永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶
連載をフォローする

(180) 何もない場所にレンズを向けたわけ 永瀬正敏が撮ったイラン

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回もイランで撮った一枚。何もないありふれた路地にレンズを向けた、その理由とは?

(180) 何もない場所にレンズを向けたわけ 永瀬正敏が撮ったイラン
©Masatoshi Nagase

先週の連載でも同じような“何でもない場所”で撮影した写真をアップした。
これも実に何も無い、ごく普通の路地での一コマ。
でも僕はそのイランの路地にカメラを向けた。

オレンジ色の街灯に照らされた漆喰(しっくい)の壁。
かなり高いところに出口がある不思議な雨樋(あまどい)から伝わるシミ。
格子のついた小さな窓。
多分バス停なのだろう、標識らしい物がたち、歩道と車道の境に、頑丈そうなポールが立てられ、これもおそらく人々が乗り降りする場所が作られている。
それは手作り感が満載だ。

少し上り坂になっているその場所を通り過ぎていく人々。
その人々は写真ではブレている。
移動の速度がそのまま写真に焼き付いている。
何気ない日常。
でも僕にとっては、そこにうかがわなければ出会うことのなかった特別な風景だ。
何気ない日常が、自分にとっては貴重な一瞬になる。
それをカメラに収めたいといつも思う。
そこで生活されている方々にとっては何でもない日常を。

きっと何気ない日々の積み重ねが、その人にとって貴重な歴史になっている。
それはどこに居てもそうだろう。
ただあまりにも見慣れた風景、いつもの通りの行動範囲でそのことに気がつかないのだと思う。

「人を演じる職業なのだから、特別な物や事で吸収しようとせず、街の人々をひたすら見続けろ。そして自分で何かに気付け」
演技の勉強をしたことのない僕に、恩人のひとりが残してくれた言葉だ。
それ以来、何気ない日常を見続けることが癖になっているのかもしれない。
僕の中に、そういう日常に惹(ひ)かれてしまう自分もいるのだ。

REACTION

LIKE
COMMENT
4
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

連載をフォローする

COMMENT

評価の高い順
コメントを書いてマイル獲得! みんなのコメントを見る

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら