小川フミオのモーターカー

高級車市場に風穴を開けた「アウディ・クワトロ」

 

現在の自動車技術のほとんどは、1950年代にほぼ出そろったといわれている。その後は改良である、と。しかし80年代に、歴史に残る新技術が実用化された。それがアウディのフルタイム4WD技術「クワトロ」だ。4輪駆動といえばオフロード専用だったものを、ドイツのアウディでは、高速安定性を高める技術として確立したのである。

80年に発表されたアウディ・クワトロは、ジョルジェット・ジウジアーロが協力した端正で機能主義的なスタイルのクーペボディーに高出力エンジンと、今日までアウディの金看板になるクワトロ4WDシステムを搭載していた。

 

アウディではクワトロの優秀性を証明するため、世界ラリー選手権など過酷なレースにクワトロで参戦。緒戦から圧倒的な速さを見せつけ、第2戦で早くも勝利するなどして、世界にクワトロ・ファンをつくっていくことになった。

その後、クワトロの技術は量産セダンにも採用。長距離移動の多い欧州のビジネスパーソンやファミリーにとって、クワトロは「福音」だった。疲労度が少なく、かつ風など外乱の影響を受けることなく高速で走れるからだ。メルセデス・ベンツやBMWなどを所有していた人たちからも乗り替えが進むようになった。

 

クワトロの画期的な点を別の角度からみると、新技術によって高級車市場に風穴を開けたことである。開発を指揮したドクター・フェルディナント・ピエヒは「新しい高級車をつくる」という思いを強く抱いていたというが、その狙いは的中したのだ。

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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