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米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
相羽恭枝(仮名)50歳 
研究職
米国在住

    ◇

「実は私、骨肉腫になってしまって手術をしたの」

現在アメリカでがんの研究をする私は、コロナの影響で日本への帰国が叶(かな)わなくなったため、オンライン同窓会を試みました。するとひとりの友人から、そんな返事が届いたのです。彼女は私の大学時代からの友人。獣医畜産系という特殊な大学であったため、肉体労働に近い授業や、その他さまざまなつらいことも支え合ってきた「同志」のような感覚があり、卒業後かれこれ20年経っても、とても仲が良いのです。

彼女は在学中からスキューバダイビングをしたり、かと思えば1級小型船舶の免許を取得して時には海に出たりすることも。また冬には彼女の運転でスキー旅行に行き、一緒にアルバイトをしたこともありました。とにかく私の楽しかった大学時代の思い出には、いつも彼女がそばにいたように思います。卒業後、彼女は無事に獣医師になり、故郷へ戻って「牛たち相手に奮闘している」日々を送っていました。

そんな彼女から告白を受けたのです。

「今もアメリカでがんの研究を続けているんだね。私のがんはレアケースみたいだから、お知らせまで」

私が心配しないようにとの気遣いだと思います。とてもさらりとした告白でした。とはいえ彼女のがんは、本人も言うように希少ながんで、いまだ原因究明や治療法は手探り。獣医師のバックグラウンドがある彼女であっても、出口のない迷路をさまよっているような不安でつらい思いをしていることは想像できました。

以来、アメリカで行われているがんの最先端の治療法や、今日本でできる治療法を調べては、彼女に資料を送ったりしています。ですが、私はアメリカの最先端の研究所でがんの研究をしており、なおかつ、がんのことをよくわかっているはずなのに、彼女の体からがんを取り除いてあげることも、また苦しみから彼女を救ってあげることすらできないということに、彼女への申し訳なさと、歯がゆさを感じています。

その後、転移したがんのため、二度目の手術が決まったときも、決して慌てることなく、いつものように冷静な報告がありました。あのアクティブな彼女も外出が難しくなり、自宅に居る時間が長くなったといいます。そんな時ですら自分の状況に腐ったりせず、周りを気遣う優しさにあふれている彼女。何もしてあげられず申し訳ないと思う私に対しても、「相談に乗ってくれてありがとう」といつも変わることなく接してくれます。

コロナの影響で私が日本に帰れなかった間、東さんがインスタグラムにアップした桜並木の動画を見て、故郷を思いながら元気をいただいていました。彼女に尊敬の念とエールを込めて、少しでも明るく元気な気持ちになるようなお花を、東さんに作っていただきたいと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。

米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白
≪花材≫ヒマワリ(東北八重)、オンシジューム、リューカデンドロン

花束をつくった東さんのコメント

闘病中のご友人へ、尊敬とエールを込めたアレンジです。メインで使ったのは、八重咲きのヒマワリ。ほかにもビタミンカラーのお花をたくさん入れて、見るだけで元気になるようなアレンジを目指しました。

アレンジでは同じ花をグルーピングして近くに置くと、それぞれのお花の存在感が増すと言われます。黄色といっても決してどぎつくなく、やさしさいっぱいの黄色を集めてあります。

大学時代からともに学び、遠く離れても支え合ってきた同窓生のおふたり。その絆も、お友達の心のビタミンになることを願っています。

米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白
米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白
米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白
米国でがんの研究を続ける私に、同級生からの告白

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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