花のない花屋
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お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
佐々木じゅん 47歳 女性
パート
千葉県在住

    ◇

突然の姉の死。なんの前触れもなく倒れてそのまま、48歳という若さで逝ってしまいました。姉本人もきっと、何も自覚できないまま……。

1カ月ほど前のことです。姉と同居する母から、家での夕食中に姉が倒れて緊急入院したことを知らされました。一時は心肺停止になったものの脈が戻り、手術ができるまでになりましたが、とうとう出血が止まらないまま翌日の夕方に息を引き取りました。腹部動脈瘤(りゅう)破裂という病気でした。

小さい時いつも一緒に遊んでくれた2歳上の姉。姉の友達と遊ぶのは少しだけ年上の仲間入りをしたようで、とてもうれしかったことを覚えています。

残された遺品のなかに、小学校の頃の姉の友人からの30年ぶりの手紙がありました。「あの頃の私たちは毎日何の心配もなく、日が暮れて何度も叱られたのに、ずっと遊んでいたね。あの時代が一番良かった」と書かれていました。姉はどんな返事をしたんだろう……と姉のことを考えながら実家で姉の遺品を整理するのが、今の私の安らぎの時間になっています。

姉はストイックな完璧主義。私の持っていないところをたくさん持っている憧れの存在でした。一方、姉は姉で、適当なところのある私をうらやましがっていたかもしれません。何せ姉はすべてのことをとことん突き詰めないと気がすまない性格で、例えば体を鍛えようと思ったら、毎朝暗いうちに起きて、1〜2時間は必ず走っていました。それだけではありません。次の日は雨という予報があれば次の日の分も、合計4時間走ってくることもありました。

思春期に入った頃、姉は心と身体のバランスを崩し、一時期家から出られない状態で、世間から少し離れたところで時間を過ごしていたことがありました。その頃から音楽と映画をこよなく愛すようになり、遺品のなかには何百枚という大量のDVDとCDや、繰り返し一緒に聞いたチェッカーズのLPレコードなどが大切にしまわれていました。

音楽と映画の素晴らしさを教えてくれたのも姉でした。姉のDVDをひとつひとつ確認していく作業は、知らない姉のことを少し知るような気がします。

大人になり、ディズニーランドのキャストになった姉は、よい職場と仲間に出会えたと喜んで、亡くなるまでの20年以上楽しそうに働いていました。倒れた当日もいつも通り仕事をし、お客様に満面の笑みを見せていたそうです。

またお菓子作りが得意だったので、週末にお菓子を作っては、月曜日に職場へ差し入れなどもしていたようです。今年の誕生日にはマカロンとダックワーズを作って私にもプレゼントしてくれましたが、お菓子作りの道具もいろいろそろっていて、仕上がりはプロ顔負けです。

それほど人付き合いに積極的ではない姉にとっては、手作りお菓子はコミュニケーション道具のひとつでもあったのでしょう。たくさんの同僚の方からお悔やみのメッセージをいただきましたが、その多くに姉の手作りお菓子の思い出が書かれていました。亡くなった週の土日にも、何か新しいお菓子を作ろうとしていたようです。亡くなった翌日も、またその翌日も姉宛てのお菓子の材料が届きました。その週末はどんなお菓子を作ろうと思っていたのか……今となっては聞くこともできません。

今日も実家では、飼い猫をひざにのせて柔らかくほほ笑んでいる姉の遺影を前に、涙目の母が、「ちょっと待っていてね。すぐに会えるから」と言いながら、お花を供えていました。少し前に逝ってしまったその猫と、今ごろ天国で再会しているかもしれません。

天国に行った姉と、姉を突然失ってぼうぜんとしている両親へ、元気づけるお花を贈っていただけるとうれしいです。

お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて
≪花材≫スプレーバラ、スプレーカーネーション、ベニバナ、マトリカリア、キョウガノコ、ブバルディア、ヒペリカム、モナルダ、アガパンサス、レースフラワー、アスクレピアス、ブルーベリー

花束をつくった東さんのコメント

お姉様が作るのがお好きだったという、かわいいお菓子をイメージしたアレンジメントです。

ディズニーランドのキャストを務めていらしたというお姉様。ピンクのキョウガノコや、オレンジのつぼみが開くと中から黄色い花が顔を出すアスクレピアスなど、小さなお花をリズミカルに詰め込み、お姉様の色とりどりの人生を思って仕上げました。また足元には、ヒペリカムという実を付ける植物や、お菓子にも使われるブルーベリーも見えています。

天国のお姉様に、みなさんの思いが届きますように。またお姉様を失ったご家族に、お花の力で少しでも明るい気持ちが戻ってくることを祈っています。

お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて
お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて
お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて
お菓子作りが好きだった姉が、前触れもなく倒れて

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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