小川フミオのモーターカー

典型的な黄金比の「ジャガーXJ」

 

クルマのスタイリングには“黄金比”がある。その典型的な例として挙げられるのが、ロールス・ロイスであり、このジャガーXJだ。乗員のキャビンと車体、車輪の配置を考えた際“美しい”と思う位置関係があるのだ。「ジャガーXJを真横から見た時、誰もが魅力的に感じるはず」と、黄金比の信奉者は言う。

 

 

1968年に初代が登場したXJは、大きな車輪に薄く長い車体が組み合わされ、トランク部分も長い。ドアが開く線と前輪の中心との間に距離があり、それがゆったりとした大型車ならではの美を感じさせる。XJの形は、59年発表のマークⅡに端を発し、61年のマークX、66年の420Gと、徐々にモダナイズしていったスタイルの完成形だ。86年まで続いた長いモデルライフでも、スタイルを大きく変更することはなかった。厚くクッション性が効いたシートに、平面のウッドパネルを使用したダッシュボード、そして、革とクロームの加飾がインテリアの特徴である。クラシックだが、ストレートな快適性があったのだ。

 

 

6気筒のXJ6と12気筒のXJ12が車種構成といえる。とりわけ12気筒モデルでは、あまりアクセルを踏まなくても力強く走る加速性が印象的だった。段差を越える時もほとんどショックを感じさせない、しなやかな乗り心地と静粛性。他に類のない感覚が、スタイリングのみならず、XJをさらに特別な存在にしていた。

「クルマというのは完成することがない。でないと、私たちの仕事がなくなってしまう」と語ったデザイナーがいる。しかし、このXJやミニ、レンジローバーなど、英国には初代から完成されたモデルが多い。

クルマは“進化”という観念があるゆえ、長くても10年でモデルチェンジを余儀なくされることが多い。特に昨今では、燃費や安全技術が日々進み、モデルの寿命がより短くなっているともいえる。XJを見ていると、クルマの進歩を否定したいという欲求をおぼえてしまうほどだ。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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