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PRESS RELEASE

※配信会社から提供された企業や団体等のプレスリリースを原文のまま掲載しており、朝日新聞社が取材・執筆した記事ではありません。お問い合わせは、各情報配信元にお願いいたします。

ご先祖様だと信じてきたもの、実は叔母のような関係? カエル抗菌ペプチド「ボンベシン」と哺乳類神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド」とは異なる進化系譜だった

今回明らかにしたボンベシン/ガストリン放出ペプチド(GRP)/ニューロメジンB(NMB)の進化系譜。(a)これまでは、ボンベシンからGRPとNMBが進化したと考えられてきましたが、(b)本研究によって、ボンベシンはNMBがカエル系統でのみ特殊化したものである一方、GRP系はカエルを含め、脊椎動物の間で広く保存されていることがわかりました。

◆発表のポイント
・カエル抗菌ペプチドであるボンベシン1)と、哺乳類で様々な自律神経機能を担う神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド(GRP)2)」は、脊椎動物の先祖において1つの祖先遺伝子が2つに分かれた後、別々の進化を遂げたものであることを明らかにしました。
・ネッタイツメガエル(ゼノパス)のGRPとその受容体は、哺乳類と同様に「脳-腸ペプチド」3)系であることがわかり、四肢動物4)におけるGRP系の普遍性が示されました。
・ゼノパスは普遍的なGRP系のモデルとなり得ると同時に、カエル特有の抗菌ペプチドであるボンベシンについて、その作用メカニズムを知ることにより有用化合物として利用できるかもしれません。

岡山大学学術研究院自然科学学域(理学部附属牛窓臨海実験所)の坂本 浩隆准教授と濱田 麻友子准教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所、近畿大学、神奈川大学の共同研究グループは、生理活性物質であるボンベシンファミリーペプチドの進化の道筋とガストリン放出ペプチド(GRP)の普遍性を明らかにしました。これらの研究成果は6月25日、自然科学系の国際誌「Scientific Reports」(Springer Nature)に掲載されました。
カエルにおいて抗菌ペプチドとして働く「ボンベシン」と、哺乳類でオスの性機能や概日リズム、かゆみ感覚の伝達など多くの自律神経機能に関与することが知られている神経ペプチドの「GRP」は、非常に似た構造をしているため、ボンベシンからGRPが進化してきたと考えられてきました。しかしながら、これらふたつの遺伝子は独自の進化を遂げてきたものであることが明らかになりました。また、四肢動物におけるGRPの祖先的な役割を明らかにするため、ネッタイツメガエル(ゼノパス)のGRPとその受容体の発現を調べたところ、哺乳類と同様に「脳-腸ペプチド」系であることがわかり、その普遍的な役割が示されました。
本研究によって、両生類でも普遍的なGRP系が存在していることが明らかになり、生体において重要な役割を果たすGRP系の研究モデルとなることが期待されます。また、カエル特有の抗菌ペプチドであるボンベシンはその作用メカニズムを知ることにより、有用化合物として利用できるかもしれません。

【研究者からのひとこと】
ご先祖様だと信じてきたカエルのボンベシンが、哺乳類のGRPにとっては実は叔母のような関係だったのです!私には大きな発見でとても興味深いものでしたが、言わば重箱のスミをつついたような研究かも?という思いもあり、学術誌に掲載されるまでは苦難の連続でした。しかしながら、本発見は、四肢動物の陸上進出における生理活性物質の分子進化、および脳-腸ペプチドの進化的意義を知る上でも極めて重要です。このような些細な発見に感心できること、またその驚きを人々に分かりやすく伝えていくことが、”まさに研究の醍醐味ではないか”と、自分を褒めてあげたいです。

■発表内容
<現状>
ボンベシンはヨーロッパスズガエルの皮膚から単離された14アミノ酸の生理活性ペプチドで、陸棲のカエルの皮膚を細菌の攻撃から守る抗菌ペプチドとして働くと考えられています。一方、哺乳類ではボンベシンと似た神経ペプチドとして、ガストリン放出ペプチド(GRP)とニューロメジンB 5)(NMB)が見つかっていました。これまで多くの研究から、両生類のボンベシンから哺乳類のGRPとNMBとに進化してきたと考えられてきました(図a)。しかし、カエルでもGRPが存在することがわかり、その進化の道筋や哺乳類の祖先においてGRPがどのような役割を持っていたのかを再考する必要が出てきました。

<研究成果の内容>
近年ゲノム情報が様々な非モデル動物でも利用できることを活用し、本研究ではボンベシン、GRP、NMBとその受容体の遺伝子の進化系統的な関係を明らかにしました。その結果、脊椎動物の先祖で1つの祖先遺伝子がGRPとNMBに分かれ、カエル系統でのみNMBがボンベシンへと特殊化したことが示されました(図b)。その一方、GRP系はカエルを含め脊椎動物の間で広く保存されていました。

