編集長インタビュー
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僕の曲、鼻歌で歌ってくれたらすてき 作詞家・音楽プロデューサー、いしわたり淳治さん

いま、あなたに会いたい――。&編集長が各界で活躍する話題の方を訪ねて、思いをじっくり掘り下げる「編集長インタビュー」。&w、&M、&Travelの3マガジン横断型インタビューの第3回は、作詞家で音楽プロデューサーの、いしわたり淳治さんです。&Mでの連載で言葉への感性を惜しみなく披露するいしわたりさんが、人気バンド「スーパーカー」の解散以来16年ぶりに自らのグループ「THE BLACKBAND」を結成し、7月には5枚目のシングルを発表しました。なぜ、再びバンドなのですか? 言葉の達人に、星野学編集長が聞きました。

詞先で作る「令和の大人のサウンド」

星野:音楽プロデューサーでアレンジャーの野村陽一郎さん、作曲家でシンガーソングライターの中村泰輔(だいすけ)さんとバンド「THE BLACKBAND」を昨年結成しました。バンド活動は2005年に解散した「スーパーカー」以来ですね。

「THE BLACKBAND」。左から野村陽一郎、いしわたり淳治、中村泰輔=ソニー・ミュージックエンタテインメント提供
「THE BLACKBAND」。左から野村陽一郎、いしわたり淳治、中村泰輔=ソニー・ミュージックエンタテインメント提供

いしわたり:メンバーはよく飲みに行く仲間です。僕らはみな裏方というか、オーダーを受けて曲を作ることが多いんですが、それでは作れないものがあることにだんだん気づいてきて。一番やってみたかったのは、歌詞を先に書いて、曲を後からつけることでした。

星野:詞先(しせん)と呼ばれる手法ですね。いしわたりさんがまず歌詞を書いて、野村さんや中村さんが曲を作っていくわけですね。

いしわたり:今の音楽業界は9割9分曲が先にあるオーダー(曲先=きょくせん)で、メロディーに対して言葉が、窮屈とは言わないまでも合わせにいく感じになります。僕は常々、曲が先にある音楽と、歌謡曲の時代のような歌詞が先にある音楽とでは、できあがった時の質感がまったく違うと思っています。令和の時代に、歌詞を先に書いて音楽を作るなら、自分でやるべきだと思ったんです。

僕の曲、鼻歌で歌ってくれたらすてき 作詞家・音楽プロデューサー、いしわたり淳治さん

いしわたり:野村陽一郎は、僕が以前プロデュースしていたバンド「FLiP」のディレクターに7、8年前、「僕に足りないものを全部持っている人がいる」と紹介されたんです。中村泰輔は、僕の所属事務所に入ってきた若手作曲家で、デモ音源を聴いたときにめちゃくちゃ声がよくて、自分が書いた言葉を歌ってほしいなと思ったんです。とても都会的な声で、大人っぽい歌い方ができるのが魅力で。

星野:私は今56歳ですが、「THE BLACKBAND」の音楽は、音は最先端なのに、とても落ち着いて聴けます。

いしわたり:「THE BLACKBAND」のコンセプトの一つに、「大人が聴く音楽」があります。僕は今年45歳ですが、同世代から、音楽は好きだけど何を聴いていいかわからないという話を結構聞くんです。若い頃に聴いていた音楽を聴くだけでは寂しいけれど、背伸びして若者の音楽を聴くのも何か違う……と。僕はこの先マーケットとして、大人が背伸びしないで聴ける最新の音楽が重要になる気がしていて、「令和の大人のサウンド」を作りたい、という感じでしょうか。

僕の曲、鼻歌で歌ってくれたらすてき 作詞家・音楽プロデューサー、いしわたり淳治さん

いしわたり:僕らの世代は、音楽を聴くイコール歌を聴く、カラオケで歌うところがゴール、みたいな感覚があると思います。今の若い子にとって音楽は聴くもの、歌う時は難しいものを競って歌う、という感じがする。下手に歌っても染みるものが背骨に通っているようなものは今の音楽には失われつつあると思います。でも、「歌った時にしっくりくる」ものは、なくなってほしくないんです。

意識して変える曲調 実験や冒険の繰り返し 

星野:これまで発表された5曲、曲調はそれぞれ違いますね。7月に発表した最新作「なぞなぞ」はエレクトロポップで、昨年出された「オーガストの風」は山下達郎風です。

いしわたり:曲調は意識的に変えています。実験や冒険の繰り返しです。そのうち、「THE BLACKBAND」のカラーはいやが応でも固まってくると思いますが、今は持っているアイディアとやったことのないことを組み合わせて、その場その場で一番おもしろいと思うことをしています。

たとえば、「なぞなぞ」では、「じゃあ 元気でね」のような短いせりふや、脈絡がないフレーズ同士を並べていった時の響きが知りたかった。Aメロでは文脈がつかみにくいけど、サビに入ったら腑(ふ)に落ちるようなものにしました。

僕の曲、鼻歌で歌ってくれたらすてき 作詞家・音楽プロデューサー、いしわたり淳治さん

星野:歌詞を書くとき、メロディーやコードは頭に浮かんでいるのですか。

いしわたり:こういう曲になればいいな、とか、誰々の何年のあの曲みたいな、というイメージはざっくりとありますが、それを知らずにメンバーがメロディーをつけアレンジしてくれるのが楽しい。歌詞をメンバーに見せると、彼らがその場でメロディーをつけていきます。僕はそれを後ろで聴いていて、今のはよかった、今のはイントネーションの位置がおかしくて違う言葉に聞こえるとか、たまに言うくらい。

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