小川フミオのモーターカー

黄金期を代表する華麗な「いすゞ117クーペ」

 

自動車のよき時代とは、バラエティーの豊かさにあると思う。そのいい例が、いすゞ自動車だ。現在は乗用車の生産を止めてしまったが、1960年代から70年代にかけ、湘南に本社があり、都会的なセンスのある乗用車づくりで人気だった。

117クーペ(1968~81年)は、いすゞ自動車の黄金期を代表する華麗なクーペだ。今も時々街で見かけるが、それだけ根強いファンがいる証拠だ。そのスタイルは、初めて見る人に「あのかっこいいクルマは何?」と言わせる魅力をそなえている。スタイリングを手掛けたのは、イタリアのジョルジェット・ジウジアーロ。カロッツェリア・ギア(後にフォードが買収)時代の名作だ。

117クーペは、当初、職人がボディーの一部を手で叩いて形をつくるセミハンドメイドだった。それだけにラインは流麗だ。前後の車輪のところに山を描く車体側面のキャラクターラインの躍動感といい、ボンネット先端を低くし、すぼまったノーズとそこにはめ込まれた丸形4灯のヘッドランプが醸すアグレッシブな雰囲気といい、日本車であって日本車でない存在感を放っていた。

 

エンジンは当初1.6リッターで、後に1.8リッター、2リッターと排気量が拡大し、最後はディーゼルエンジンまで載せた。ただし、走りはスタイルから期待できるほどスポーティーでなく、どちらかというと、富裕層のしゃれたクルマだった。

しかし「速さで歴史に残るクルマはない。クルマは一にも二にもデザインだ」という、ある自動車評論家の名言があるが、これは的を射ている。その証拠に、室内はあまり広くなく、セリカやブルーバードのような鋭い走りがなくても、117クーペの美しさはずっと我々の心を捉えている。その魅力が薄れることはない。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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