哺乳類ではGRPは中枢神経系と消化管に広く発現し、食物摂取、概日リズム、恐怖記憶の強化、男性性機能、ため息の制御、かゆみ感覚など広く自律神経機能を制御していると考えられています。本研究ではGRP系の祖先的な役割を明らかにするため、ネッタイツメガエル(ゼノパス)を用いてGRPとその受容体の発現部位を調べました。その結果、これらはカエルでも中枢神経系と消化管に広く発現がみられ、脊椎動物におけるGRP系の普遍性が明らかになりました。以上のことから、GRP系は四肢動物の祖先において「脳-腸ペプチド」系の1つとして、脳と腸の両方で多様な役割を果たしていたと考えられます。

<社会的な意義>
脊椎動物の先祖において、1つの祖先遺伝子がGRPとNMBへと分かれ、GRPは脊椎動物の進化の過程で保存されてきましたが、NMBはカエルの系統では特殊化して、ボンベシンとして皮膚を保護するための新たな機能(抗菌作用)を獲得しました。このことはカエル(四肢動物)の水中から陸上への進出において適応的な意味があったと考えられます。
GRP系は哺乳類では脳と腸で働き、様々な重要な生理機能が知られています。本研究によってGRP系がゼノパスでも高度に保存されていることが明らかになったことから、実験動物として確立しているゼノパスはGRP系の実験モデルとなり得ると考えられます。一方、NMBが特殊化したボンベシンはカエル特有の抗菌ペプチドですが、その作用メカニズムを明らかにすることにより、有用化合物として利用できるかもしれません。

■論文情報等
論文名:
The gastrin-releasing peptide/bombesin system revisited by a reverse-evolutionary study considering Xenopus
(ゼノパスを用いた逆系統進化学的研究によるガストリン放出ペプチド/ボンベシン系の再検討)
掲載誌:
Scientific Reports
著者:
Asuka Hirooka, Mayuko Hamada, Daiki Fujiyama, Keiko Takanami, Yasuhisa Kobayashi, Takumi Oti, Yukitoshi Katayama, Tatsuya Sakamoto & Hirotaka Sakamoto
DOI:
10.1038/s41598-021-92528-x
発表論文はこちらからご確認できます。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-92528-x

■研究資金
本研究は、下記の支援を受けて実施しました。
・JSPS科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究 15K15202 研究代表者:坂本 浩隆
・JSPS科学研究費補助金 国際共同研究加速基金 15KK0257 研究代表者:坂本 浩隆
・JSPS科学研究費補助金 基盤研究(S)15H05724 研究分担者:坂本 浩隆
・JSPS科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)(学術研究支援基盤形成)先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS) 16H06280 研究支援者:坂本 浩隆
・JSPS科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 21H00428 研究代表者:坂本 竜哉
・JSPS科学研究費補助金特別研究員奨励費 15J40220 研究代表者:高浪 景子
・JSPS科学研究費補助金特別研究員奨励費 13J08283; 17J03839 研究代表者:越智 拓海
・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 961149 研究分担者:坂本 浩隆
・国立大学法人岡山大学「女性研究者海外派遣事業」派遣研究者:濱田 麻友子

■補足・用語説明
1)ボンベシン
ボンベシンはヨーロッパスズガエルの皮膚から単離された14アミノ酸の生理活性ペプチドで、陸棲のカエルの皮膚を細菌の攻撃から守る抗菌ペプチドとして働きます。

2)ガストリン放出ペプチド(GRP)
ブタの胃から単離された生理活性ペプチドです。概日リズムや情動行動の調節、かゆみ感覚の伝達など多くの生理作用が報告されています。本研究グループでは、ラットにおいてGRPを発現する脊髄ニューロンがオスの性機能を調節することを発見しています(Sakamoto et al., Nature Neuroscience 2008)。

3)「脳-腸ペプチド」
脳と腸の両方に発現するペプチド。多くのペプチドホルモンが脳-腸ペプチドであることが近年わかってきました。

4)四肢動物
脊椎動物の中でも、手足を持つ動物のグループ。つまり、両生類、爬虫類と鳥類、哺乳類が含まれます。

5)ニューロメジンB(NMB)
ブタの脊髄から単離された生理活性ペプチドの一種。哺乳類では体温調節やストレス応答など多くの生理現象に関与します。カエル抗菌ペプチドのボンベシンと非常に似た構造をしていることから、GRPと共に「ボンベシンファミリー」ペプチドと呼ばれています。そのため、GRP/NMBはボンベシンから進化したものと考えられてきました。

【関連リンク】
農学部
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/

▼本件に関する問い合わせ先
広報室
住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
TEL:06‐4307‐3007
FAX:06‐6727‐5288
メール:koho@kindai.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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