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優しくないベンチ 見て見ぬふりしていた問題に改めて気づく

撮影/馬場磨貴

『誰のための排除アート? 不寛容と自己責任論』

皆さんが日常を過ごす中で、ベンチは近くにありますか? それを利用しますか? そのベンチはどのような形をしているでしょうか?

頭の中に思い描くベンチとは異なり、座面の間には仕切りがあったり、二人で座るには少し短かったりしませんか? 急に具合が悪くなっても横になることができない、カップルで寄り添うこともできない、そのようなベンチは路上生活者が寝そべることができないようにデザインされており、一般的に「排除アート」と言われています。

誰のための排除アート? 不寛容と自己責任論』では、「排除アート」が設置されるようになった背景や歴史を読み解き、現在の公共空間の抱える問題点を浮き彫りにします。

優しくないベンチ 見て見ぬふりしていた問題に改めて気づく
『誰のための排除アート?  不寛容と自己責任論』五十嵐太郎 (著) 岩波書店 572円(税込み)

1995年の地下鉄サリン事件を契機に、セキュリティー意識が増大し、監視カメラが普及するのと並行しながら排除アートは出現するようになりました。

東京・新宿西口の地下通路にある円筒型のオブジェや銀座の地下通路に並ぶ動物の彫刻を見たことがある人は多いでしょう。著者の五十嵐太郎さんが、15年以上前に書いた『過防備都市』でもこのことについて詳しく記載しています。今読み返すと、当時のセキュリティーに対する危機意識が現在と大きく異なっていることに驚きます。

現在では、監視カメラがあることは、当たり前になり、犯罪者の検挙にも役立っていることから問題視されることもありませんが、当時は賛否があったことがわかります。セキュリティー意識と同様に増大していったのは、他者への不寛容と自己責任論であると五十嵐さんは書きます。

場の占有を恐れ、人々の苦情を避けるために、誰にとっても優しくない空間ばかりになっています。

例えば、公園では、「ボール遊びをしない」や「大声を出さない」などの注意事項が書かれた看板が掲示され、行動も制限されています。金銭的対価でサービスや商品を購入した消費者でないと、街に滞在することが許されないような雰囲気があります。選ばれた人だけが使っていいような公共空間は危機を迎えています。私たちも気付かないうちにそうした環境に順応させられ、都市を使う想像力を失いつつあるのかもしれません。

次の休みは公園のベンチに寝そべってみようと思いました。

わずか60ページ程度の本書は、私たちが見て見ぬふりをしている問題に改めて気付かせてくれるだけでなく、逆説的に都市を楽しく使いたくなるような1冊でした。

優しくないベンチ 見て見ぬふりしていた問題に改めて気づく
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PROFILE
嵯峨山瑛

さがやま・あきら
二子玉川 蔦屋家電 建築・インテリアコンシェルジュ
大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。 大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。 卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。

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