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命の源「大地」に人生をかける 農家57人のストーリー

撮影/猪俣博史

SHARE THE LOVE 大地を愛する人々

まるで映画を見ているような一冊だった。映画館で、エンディングロールが流れ終わった後もなかなか席を立つことができない映画を見たあとのように、いま一冊を読み終えてしばらく席に座って、私は自分に問いかけている。

私にとって生きるってどういうことなのだろう……。

この本で紹介されているのは、2011年に起きた東日本大震災で、移住を余儀なくされた農家を支援する目的で活動を始めた「SHARE THE LOVE for JAPAN」に参加し、「大地にやさしい農業」を実践する農家57人の生きる姿だ。

命の源「大地」に人生をかける 農家57人のストーリー
『SHARE THE LOVE 大地を愛する人々』「SHARE THE LOVE for JAPAN」Book制作委員会 (監修, 編集) 2,970円(税込み)

最初に、パラパラとページをめくるだけでも、そこに写る大地、木々や葉の緑、農作物、そして“ひと”、どれもが生命力に満ち溢れているのが伝わってくる。そもそも「SHARE THE LOVE for JAPAN」とは、どういう活動をしているのだろう?

私は、本を読む前にまずそれが知りたくなり、ホームページで調べてみることにした。このホームページが、またとても興味深く、どんどん読み進めたくなる内容だったので、こちらもこの本を手に取っていただく方には、ぜひおすすめしたい。

そしてすぐに分かったことは、この活動は「大地に負担をかけず自然に寄り添う農業をしたい」という志を持った全国の農家の方々が、主に四つのグループに分かれて各地でイベントを開催したり、お互いの知識や感じたことを共有したりしながら成長し続けているということ。

就農経験は少なくても、できるだけ大地に負担をかけない農業に取り組んでみようとする「挑戦者」、持っている知識や経験を生かしながら自身の志に向かって進んでいく「開拓者」、アイデアと行動力を持って次世代のリーダーとなる「革新者」、大地にやさしい農業を目指す上で先駆け的な存在であり、農業界を牽引(けんいん)していく「先駆者」、この四つに分かれている。言うまでもなく、みなフラットな関係だ。

本書で紹介されている農家の人たちが、就農に至った経緯は興味深くさまざまだ。先代より土地を受け継いだ人もいれば、会社員、国際協力NGOのスタッフ、キャビンアテンダント、グラフィックデザイナー、料理人、IT企業の役員など全く異なる職種から農業に飛びこんだ人、都会で育ち農業とは全く繫(つな)がりがなかった人、いつかは農業に携わってみたいと夢を持っていた人。

みな抱えていた背景や、思いもそれぞれだったけれども、いま伝わってくる共通の思いは、環境をとても大切にしているということだ。環境には、自然があり、大地(土)があり、暮らしがあり、人との繫がりがあり、経験と知識がある。しかしこの「ある」ということは、当たり前ではなく、簡単なことでもなく、そこには努力と敬意と感謝があり、後世にも受け継いでいきたいという未来があることが読み取れる。

畑の土にやさしく触れている手、丸めた手にふんわりとした土を乗せてその匂いを確かめる姿、両手いっぱいに愛おしさを込めるかのように苗を植えている様子、香りと手触りを想像してしまいたくなるような土から掘り出されたサツマイモ、田畑を見つめる笑顔。そして印象的なのは、粛々と作業する姿や農作物に向けられた手と顔の表情だ。その一瞬一瞬を捉えた多くの写真と文章からは、57人の大地への愛を受け取ることができる。同時に、力強く大地を踏みしめて立つその姿は、なんとも潔く、清々(すがすが)しく、農業にかける強い意志を感じずにはいられない。

一部、本書から抜粋。

僕の田んぼの土に触れてほしい。そこで「自然の循環」を感じることが社会を変えていく

自分の手間や心をお裾分けするように、丁寧に人と向き合い、心をつなぐ人でありたい

じいちゃん、ばあちゃんの畑を100年先まで続くように守りたい

「食べること」それは、生きていくことだ。私たちが生きるためには、食べ物が必要で、その食べ物を生み出しているのは、大地であり地球上にある自然からの恩恵に他ならない。それはもう、生まれるずっと前から続いてきたこと。恩恵を受けている私たちが、その源を汚してしまうことがあってはならない。

地球上のたくさんの場所で、土も、木々も、植物も、海や空も悲鳴を上げている。私たち人間は、驕(おご)ることなく対等な関係で、それらに敬意を払い、受け継いでいかなければならないと強く思う。

『SHARE THE LOVE 大地を愛する人々』この一冊は、自分のフィールドを自ら切り開き、私たちの命の源である大地に人生をかけて、強い意志とともに生きる意味を見出(みいだ)した57人のストーリー。読者によって、心に刺さるポイントがいかようにも変化するメッセージがたくさん込められている。

命の源「大地」に人生をかける 農家57人のストーリー
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PROFILE
藤井亜希子

ふじい・あきこ
湘南 蔦屋書店 旅コンシェルジュ
旅行会社勤務時代は、海外ホテルやオプショナルツアーなど現地への手配を担当。その経験を生かし、ハワイ・北欧・フランス・イギリスなどを中心に、旅行書の選書をはじめ世界各国の自然や文化、人々の暮らしなどその土地にまつわるフェアや旅行イベントを提案。プライベートでは、自他ともに認めるハワイラバー。

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