花のない花屋
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移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
長谷美優さん(仮名)30歳 
学生
英国在住

    ◇

この4月、60歳の母が念願だった移動式本屋をスタートさせました。大人も子どもも楽しめる古本や新刊本を車に載せ、自分で運転してイベントで出店したり、家の前に車を置いて売ることもあります。

母は昔から本が好きで、我が家の本棚には母が子どものころに読んでいた本が大量に並んでいました。私も小さいときから、自然に母が読んでいた本を手に取って読んでいくなかで、母と同じ本好きになりました。

母の本は海外文学が多く、私に外国の生活や言葉に興味をもつきっかけを与えてくれました。その影響もあって、いつか海外に住む! 仕事する!ということを、いつも頭の片隅に置いて少女時代を過ごしました。その後大学に進学し、会社員生活を経て、去年からイギリスに留学しています。

わざわざ海外の進学先を選んだのは、イギリスに勉強したい分野があったということに加えて、「赤毛のアン」や「秘密の花園」など、母の本で読んだ外国の景色のなかで生活したいという、子どものころからの夢の存在も大きいです。そう思うと、母と本の影響に感謝すると同時に、その影響力の大きさに驚いてしまいます。

ちなみに母が手入れをしている我が家の庭は、「さまざまな緑や花が無造作に見えて、実は自然に調和していて美しい」というコンセプト。イギリスに来て、そうした庭がイングリッシュガーデンと呼ばれることもあると知りました。こちらでそんな庭を目にするたび、いつか母と一緒にこちらの庭巡りをすることを楽しみにするようになりました。

さまざまな会社を転職しながらステップアップしてきた母ですが、移動式本屋をやりたいという夢は、数年前から持っていたようです。ただし、私が母からそんな夢を聞いたのは、ごく最近。コロナ禍に入るちょっと前のことだったと思います。夢とはいえ、そのときには本の仕入れの方法や、どんな本を売りたいかなど、具体的にイメージが固まっていて驚いたことを覚えています。

母は私が子どものころからずっとフルタイムで忙しく働いてきました。仕事で忙しいなか、自分の夢をかなえようと着々と準備を進めていたことを、同じ社会人として尊敬しました。それでなくても、最近は管理職として、非常に忙しい毎日を送っていた母に「本屋をしたいなら定年より早く退職して、準備に集中したらいいのに」と声をかけたこともありました。

でも母は定年まで勤めあげ、その傍らで移動式本屋の開店準備も進めていきました。そして定年退職を迎えた今年、とうとうオープンにこぎつけました。その行動力と手を抜かない姿勢に拍手を送り、母が楽しく本屋さんをできますようにという願いを花に込めたいと思います。

移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が
≪花材≫クレマチス、アスチルベ、バラ(オールドローズ)、スプレーバラ、モナルダ、ユーカリ

花束をつくった東さんのコメント

お母様も作っていらっしゃるイングリッシュガーデンのような、作り込まないナチュラルなお庭をイメージして、アレンジを作りました。

実は私も最近スコットランドに仕事で出かけたばかり。あちらの住宅街でも、かわいらしい庭をたくさん見かけました。ピンクのオールドローズやスプレーバラ、モナルダ、クレマチスなど、イギリスの風景に合うナチュラルな雰囲気の草花を、高さを変えて自然に配置しています。

第二の人生を踏み出されたお母様と投稿者様へのエールとともに贈ります。

移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が
移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が
移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が
移動式本屋を開きたい。働きながら夢を温めた母が

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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