佐藤浩市×江口洋介 SP対談「あいつら失敗しねえかなぁ…」ひそかに抱く仲間への“本音”

  

 2001年に発覚し、政官界を揺るがした汚職事件「外務省機密費詐取事件」。“機密費”という国家のタブーに挑んだのは、警視庁捜査二課の名もなき刑事たち。その奮闘を描いた清武英利氏のノンフィクション作品が11月からWOWOWでドラマ化、放送される。

 タッグを組むのは佐藤浩市さんと江口洋介さん。旧知の仲の二人だが、本格共演は初だという。単なる“刑事もの”という枠組みではくくれない異色の物語を舞台に、江口さん演じる「斎見晃明」が上司、佐藤さん演じる「木崎睦人」が部下という関係性をどう表現していくのか。二人の話は本作への意気込みに始まり、俳優としての仕事論や同業者に対する本音にまで及んだ。

今の若い人は驚く? 上司に偉そうな態度を取る部下

――今回、佐藤さんが捜査二課に所属する偏屈な刑事の木崎役、江口さんが新たに配属された年下の上司である斎見役を演じます。ドラマの鍵を握るのは、お二人が演じる役柄の関係性だと思います。どのようなコンビにしていきたいと思いますか?

佐藤 今回のドラマは二課という非常に特殊な部署が舞台でして、いろいろな仕事に特化している人間たちの集まりなんです。利己的な部分も含めて、個性のぶつかり合いになるので、普通のバディものよりはお客さんが馴染みにくい生臭さがあると思うんですよ。そういう部分が出せたらいいと思っています。

  

江口 バディものというよりか、おのおのに信念があって事件を解決するために協力している感じですね。男たちが、一つの大きな事件を前に近づいたり離れたりを繰り返す。でも、一人では事件は解決しない。木崎と斎見という、まったく感性も違えば、事件の捉え方さえ違う男たちが組んだからこそ、真相にたどり着くことができる。そのあたり、今までにはあまりないドラマになると思います。いわゆる“刑事もの”という言葉にもあてはまらない作品になるんじゃないかな。

――率直に、佐藤さんという大先輩の上司役を演じるのはどういうお気持ちですか?

江口 とてもやりがいがありますよね。佐藤さんの「圧」に対して「圧」をかける思いでやらせてもらっています。そうすることで、新たなエネルギーが加わり、芝居が変わっていくんですよ。

――佐藤さんは、江口さんの部下役というのはどういう心境なんでしょうか?

佐藤 僕がどうのというのはないけど……木崎という人間には「役職はそっちのほうが上だろうけど、先に生まれたのは俺のほうだぞ」という一種の割り切りがあったでしょうね。

――呉越同舟と言ってもいいような折り合いの悪い男たちが共通の目的に向かって進んでいく。警察だけでなく、会社などでも同じようなことがあり得ると思います。今回は江口さんが、佐藤さんの上司となりますが、もし江口さんが似たような状況に置かれたら、どのようにして木崎のような部下と一緒に目的を果たそうとしますか?

江口 「粘り」ですよね。このドラマで言うなら、事件を解決するための粘りがどこまでのものか、自分も相手もその体力を持っているのかどうか。サラリーマン社会でも、そういう部分がお互いの魅力になるだろうし、それがなければ一緒に仕事をすることはできないんじゃないかな。ケンカをする場合も、相手の粘りの部分を感じながら押し引きする感じですよね。

佐藤 ただ、係長の江口(斎見)とか、二課長の萩原聖人に対する俺(木崎)の口のきき方を、今の若い子たちは信じられないんじゃないかな。昔は儒教的に年長者が敬われていて、そういう部分がこのドラマや、僕たちが演じている世界の中には残っているので成立しているけど、今の若い子たちにはすごく不思議に見えると思いますよ。

――「なんであのおじさんは自分より上の立場の人に偉そうな口きいているんだろう?」って(笑)。

佐藤 ただの警部補だろ? って(笑)。

  

――俳優は若い頃から主演として、座長として年長の人たちを引っ張っていかなければいけない場合が多々あると思います。佐藤さんの初主演は20歳のとき、江口さんの初主演も20歳でした。やっぱり周囲への気遣いや苦労はありましたか?

