Lorenzo STYLE
連載をフォローする

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション

「バグッタ」の2023年春夏コレクションから。左のモデルが着用しているのは、ユニセックスのシャツ&ショートパンツ

紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」が2022年6月14日から17日までイタリア・フィレンツェで開催された。第102回を迎えた今回、出展者たちは2023年春夏モードをバイヤーたちにアピールした。世界屈指といえるメンズファッションのトレードフェアで目の当たりにした変化とともに、伝統を背景に創意工夫を続ける人々の姿を紹介する。

「魔法の島」で再興

大会テーマである「ピッティ・アイランド」を、オーガナイザー(主催者)は以下のように抽象を含ませながら表現した。

「定点である島は、物理的ポイントであるとともに精神的ポイントでもあり、特に出会いやアイデア交換の場でもあります。試み、増殖、多様性が集中した実験室のようなエリアです。本土とのコンスタントな連絡によってけっして孤立せず、絶えず精神やその歩みについての交流が行われているのです。このエキゾチックで都会的な魔法の島は、あなたを再び楽しませ、驚かせることでしょう」

魔法の島の再興は、ある意味で成功したようだ。新型コロナウイルス対策の影響などで僅(わず)か396ブランドまでに減ってしまった昨2021年夏に対して、今回それは682ブランドにまで回復した。訪れたバイヤー数も1万600人で昨夏と比べて約2.6倍となった。うち4割は日本も含む70の外国と地域からの来場だった。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
今回は、イベントを「Island(島)」に喩(たと)えた

ピッティ“名物”といえる、華やかな装いで中庭を闊歩(かっぽ)するファッション・インフルエンサーたちの賑(にぎ)わいも回復の兆しを見せていた。
常連参加者のウーゴ氏は、こう分析する。

「前回2回のピッティは、開催はされたものの重苦しい雰囲気が漂っていた。だからこそ、今朝、フィレンツェのバールでエスプレッソ・コーヒーを一杯傾けたとき、えもいわれぬ喜びに包まれた。『ありがとう』と、幸せに感謝したよ」。その強面(こわもて)とのコントラストに、彼の感慨が一層強く感じられた。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
ポルトガルからやってきたファッション・インフルエンサーのウーゴ氏(左)と仲間たち

いっぽうで、イベントは社会派的側面も押さえていた。「ウクライナのファッションは今!」と題されたコーナーで、同国にゆかりある11のデザイナーおよびブランドが紹介された。その中のひとつ、グードゥーは2015年にキーウで立ち上げられたレーベルで、ジョージア人デザイナーのラーシャ・ムディナラツェがクリエイティブ・ディレクターを務めている。スタッフは「今は厳しい時期だが、仕事を続けるしかない」と筆者に語りながらも、意欲的かつ大胆なパターンをもつ新作のボトムスを見せてくれた。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
キーウを本拠とする「グードゥー」の新作を手にするオルガ氏(左)とアレクサンドル氏(右)

ジェンダーレスと、異次元の発想

気になる2023年春夏のトレンドは?

複数のブランドやインフルエンサーに取材したところ、ずばり「ストライプ」「パステルカラー」がキーとなりそうだ。小物では、ステッキを下げたファッショニスタが以前より目立つようになった。かつての定番小道具だった「葉巻」が時流に合わなくなったためかもしれない。

ただしそうしたデザイン上とは別に、今回もうひとつのキーワードといえば、「ジェンダーレス」であった。

その好例は、1945年に起源をさかのぼるミラノのカミチェリア、つまりシャツのブランドである「バグッタ」である。彼らは大会オーガナイザーであるピッティ・イマージネ社のテラスで男女モデルをフィーチャーし、デニムやコットン素材によるユニセックスのシャツやショートパンツを披露した。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
メンズとレディースを同時に発表した「バグッタ」のイベント

靴にフォーカスすれば、スニーカーと、この国のトラッドであるクラシコ・イタリアの装いの組み合わせは、すっかり異質なものではなくなった。そればかりか、そのコーディネートの妙を競っている。

さすがにクラシコ・イタリアとまではいなかったが、あのクロックスの合成樹脂製サンダルを巧みに採り入れたファッショニスタさえ目撃した。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
「ラルディーニ」は屋外にブースを設け、ピエトロ・テルツィーニとのカプセル・コレクションを発表した

スニーカーへの熱い視線は、長年ジャケットで知られてきた「ラルディーニ」でも同じだ。新進気鋭のポップ・アーティスト、ピエトロ・テルツィーニとのカプセル・コレクションを屋外で発表。ブランド創業家のブレンナ・ラルディーニ氏は「より若い人々に訴求したい」と、その趣旨を語った。

そのスニーカーといえば、「フェスーラ」のブースでのことだ。2023年初頭にリリースする新作は、自動車メーカーであるフィアットとのコラボレーションである。電気自動車「500e」のロゴを再現したコレクションだ。2023年初頭に発売するそれは、農業や林業で生じる廃棄物を再生した素材を用いることで、ゼロ・エミッションカーと共通の「環境への配慮」をアピールする。

そうした商品コンセプトを筆者に説明してくれた男性こそ、フェスーラのファウンダー(創立者)であるアンドレア・ヴェッキオーラ氏であった。彼らは、数々の有名靴ブランド発祥の地として知られる中部マルケ州を本拠としている。祖父は一帯の靴製造における草創期の一人であった。

「私自身は、大学で経済学を専攻しました」。いわば靴作りの素人だった。やがて大学卒業後の1999年、1メートルにおよぶ幅広のゴムバンドを、ミイラを包むごとく巻いて作る靴で特許を取得した。

「従来の製靴法とは、まったく異なったものでした。でも祖父は『やってみろ!』と言って、所有していた工場のひとつを、私のために空けてくれたのです」。近年ではクラウドファンディングも積極的に活用している。

歴史あるブランドや伝統の産地で、果敢な挑戦が続けられている。

変わりゆく「紳士」の定義のなかで ピッティ・イマージネ・ウオモ 2023年春夏コレクション
「フェスーラ」のファウンダー、アンドレア・ヴェッキオーラ氏。フィアットとのコラボレーション商品「ランフレックス500e」とともに
NEXT PAGE男は、すかさず裏地を見せた

REACTION

LIKE
COMMENT
0
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

連載をフォローする

COMMENT

コメントを書いてマイル獲得! みんなのコメントを見る

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら