花のない花屋
連載をフォローする

ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
由利菜穂子(仮名) 40歳 
介護福祉士
東京都在住

    ◇

私の母は今年72歳になります。31歳で私を産んでくれました。

2人の兄たちが、実は腹違いであることを知ったのは、私が18歳のときです。子どもが2人と舅(しゅうと)、姑(しゅうとめ)、小姑がいる父と職場で知り合い、再婚した母。親から猛反対を受け、勘当されてまで「私がこの子たちを育てなければ」という思いだけで結婚したそうです。

結婚後、待っていたのは、決して平穏ではない日々だったようです。舅、姑にいじめられ、小姑も父も味方になってくれたことはなく、「日々内職をしながら必死に生きてきた」と、のちに涙ながらに話してくれたこともありました。

母は娘の私から見ても、誰にでも情が深く、竹を割ったような裏表のない性格。何か壁にぶち当たるたび、「私はちゃんと生きるから」という言葉を口癖のように自身に言い聞かせています。そんな母だけに18歳で兄たちのことを聞かされるまで、母が違うことはまったく気づきもしなかったほど、私たち兄妹を平等に育ててくれました。

また私の結婚後は「私が子どもたちを見るから、夫婦で頑張って働きなさい!」と言ってくれて、3人の子どもたちの面倒を見てくれたのも母でした。下の子をおんぶひもで背負って、両手は2人の子どもたちと手をつないで……そうやって子どもたちの保育園などへの送り迎えをしてくれた母の姿を、今もよく思い出します。

そうして3人の子どもたちは、祖父母をいつも思いやってくれる優しい子たちに育ちました。3人目が生まれたあと娘の私がうつ病になり休職していた時も、ずっとサポートをしてくれた母には頭が上がりません。また上の子の発達障害がわかった時には「親のあなたたちの気持ちを思うと私は薄っぺらい言葉は言えない」と静かに涙してくれました。そんな上の子も今は立派な18歳に育ちました。「お母さんは片付けが苦手だから」などと私にチクりと意見することがあるほどです。

母も舅や姑を見送って伯母と3人暮らしとなり、やっと自分の時間をのんびり楽しめるようになりました。ところがその矢先、コロナ禍がやってきたのです。徒歩5分とスープの冷めない距離に住んでいるものの、70歳を超えた母への感染を心配する子どもたちとの行き来は我慢せざるを得なくなり、寂しい思いをしていることが、電話でのやりとりでもわかります。

「孫のために長生きしなきゃ!」「孫の結婚式には絶対出なきゃ!」「スマホで脳トレしているの!」。そんな言葉を聞くたびに、孫たちは幸せだなぁと思い、同時に母の娘として生まれてきたことの幸せをつくづく感じています。

そんな母に、これまでしてきてくれたことへの感謝と、どんな状況も受けとめてしなやかに強く生きてきたことへの尊敬の思いを込めて、お花を贈っていただけませんでしょうか。70代になった今も、出かけるときはヒールと口紅を欠かさず、スカーフで差し色をするなどおしゃれに全力投球している母にぴったりのお花をお願いします。

ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ
≪花材≫ダリア、バラ、グズマニア、アランセラ、ケイトウ、ガーベラ、マキ

花束をつくった東さんのコメント

真っ赤なお花を集めたアレンジです。世界中に赤いお花はたくさんありますが、メインにしたのは、2種のダリア。ほかにバラやガーベラ、2種類のケイトウなどを使っています。

同じ赤い花でも、お花の形状などによってグループを作って配置。赤い花のエレガントさに、力強さをプラスして、ご家族をエネルギッシュに助け、それでいておしゃれなお母様のイメージを作りました。

お花の赤とは対照的な足元の緑も、そんなお母様の力強さをより一層引き立てています。素敵なお母様に、投稿者様の感謝の気持ちが届くといいですね。

ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ
ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ
ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ
ヒールと口紅は欠かさない。強くしなやかな母へ

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

応募フォームはこちら

REACTION

LIKE
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら