。空間を涼しげに彩る二つの要素に同時に出会えるショップが、鴨川べりの路地にあります。今回訪ねた「Scape(スケイプ)」は、ステンドグラス作家の西冨なつきさんが営むアトリエ兼ショップ。それぞれ単体でも、組み合わせても楽しめるガラスとグリーンは、その両方に魅せられた西冨さんならではの感性が光ります。
■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、京都の素敵なスポットをご案内しています。
生命力と野生感あふれる着生植物 ガラスが引き立て

「なんだか変でかっこいいんですよね」
そう笑う西冨さんは、この店を始める前からランなどの着生植物に夢中。地面に根を下ろさず、他の木の幹や岩などに着生して生きるこの不思議な植物に魅了され、自宅でさまざまな品種を育てていました。

独特の根の形や葉の雰囲気を「ちょっと異様なところにも生命力を感じます」と〝褒め〟つつ、そのたたずまいが作品づくりのインスピレーションに。花器やミラー、照明などさまざまなアイテムが並ぶ中で、ひときわ目を引くのが、野生感あふれる着生植物と組み合わされた作品です。

フレーミングされた透明な形が連なり、額縁や建築物のように植物を囲む作品は、着生植物をこよなく愛する西冨さんだからこそ作れるもの。多面体の空間に浮かんでいるようにも見え、植物の不思議なビジュアルをより引き立てます。


「最初はアート作品を作っていましたが、だんだんと暮らしの中で楽しんでいただけるようなインテリアやアクセサリーにも、制作の幅が広がっていきました。ここではグリーンも一緒に販売しているので、着生ランや植物がよりかっこよく見えるものを作りたいと思っています」(西冨さん)
ラン好きもガラス好きも足をとめる アトリエショップの交流

ステンドグラスというと、ヨーロッパの建築物に見られるような色とりどりのモザイク窓を思い浮かべますが、西冨さんが作るのは主に単色や透明の作品。インテリアやグリーンを邪魔しない、さりげない存在感が魅力です。カットしたガラスにステンドグラスの技法でフレームを付け、図形を組み合わせることで平面から立体までさまざまな形を作ることが可能。複雑な構造の作品は一度展開図を描き、模型を作りながらデザインしているそうです。

「使う人のご意見はとても参考になります。お店にいらした方にリクエストやアイデアをもらって作品作りに生かすことも多いです。ランを好きな方が足をとめて入ってこられて、珍しい品種を褒めていただいたり、会話がはずんだり」(西冨さん)

アトリエショップを持つまではイベントや個展で作品を発表していた西冨さん。昨年の10月にオープンしてから、場所を持つことで生まれる、偶然のコミュニケーションを楽しんでいます。「ただ、私がお気に入りすぎるランは非売品だったりするんですけど」と、申し訳なさそうに偏愛ぶりものぞかせます。

葉を伸ばしたり、花が咲いたり、手を掛けるほど日々の変化を観察するのが楽しい植物。ガラスもまた、天候や時間帯によって変わる、光と影の表情が魅力です。眺めるたびに心がうるおう、偏愛せずにいられない植物とガラスをぜひ見つけてみてください。

■ Scape ガラスと植物 https://www.instagram.com/scape_glass/
フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)
BOOK
大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。