未来への軌跡
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「軽自動車のEV」は日本の自動車市場を変えるのか(後編)

日産本社のショールームで軽自動車EV「サクラ」の前に立つ遠藤さん 花田龍之介撮影


日本自動車販売協会連合会の「燃料別販売台数(乗用車)」によると、2021年の国内新車販売で電気自動車(EV)の占める割合は約0.9%。一方、欧州自動車工業会によると、2021年の欧州の新車登録台数のうち、バッテリー式電気自動車(BEV)が占める割合は9.1%だった。

滑り出しが好調な軽自動車のEV、日産自動車の「サクラ」と三菱自動車の「eKクロス EV」。「軽EV」は日本でEVの普及が進むきっかけになるのか。開発プロジェクトを引っ張ってきた日産と三菱自動車の合弁会社、NMKV前社長の遠藤淳一さん(現・日産専務執行役員)に、EVの行方などについてインタビューした。

▼インタビュー前編 タッグを組んだ日産と三菱自動車 「軽自動車のEV」にかけた夢

――軽自動車のEV「サクラ」の受注が好調だと聞いています。

遠藤 ついにEVが国内で「ブレークした」という感触を持っています。第1四半期(4~6月)の日産の国内受注のうち、「サクラ」を含めたすべてのEVが占める割合は約2割です。6月単月で見ると、3割を超えました。昨年度の日産の国内販売に占めるEVの比率が3.0%ですから、大きな潮目の変化が訪れたと思っています。

情報収集に熱心で流行に敏感な「アーリーアダプター」と呼ばれる層だけでなく、多数派である「アーリーマジョリティー」の層もEVの購入に動き始めていると分析しています。

「軽自動車のEV」は日本の自動車市場を変えるのか(後編)
日産本社でインタビューに答える遠藤さん  花田龍之介撮影

――人気の理由はどこにあると見ていますか。

遠藤  EVならではの力強い加速や静粛性、さらに上質で高級感のある室内空間などの魅力を肯定的に評価してくださっていると考えています。

補助金の恩恵も大きいと思います。ただ、補助金がなくても、コストダウンを進めた結果、「サクラ」は200万円台で購入できます。価格面でのハードルはだいぶ下がったと思います。

――どんなお客さんが購入していると見ていますか。

遠藤 バッテリーが普通車のEVに比べて小型の「サクラ」がフル充電して走る距離は180キロです。日産のEV「アリア」の470キロと比べると、だいぶ短くなっていますが、その分、価格も安くなっています。軽自動車は、買い物や送り迎えなど日常生活で使われることが多く、1日に利用する距離が普通車よりも短い傾向があります。「近距離用」「普段使い用の2台目」といった割り切った使い方をするお客さんを中心に購入が進んでいると思います。

販売の現場からは日産以外の車に乗っていたお客さんが「サクラ」を目当てに来店しているケースが目立つ、という話を聞いています。都市部と地方の両方でブレイクしていて、ほぼ全国で大きな反響があります。

地方は、都市部に比べて一戸建てに住んでいる方が多いので、自宅に充電設備がとりつけやすいと思います。バッテリー容量が小さい軽EVの「サクラ」は、自宅での普通充電がおすすめです。外部の「充電スタンド」で急速充電するよりも、自宅で普通充電を使ったほうが、便利ですし、経済的です。

EVにこだわってきた理由

――日産はEV「リーフ」を2010年に発売して以降、EVにこだわってきました。なぜ、こだわってきたのでしょうか。

遠藤 早い時期から「リーフ」の販売を決断した背景には、地球環境という観点から見たときに、二酸化炭素を出さない「ゼロエミッション車」の割合を増やしていくことが、社会の持続可能性を維持する上で欠かせないという考え方がありました。

ガソリンと電気を併用するハイブリッド車(HV)は、燃費もよく、優れた車ですが、あくまでも過渡期のソリューションだと思います。未来に社会をつないでいくために時代にあったEVを世に送り出していくことが、自動車メーカーとしての責務であると思っています。

「軽自動車のEV」は日本の自動車市場を変えるのか(後編)
日産のEV「リーフ」の前に立つ遠藤さん 花田龍之介撮影

――一方で、早い時期からEVに舵を切った分、苦労した時間も長かったのではないですか。軽EVをなぜ途中であきらめなかったのですか。

遠藤 「リーフ」が発売されたとき、国内外にアピールする戦略立案を担当しました。最初はタイミングが早かったために、EV自体の認知度が低く、苦労しました。しかし、その後、「リーフ」が「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」や「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を国内外で受賞することなどを通して、EVの特徴や良さというのは、広がっていきました。また、早くからとり組んできたおかげで、顧客からEVに対する要望や意見も幅広く聞き取ることもできました。その結果、「サクラ」「eKクロス EV」が評価される素地も形作られたと思います。

――早くから取り組んできたことに意味があったということですね。

早くに製品を手がけた会社が後から参入した会社にシェアを奪われることがあります。日産と三菱自動車の軽EVプロジェクトを担ってきたNMKVの社長として、絶対にそんな事態は避けたかった。「かなり前からEVを出していたけれど、結局うまくいかなかったね」といわれるのは嫌でした。

2009年に軽自動車のEV「アイ・ミーブ」を発売した三菱自動車も、同様にEVに対して強い思い入れやパイオニアとしての矜持(きょうじ)を持っていました。「パイオニアとして途中であきらめない。必ずヒットさせる」という信念を共有していました。軽EVがブレイクした今、「やっと花が開いた」という感慨があります。

「軽自動車のEV」は日本の自動車市場を変えるのか(後編)
「世界初の量産EV」として09年に発売された三菱自動車の「アイ・ミーブ」。発売時の価格は税込みで約460万円だった 三菱自動車提供
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