カメラは旅する
連載をフォローする

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森

「東北の夏色を感じられる季節がやってきた」

受け継がれる伝統文化と自然に恵まれた魅力的な東北。秋田県の名物「大曲の花火(全国花火競技大会)」や、青森県奥入瀬(おいらせ)渓流の緑の濃淡が、そんな東北を彩る季節。いよいよ今年の夏は、「大曲の花火」が開催されるというニュースも届いた。いまだにマスクを常備する日々は続くけれど、新しい旅を求める気持ちも沸々と湧いてくる。夜空を鮮やかに飾る花火師や、自然の色の魅力を伝える人を訪ねた、2020年夏の終わりの旅を振り返った。

秋田の空を彩る花火にかける思い

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
「創造花火の皇帝」、「型物の天才」と呼ばれる今野義和さん

「いやぁ、よくきてくださいました!」

今年で創業123年になる北日本花火興業を訪ねたのは、2020年9月。満面の笑みで迎えてくれたのはその4代目、花火師の今野義和さんだった。スマイルマークなどのキャラクター花火の技術で知られ、日本三大花火のひとつ、秋田県の夏の風物詩「大曲の花火」で有名な秋田県大仙市に工場を構えている。そして、今でこそ全国的に見られるようになった、音楽に合わせて花火が打ち上げられる演出。今野さんは、この演出方法の草分け的存在でもある。

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
「大曲の花火」での内閣総理大臣賞(最も優秀と認められた花火を作った花火師に贈られる賞)をはじめ、全国の花火大会で数々の賞を受賞。花火の写真と共にトロフィーや表彰状が並んでいる

「大曲の花火」では、大輪の菊やぼたんを描く伝統技術を競う部門などと並んで、伝統にとらわれずにキャラクターなどユニークな作品が集まる 「創造花火」という部門がある。創造花火は秋田県大仙市が発祥地で、今野さんの先代のお父様の代からチャレンジが始まった。

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
花火玉の中身の構造がわかる模型も飾られていた

創造花火の「型物」と呼ばれるキャラクター花火の難しさは、「星」と言われる火薬の粒の配列にある。花火玉の中心に近い星は空中で玉が爆発したときにほとんど周辺に飛ばず、中心から遠い星は遠くに飛ぶという特徴がある。このためキャラクターの見た目のまま星を詰めればいいというものではなく、飛距離を予想しながら星を詰めないといけない。

「割物(わりもの)」と呼ばれる伝統的な花火をひとりで作れるようになるまでには最低5年かかると言われているから、「型物」を作れるようになるには更なる豊富な経験と技術、そして時間を要するのは想像がつく。

今野さんが「創造花火の帝王」、「型物の皇帝」と呼ばれるゆえんは、この創造花火の第一人者として知られるからだ。

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
(左上)花火の光や色を形作る「星」と呼ばれる火薬を、厚めのクラフト紙で作った半球状の「玉皮」に隙間がないように敷き詰めていく。(右上)その内側に和紙を敷き、星を飛ばす「割り薬」という小さめの火薬を詰める。(下)半球二つを合わせて、一つの球体にする
大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
花火玉が作られる工場は、夏を感じる火薬の香りがしていた。大会近くになると、出番を待つ花火玉でいっぱいになるのだという

今野さんは「花火×音楽」の演出を手がけた先駆者でもある。学生時代の吹奏楽部の経験をヒントに、「花火に音楽要素を加えると表現が広がるかもしれない」と考え、花火と音楽を融合させて花火の世界をさらに広げていった。

コンピューターの技術も進み、今では花火の打ち上げ技術も進化した。伝統花火を基盤に、これからもっと最新の花火が生まれ、演出方法もさらに広がるのかもしれない。

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
花火玉を作るための使い込まれた道具たち

「『あの時みたあの花火』と、一生記憶に残るような花火を打ち上げたい」と今野さんは語ってくれた。ハッと驚くような創造花火や、音楽の演出と花火が相まって生まれる空気感は、今野さんが持ち続けている、そんな気持ちが表現されているのかもしれない。 心にずっと残る花火を作ることができるのは、技術だけではなく、今野さんの熱い思いが根底にあるからに違いない。

「今年は各地の花火大会の開催が急に決まり、例年より2カ月遅れの急ピッチで準備が進んでいるんです」と、今年、花火大会に向けて準備中の今野さんから、うれしいメールが届いた。コロナの影響で全国の花火大会がこんなに長いこと中止になるとは、取材当時は想像すらできなかった。

今年は「男鹿日本海花火」(2022年8月14日)や、「大曲の花火(全国花火競技大会)」(2022年8月27日)が3年ぶりに開催される予定だ。この数年温めてきた今野さんの思いがようやく打ち上げられ、秋田の空を彩ろうとしている。

大曲の花火と奥入瀬のコケ、東北の色を求めて 写真家が旅する秋田・青森
夏の「大曲の花火」の様子(写真提供=北日本花火興業)
NEXT PAGEコケさんぽで緑の濃淡を楽しむ、奥入瀬渓流

REACTION

LIKE
COMMENT
1
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

連載をフォローする

COMMENT

評価の高い順
コメントを書いてマイル獲得! みんなのコメントを見る

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら