小川フミオのモーターカー

一流の大衆車「フィアット・パンダ」

 

欧州では、クルマは個人の重要な移動手段でもある。フィアット・パンダが誕生したことも、それに関連しているのだ。1980年に発表され、2002年までつくり続けられたパンダは、全長3.4mのコンパクトな2ドアハッチバック。ボディー外板はほぼ平らなプレス、ウインドシールドを含めて窓もすべて平面ガラスだ。それが、シンプルな美しさを見せる。

 

ジョルジェット・ジウジアーロ率いる、イタルデザイン・ジウジアーロがスタイリングを担当。室内も造形的には簡素だが、随所に“技あり”と評価できるポイントがある。たとえば、シート表地にチェック柄を採用したり、リアシートをハンモックのように使えるデザインにしたりといった具合だ。これらのユニークなコンセプトも、イタルデザインの仕事である。パンダがユニークなのは、実用的な乗り物と割り切るのでなく、毎日のように付き合って楽しいパートナーとしても企画された点だ。

 

当初、エンジンは652cc2気筒と903cc4気筒のものが登場した。日本では後者のパンダ45が149万円だった。1982年にフロントグリルが意匠変更を受け、ブラックの横バーに、当時フィアットのアイデンティティーであった5本の斜線が入ったものとなった。決して速いクルマではないが、外観のコンパクトさに対して室内は期待以上に広々としており、荷物もかなり積めた。欧州独特の機能美を備えているところが、クルマ好きに評価されたのだ。

 

 

四輪駆動の「4×4」も日本で展開されたが、前輪駆動バージョンに輪をかけてスピードは出なかった。しかし1986年に新設計の1リッターエンジンが搭載され、リアサスペンション形式が新しくなると、クルマとしてのクオリティーは格段に向上した。走りも目を見張るほど良くなったのである。

 

現在も後継モデルが、パンダの名を掲げて生産されている。常にスタイリングにひとひねりが加えられ、乗り心地や走りも快適だ。エスプレッソやジェラートなどにも手を抜かない。そんなイタリア人の生活における美意識が、一流の大衆車といえるパンダをつくり出したのだ。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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