渡辺早織の思い出ちょっぴり、つまみぐい。
連載をフォローする

トンカ豆のビシソワーズ 「好き」の先にある新たな出会い

料理好きな俳優・渡辺早織さんが心に寄り添った手料理を紹介する連載です。先月から動画も加わり、リニューアル。ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、思い出とつながったご飯は何だか忘れられません。明日を頑張るあなたの活力になりますように……。そんな思いを込めた料理エッセーです。詳しい作り方はフォトギャラリーでご紹介します。

夢中になる気持ちと新しい発見

どうして宇宙に引力があるのか分かってしまったら、少しがっかりするかもしれない。

トンカ豆のビシソワーズ 「好き」の先にある新たな出会い

特別好きなものに出会った時は、なんでか分からないけど、見るだけでドキドキして、ぎゅっと心をつかまれたかと思えば、心臓だけが体から飛び出てしまいそうなほど大きなパワーでぐんぐん引き寄せられてしまう。さらにそれらは簡単には離れずに、一定の距離を保ちながらずっと自分の周りにいるような心地だ。

どこが好きかはたっぷり話せても、なぜ好きになったかを言葉にするのは難しい。しっかり説明できればいいのだけれど、先に動く心もまた大切にしたいから、どうして最初に惹(ひ)かれたのかは、いつまでも宇宙の彼方(かなた)をさまよう大きな議題であってほしいとも思っている。

トンカ豆のビシソワーズ 「好き」の先にある新たな出会い

好きなおもちゃに好きな食べもの、動物や人。夢中になったものは今までいくつあるんだろう。数えることはできなそうだけど、人生ではじめて夢中になったものはアニメ美少女戦士セーラームーンで、そのキラキラ輝く戦うお姫様たちに心を奪われた。

毎週土曜日の夜のアニメを楽しむことや、同じマンションの幼馴染の子たちとごっこ遊びをすることも大切なイベントだったけれど、毎日おねだりをして母にもらった100円をにぎりしめては、近くの駄菓子屋さんに行ってセーラームーンのカードを慎重に5枚選ぶのが何よりも大事な時間だった。

キラキラのカードが出ると本当に嬉(うれ)しくて、鉱山で宝石を掘り当てたかのごとく跳びはねて喜んだ。全部のカードはお年玉で買ったカードフォルダに大切にしまっていたのだけれど、文字通り「毎日」カードを引いていたから、膨れ上がった大容量のフォルダは何冊にもなって、気が付くとシリーズもののレアなカードなんかも全部そろっていった。

同じように持ち歩けない重さのセーラームーンのカードを集めたお姉ちゃんと、「大人になったら売れるかもしれないから大事にとっておこう」と、もうカードを集めなくなった小学生のころにニヤニヤと企てて、その時までゆっくり寝かせることにした。

すっかりファイルを眺めなくなって実家の押し入れを占領している今日の日まで、その時は来ていないし、きっとこれからも来ないと思う。

一度好きになったものは、形や距離がかわっても、自分の一部になるものなのだろう。

トンカ豆のビシソワーズ 「好き」の先にある新たな出会い

何かにハマるのはとても楽しいことで、それは人生に多かれ少なかれ必ず影響してくるものだ。そのことばっかり考えて、たくさん調べて、気が付くと好きが得意になっていく。それは、頑丈でやさしい武器を手にいれたような感覚であり、はたまた自分の体に溶けていく栄養のようなものでもある。

新しい自分になると、新しい友達ができて、本当に突き詰めると仕事になることもある。ガリレオ・ガリレイが夢中で星空を眺めたように、自分の好きが世界の誰かを変えることがあるのならば、それはなんて幸せなことなのだろう。だから周りが見たらまだ知らないものでも、工夫して熱心に伝えていくことができれば、その魅力は共感してもらえると信じていいのだと思う。

トンカ豆のビシソワーズ 「好き」の先にある新たな出会い

料理をする上でそういった新しい発見があると、とても嬉しい気持ちになる。食材の組み合わせを変えることや新しいソースを作り出すこと。普段は使わない食材を自分の料理に組み込むこと。好きを体現することを、日常に落とし込める一番の手段は、私の場合料理なのだと思う。

だからどうか知らないからとそっぽを向かないで、少しだけ耳を傾けてもらえたら……。

今夢中になっている食材は、トンカ豆です。

初めて聞いた時は想像もできない、何色かもわからない、おそらく豆なんだろうということがかろうじてあるヒントだ。チーズケーキを作ろうとしたら材料に記載されていたのでネットで注文してみたのがきっかけだった。

そうするとまた想像とはまったくかけ離れたものが届く。全体は黒くてかんだら歯が負けそうなほど硬い。アーモンドのようなサイズでレーズンのようにしわしわだ。しかしその封を切って香りをかいだ瞬間にあまりの衝撃に頭の中に鐘が鳴り響いた。

それは、杏仁(あんにん)のように華やかであり、バニラのように妖艶(ようえん)で甘く、シナモンのようにスパイシーで、不思議な不思議な魅力的な香りだった。

私はすぐにそれの虜(とりこ)になって、初めて出会ったその豆を日常に迎え入れるために、色々と試行錯誤をした。

そうしたら、ケーキやカスタードだけではなく、キッシュやパスタなどの料理にも合うことが分かった。

その中で、この夏に簡単に楽しめるレシピを今日はご紹介します。

NEXT PAGE知らないはずなのに心地いいトンカ豆の香り

REACTION

LIKE
COMMENT
1
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

連載をフォローする

COMMENT

評価の高い順
コメントを書いてマイル獲得! みんなのコメントを見る

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら