花のない花屋
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いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
外山彩美(仮名)35歳 
パート
北海道在住

    ◇

私の母は数週間前、給食センターでの仕事中に倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。死因は大動脈解離。まだ64歳の若さでした。

病院で先生に呼ばれて部屋に入ると、泣きじゃくる妹と先生の申し訳なさそうな顔が見えて、母が亡くなったことを察しました。それでも信じたくないという思いから、「えっ……」とだけ発したことは覚えています。

あまりにも若く、これからまだやりたいこともあっただろうに……そう考えると悔やんでも悔やみきれません。突然の別れに、一緒に住んでいた父と妹は気落ちが激しく、最近やっと笑って話せるようになったように見えます。

実は私自身も、5月に骨折して手術をし、仕事も休職中の身。気持ちも少し不安定なところに受け取った、突然の悲しい知らせでした。食欲不振もあり、精神的にも参っています。母が生きていたら、心配して私の自宅まで来るのではないかと思ってしまいます。

母は、料理が好きで「面倒くさいなあ」と文句を言いながらも、いつもおいしいごはんを作ってくれました。私が作ったものも、おいしいと言ってくれたり、時にはアドバイスをくれたりしました。もちろん孫ができた時は大喜び。子どもたちの習い事の大会を見に行ってもたくさん応援し、励ましの言葉をかけてくれる、子どもたちにとっても優しい祖母でした。

母の勤務する給食センターは子どもたちの学校にあり、子どもたちもおばあちゃんが作った給食を、いつもたくさん食べていました。クラスでは、「おばあちゃんが作ったおかずどれ~?」という会話が出て、わざわざ職員室まで聞きに行ったこともあったそうです。

母は、とても明るい性格で、人を呼んで一緒にごはんを食べたりお出かけしたりすることが大好きな人でした。亡くなるちょっと前にも、以前スポーツクラブに通っていたときにできた友人たちとの女子会を「いつやろう?」と楽しそうに話しており、コロナが落ち着き始めたころには「そろそろ誘っても大丈夫かな?」とまだ連絡もしていないのに、うきうきして話していました。

そんな母の友人たちにも訃報(ふほう)を伝えると、すぐにご焼香に駆けつけてくれました。聞けば、母は友人たちのなかで一番若々しく、「2人の娘さんがいることがうらやましい」と、友人たちにいつも言われていたそうです。そう話しながら涙を流す母の友人たちの姿とその話を聞いて、私もこの日一番泣きました。

少し気の強い所もあり、父とのケンカもしばしば。それでも父は「かわいいところもあった。あと10年、15年は一緒にいたかった」と話していたことが印象的でした。

今はまだ、49日前なので、母も家族も修行の身。手作りの「おりくぜん」を作って、同じものを家族で食べることもあります。故人をしのびながらの少し寂しい食事だけれど、天国の母にも悲しい姿ばかりは見せられない。家族で支えあって少しずつ前に進めるようになっていきたいと思います。そんな私たちを見守っていてね、という母へのメッセージも込めて、明るい性格だった母にぴったりの、明るい色のお花を飾ってあげたいと思います。

いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに
≪花材≫アジサイ、ブルーレース、アゲラタム、シレネ、センニチコウ、ユウギリソウ、リンドウ、ドラセナ、ハラン

花束をつくった東さんのコメント

料理が得意で、みんなにおいしい笑顔を運んでくれたお母様。そんな明るいお母様らしいお花でアレンジをまとめました。お母様が好きだったと教えていただいたアジサイのほか、リンドウなどのお花を中心にした、紫のグラデーションです。

紫色というと、重厚な濃い紫を思い浮かべる人も多いと思いますが、実は濃いものも、淡いものもあれば、ピンク系やブルー系もあって、あらためて色の幅は広いです。また紫にグリーンを加えることで、さらに明るい雰囲気に。天国に旅立ったお母様に、みなさんの思いが届きますように。

いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに
いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに
いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに
いつもおいしいごはんを作ってくれた母。突然の別れに

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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