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酷評から成功へ転じたFFXIV、P兼Dの吉田直樹さん「よしだあああぁ」を語る

ファイナルファンタジー14のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さん


『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さん

『ファイナルファンタジーXIV(FFXIV)』という多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)をご存じだろうか。スクウェア・エニックスの人気ファンタジーRPGシリーズの一作で、最近ではドラマ「ファイナルファンタジーXIV光のお父さん」(毎日放送制作)に登場した。プレイヤーは、自分のキャラクターのレベルを上げて装備やアイテムを集め、仲間と4人、8人などパーティーを組んでモンスターやダンジョンに挑む。現在、プレイヤー数は全世界で1000万人(※)。北米のプレイヤー数が最も多く、世界規模で遊ばれているタイトルだ。定期的なアップデートによって、遊べるコンテンツが加わったり、内容が修正されたりすることが特徴のひとつ。

しかし、この『FFXIV』は、2010年にサービス開始したものの、その操作性の悪さやゲーム内容のまずさをプレイヤーやメディアに酷評された。そこで、サービスは継続させつつ、ほぼすべての要素を一から作り直して2013年8月に再スタート(新生)させた異色の歴史がある。

その「新生」を指揮したプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんは、ライブ配信やイベントで積極的にプレイヤーの前に登場し、開発状況や次に公開するコンテンツを直接説明。ある意味で、ゲーム内の登場キャラクター以上にプレイヤーの人気を集める稀有(けう)な存在となっている。

SNSが普及し、ネット上で利用者側が情報や意見を積極的に交換する今の時代に、どのように最新のMMORPGを運営しているのか。吉田さんに聞いた。

※日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。

ファイナルファンタジー14のゲーム内画面


ファイナルファンタジーXIVのゲーム画面。プレイヤーはモンスターと戦ったり、釣りや採掘、アイテムの製作をしたりと色々な遊び方ができる

 

ゲーム内での名前の連呼「開発者として幸せ」

――多くのプレイヤーが、ゲーム内で何かが起きると「よしだあああああーっ」と叫んでいます。時には開発者に全く責任がないことでも。これは、他に例がないほど、プレイヤーと吉田さんの距離が近くなったからこそだと思いますが、現状をどう感じていますか。こうした状況を狙っていたのでしょうか。

いいえ、もちろん、狙ってできることではないです(苦笑)。本来、サービス業とは、サービスを主催している側の人間の顔は見えなくていい。サービスの質や便利さそのもので勝負するべきだからです。今回のFFXIVの事象は、特異な状況から生じた特殊な事例だと思っています。

現状について、個人、会社、プロジェクト(=FFXIV)の三つの観点からお話しします。まず、個人的には、ゲーム開発者として大変幸せなことだと感じています。ただ、今も以前も同様ですが、ゲーム開発者として、正直あまり表に出たいとは思っていませんでした。元々、僕自身が調子に乗りやすい性格であることはわかっていましたし、ライブ配信に出たり、雑誌で色々お答えしてしまうと、どうしても盛り上げる発言ばかりしようとして、怒られてしまうタイプ。こうならないように、この点は今でも特に気を使っている部分です。

次に会社の観点です。日本特に年齢が高い世代には、ゲームについて、映画や音楽に比べて遅れてきたエンターテインメントと低くみる風潮があると感じます。そんな状況下でも、少しずつゲーム開発者も注目を集めるようになってきました。そうした人材が会社にいることは、人を採用する上でも、会社をPRしていくうえでも有効です。

最後に、プロジェクトの観点では、FFXIVは普通ではない歴史をたどったタイトルなので、ライブ配信など、開発からの情報発信も含めてひとつのエンターテインメントになったという点で、やって良かったと考えています。いずれにしても、極めて特殊な状況だなとは思いますので、他のビジネスや事象の参考にならない気がしますね(笑)。

  

 

特殊な事情で始めた、丁寧な情報発信

――そもそも、積極的な情報発信を決めた理由を教えていただけますか。

『旧FFXIV』がスタートした当時、スクウェア・エニックスは、僕から見ても、どこか外部に対して高飛車なところがある会社でした。『旧FFXIV』が大きな苦境に立たされ、プレイヤーやメディアのみなさんから批判されていたときも、きちんとそれに応えるそぶりは見えず、全方位的に信頼を失ってしまいました。そこで、まず最低限の信頼をいただくために、「新たな開発体制の目指すコンセプトはこうです」、「問題だと考えているのはこの部分で、次はここを修正していきます」などを丁寧に発信することが必要と考えました。それを約束として、ひとつずつ守っていくことで、信頼関係を新たに築かせていただこうと思ったわけです。

元々、僕が遊んでいたゲームの一つが、毎週広報担当者が開発チームに聞いた話をテキストで発表していました。その内容の薄さと怪しさはネタになるぐらいでしたが(笑)。ただ、それに基づいて、プレイヤー同士で議論できることがとても健全に感じられたのです。

そこで、FFXIVの新生にあたり、まずはテキストで、次にライブ配信で説明することにしました。プロデューサー兼ディレクターであり、仕様もすべて把握してチェックしているからこそ話せることがある、だからライブ配信をやりたい、と言ったら、みんなあぜんとしてましたね。

