京都ゆるり休日さんぽ
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旧任天堂本社がホテルに 「丸福樓」の建築美と料理、文化を体験〈前編〉

任天堂創業の地であり、戦前洋建築の重厚なオーラを放ちつつも、長年「開かずの館(やかた)」だった旧任天堂本社が今年4月、スモールラグジュアリーホテルに生まれ変わりました。設計・監修を務めたのは、建築家・安藤忠雄氏。任天堂ファンも、建築マニアも、新しい京都ステイを探す人にも心躍るホテル「丸福樓(まるふくろう)」が、今回の散歩の行き先です。前後編でお送りします。

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、京都の素敵なスポットをご案内しています。

近代建築の美を生かし、任天堂のDNAも未来へ

既存の建物や備品にできる限り手を加えず、旧任天堂社屋の文化と趣、ここを「聖地」と訪れる任天堂ファンの思いを守る意匠に
既存の建物や備品にできる限り手を加えず、旧任天堂社屋の文化と趣、ここを「聖地」と訪れる任天堂ファンの思いを守る意匠に

「トランプ・かるた」と刻まれた社名板に、福の文字を◯で囲んだロゴ、深い青緑色の窓枠…。「丸福樓」に残るこれらはすべて、旧任天堂社屋に元からある意匠です。ホテルの名は、任天堂の前身である「山内任天堂」が1947(昭和22)年に設立し、ここに拠点を置いていた「株式会社丸福」から。一歩足を踏み入れると、クラシカルなタイルや大理石が施されたロビー、受付カウンターをそのまま利用したレセプション、タイムカードの打刻機が付いた時計、荷物の運搬用エレベーターなど、社屋としての面影が残る空間に迎えられます。

シンボリックな青緑色の窓枠や受付カウンターも当時のまま。鳥のオブジェは造形作家・玉田多紀氏の作品で、ホテルへの改築工事の際に出た廃材などを活用して制作された
シンボリックな青緑色の窓枠や受付カウンターも当時のまま。鳥のオブジェは造形作家・玉田多紀氏の作品で、ホテルへの改築工事の際に出た廃材などを活用して制作された
大理石の壁や◯と福の文字を思わせる窓の意匠など、建物の随所に見どころが
大理石の壁や◯と福の文字を思わせる窓の意匠など、建物の随所に見どころが

1930年代から1950年代まで事務所や倉庫として使われていたこの建物は、任天堂の創業家・山内家の住居部分を含め、南北に3棟からなる空間。その一部に安藤忠雄氏による新築棟を増設し、昭和と令和の建造物が融合したハイブリッド建築へと生まれ変わりました。当時、任天堂が販売していたプラスチック製トランプにちなみ、四つの建物はそれぞれ「スペード」「ダイヤ」「ハート」「クローバー」棟と名付けられています。

ライブラリーは、任天堂を世界的ゲーム機メーカーに押し上げた3代目社長・山内溥(ひろし)氏の孫・山内万丈氏の発案で作られた
ライブラリーは、任天堂を世界的ゲーム機メーカーに押し上げた3代目社長・山内溥(ひろし)氏の孫・山内万丈氏の発案で作られた
新築したガラス張りの新棟と既存の3棟が連なり、新旧が融合した景観を生む
新築したガラス張りの新棟と既存の3棟が連なり、新旧が融合した景観を生む

リノベーションホテルや町家宿など多様なコンセプトの宿泊施設があまたある京都で、「丸福樓」ならではといえるのが、スペード棟2階に設けられたライブラリーです。ここは、壁一面の棚に関連書籍や花札のデジタルアート、「ファミコン」や「ゲームボーイ」といった歴代ゲーム機が展示された、いわばミュージアムのような空間。隣接するバーではセルフで好みのドリンクを楽しめ、宿泊客はゆったりとくつろぎながら、任天堂の歴史やスピリットを存分に感じることができます。

細川亜衣氏の味と世界観が楽しめるレストラン「carta.」

空間も細川氏が監修したレストラン「carta.(カルタ)」では、月に数日、宿泊客以外でも利用できる日を設ける。前月15日ごろ予約受け付け開始
空間も細川氏が監修したレストラン「carta.(カルタ)」では、月に数日、宿泊客以外でも利用できる日を設ける。前月15日ごろ予約受け付け開始

「丸福樓」の人気の宿泊プランの一つが、夕食から夜のバーでのひと時、翌日の朝食と昼食までをすべて含めたオールインクルーシブのスタイル。レストラン「carta.(カルタ)」では、熊本の料理家・細川亜衣氏が監修した料理がふるまわれます。著述や料理教室での活動が主体の細川氏の料理を、実際に味わうことができる機会はたいへん貴重。この食事を目当てに予約するゲストも少なくありません。

夕食はコースで8品前後。こちらは前菜の一例。夕食付きプランではドリンク代も含まれ、アルコールからソフトドリンクまで好きなだけ飲むことができる
夕食はコースで8品前後。こちらは前菜の一例。夕食付きプランではドリンク代も含まれ、アルコールからソフトドリンクまで好きなだけ飲むことができる
カレー風味の「ハンバーグ」をメインに、にんにく塩こうじにバター、パセリ、ピーマンを混ぜ込んだライスとグリーンサラダを添えて。いずれも献立の一例
カレー風味の「ハンバーグ」をメインに、にんにく塩こうじにバター、パセリ、ピーマンを混ぜ込んだライスとグリーンサラダを添えて。いずれも献立の一例

季節変わりで提供される献立は、旬の食材を軸にだしや発酵食品を取り入れた、洋食でありつつも日本の食文化が宿るもの。「野菜の皮やゆで汁も無駄にしない、亜衣さんの料理の哲学をそのまま感じていただけたら」と厨房(ちゅうぼう)のスタッフも腕をまくります。うつわやインテリアも細川氏が選び、実生活でも愛用する作り手の作品が使われており、氏のアトリエに招かれたような食事の時間に満たされるばかりです。

「carta.」のあるクローバー棟は元倉庫。往年の荷物用エレベーターを、クローバーをあしらった照明で演出
「carta.」のあるクローバー棟は元倉庫。往年の荷物用エレベーターを、クローバーをあしらった照明で演出

日本のエンターテインメントを牽引(けんいん)してきた任天堂の原点を感じられるだけでなく、安藤忠雄氏や細川亜衣氏といった同時代のクリエーターの鮮やかな感性にもふれることができるのは唯一無二の魅力。後編では、内装やムードの異なるさまざまな客室とオールインクルーシブならではの楽しみをご紹介します。

後編〈安藤建築の粋、新感覚ステイ 旧任天堂本社の改築ホテル「丸福樓」〉はこちら

■ 丸福樓 https://marufukuro.com/

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

BOOK

旧任天堂本社がホテルに 「丸福樓」の建築美と料理、文化を体験〈前編〉

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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