今はもう変わりましたが、昔の社内では「客に媚(こ)びるなよ」という批判もありました。新しいことを始めたり、価値観を壊すことはなかなか大変ですが、同時に爽快でもあります。僕はお客様にどんなに望まれていても、できないことは「こういった理由により、できません」とはっきりお伝えすることをポリシーとしているので、媚びているつもりはありません。オンラインゲームの開発と運営がサービス業である以上、「顧客に寄り添う」という観点は不可欠だと考えていますので、これらの批判は的外れなので特に気にはしませんでした。

ただ、最初のライブ配信は前後編の2回で終わるつもりでした。存外の好評をいただいたので現在は第37回まで続いています。新しい試みを受け入れていただけたのは、素直にうれしいですね。

  

 

見かけの“声の大きさ”に左右されない改善

――FFXIVでは、専用フォーラムを設けて、ゲームの使い勝手について様々なフィードバックを受けています。どの意見を採用するのかの判断はとても難しいと思うのですが、何か基準があるのでしょうか。

FFXIVは巨大なゲームですので、部分によってプレイヤーからのフィードバックの受け取り方が異なります。プレイヤーからのフィードバックを、最も素直に受け付けるのが、ユーザーインターフェイスに関わる部分です。僕たち開発チームもテストやプライベートでのプレイでゲームをかなり長時間触っていますが、最終的にはプレイヤーの皆さんのほうが、総プレイ時間が多くなり、より使い込んでいるからです。また、プレイスタイルによって、我々の気づかない不便や、便利なアイデアを発見してくださったりもするため、インターフェイスのフィードバック採用率はかなり高いです。

全体的にフィードバックを前向きに受け止めさせていただく開発チームではありますが、「意見が多くみえる」というだけの理由で、それを採用することはありません。インターネットでは、「声が大きいように見えても、実はそう主張する人の絶対数は多くない」ということがよくあります。仮に1000人がある機能を導入するよう大きな声をあげていても、その機能が大多数のプレイヤーにとってほとんど意味がなければ採用には至らなかったり、実装の優先順位を下げたりします。実装はしないけれど、そのいただいたフィードバックに対して、僕がオフィシャルのコメントを出す、という形で対応することもあります。

ジョブ(編集部注:プレイヤーは、ナイトや黒魔道士などの“ジョブ”を選んで遊ぶ。どのプレイヤーも、自分のジョブが強くなるとうれしい)の強さや扱いやすさのバランスに関しては、慎重に対応しているつもりでも、小さな差から問題が発生することもよくあります。極端に大きな差ではない、あるいは一点にのみウィークポイントがある、といった状況であっても、「あのジョブは弱いんだって」という“風評被害”が発生して、特定のジョブが周囲から受け入れられ難くなることがありました。

ほんの一手、他のジョブよりも手間をかける必要があるかどうか。このように小さな差であっても、難易度の高いコンテンツにパーティで挑む場合は、結果的に大きな印象の差を生んでしまうのだと学びました。

まず、開発側が、自分たちが目指すサービスを理解していただく努力をする。次にプレイヤーの皆さんから、現状への課題を聞いて、できるだけそれを真剣に受け止め、考え、サービスに反映する。そのキャッチボールが重要なキーワードだと思います。

  

 

「ピークはまだ先、もっと上を目指したい」

―― 一度は失敗したFFXIVが、今では2015、2017年と二度の拡張パッケージの発売を経て、世界中で多くのプレイヤーに遊ばれています。現状をどう評価していますか。

失敗したタイトルをそのまま引き継ぎ、イチから作り直すという、ゲーム史上例の無いことをやり遂げた、そのことについては満点以上だと考えています。本当に開発/運営チームのみんなは、誇ってもよいことを成し遂げてくれたと思っています。

どんなゲーム、エンターテインメントにもピークアウト(頂点を過ぎる)の瞬間はあります。本来は、それをどれほど小幅に抑えつつ、高いレベルでの安定飛行をするかが、運営というサービスの腕の見せどころです。FFXIVもそろそろその時期かと思っていましたが、まだピークを迎えておらず、現在過去最高の有効課金プレイヤー数となりました。人が増え続けており、欧州のデータセンターでは、サーバーが足りない状態です。これは口コミと欧州のPRチームが地道にがんばってくれた成果だと考えています。

日本でも、ドラマ『ファイナルファンタジーXIV光のお父さん』が拡張パッケージの発売直前のタイミングで放映されたり、偶然ではありますが、それがきっかけで、ドラマの主題歌を担当してくれたGLAYのボーカルであるTERUさんがプレイヤーになってSNS発信してくれたりした効果もあって、まだまだ新規プレイヤーが増え続けています。そのため、ピークアウトはもう少し先に想定して、まだ上に行けるなら、もっと上を目指そうと考えてます。

今年6月に発売された最新拡張版ディスク『紅蓮のリベレーター』のイメージイラスト


今年6月に発売された最新拡張版パッケージ『紅蓮のリベレーター』のイメージイラスト

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<吉田直樹さんプロフィール>
スクウェア・エニックス開発担当執行役員 兼 第5ビジネス・ディビジョン ディビジョンエグゼクティブ。ゲームクリエイター。2005年にスクウェア・エニックスに入社。ドラゴンクエスト モンスターバトルロードのディレクターを務める。2010年12月、ファイナルファンタジーXIVのプロデューサー兼ディレクターに就任。

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