佐藤 その頃はそれどころじゃなかったよ(笑)。

江口 右も左もわかりませんでしたから。逆に、周囲に気遣いができる若い俳優が来たら、「俺はぜんぜんできてなかったな……」と思い出しますね。

――今の世の中は実力主義なので、若い人は実力次第で存分に活躍できますし、それは良い部分でもあるのですが、先人たちが積み重ねてきたことにも目を向けたほうがいいということですね。

江口 現代の企業はデジタル化が進んでいると思うけど、僕たちがやっている撮影は本当にアナログの世界。現場では押したり退いたりするような駆け引きが多いんですよ。そういう部分が生々しく映る世界でもあるし、それも一つの表現。「優しさ」とか「調和」なんて言葉で一緒にされると、すごく難しくなってしまう。世の中のデジタル化が進めば進むほど、僕たちがやっているようなアナログ感というものが、もっともっと必要になってくると思っています。

仲間に対して「失敗しねえかなぁ…」刑事も俳優も抱く本音とは

――原作の木崎は、自分が取ってきた情報は上司にも与えなかったりします。信頼関係はあっても、「俺は俺」なんですね。

佐藤 セリフにもあるんですけど、「情報は知る者が増えれば増えるほど、漏洩する可能性が高くなる」。これは理屈であって、信頼関係があればそうではないんだけど、信頼関係を構築する前に、この理屈を建前にして生きる男たちの話なんです。それが二課であり、その部分が視聴者に伝わってくれれば面白いと思います。

――犯罪を解き明かすという共通の大義はあっても、仲間でさえやすやすと信用しない。その生臭さが面白いんですね。

佐藤 実際に刑事同士でも「あいつ、取り調べに失敗してくれないか」と思うことはあるらしいですからね。目的がすり替わっているのかもしれないけど、それが「性(さが)」なんですよ。それも生臭さですよね。俺たちだって、「誰それがこういう映画の撮影に入るらしい」と聞いたら、「いいなあ」と思うし、「………失敗しねえかなぁ」と思う部分もある(笑)。「いい作品になればいいな」と思いつつ、「面白かったら悔しいな」というのが本音かもしれない。それが人間ですよね。建前じゃないところで生きているということなんですよ。

  

――そういう嫉妬があるからこそ、より良いものが生まれるんでしょうね。

佐藤 そうですよ! 「『石つぶて』を江口と浩市がやるらしい」と聞いたとき、「面白かったら悔しい」と思う人たちが、いっぱいいてくれないと困る。俺たちもやる意味がない。俺が年端もいかない小僧だった頃、『犬死にせしもの』という映画を真田(広之)と一緒に大映京都で撮影していたら、緒形拳さんがやってきて「クソッ、面白そうなのやってんな、お前」って声をかけてくれたんですよ。そのときは「えっ」と思ったけど、今はガタさんの言葉がよくわかる。それは俺に対して悔しいんじゃなくて、「こういう面白いことに俺も参加したいよ」ということなんです。そう思うことが、我々の性(さが)なんだよね。

(文・ライター 大山くまお、撮影・逢坂聡)

〈ヘアメイク〉
及川久美(佐藤浩市さん)、勇見勝彦(江口洋介さん)

〈スタイリング〉
島津由行(江口洋介さん)

〈衣装〉
江口洋介さん:ジャケット ¥58,000(ビームスF)、シャツ ¥23,000(ジャンネット)、パンツ ¥37,000(PT01)、靴 ¥99,000(エンツォ ボナフェ) *こちら全て税抜きの金額です。

  

〈番組情報〉

連続ドラマW『石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』

佐藤浩市×江口洋介 SP対談「あいつら失敗しねえかなぁ…」ひそかに抱く仲間への“本音”

2017年11月5日から毎週日曜夜10:00~ WOWOWで放送
※第1話無料放送
監督:若松節朗
脚本:戸田山雅司
原作:清武英利『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(講談社)
音楽:住友紀人
出演:佐藤浩市、江口洋介、北村一輝、萩原聖人、飯豊まり ほか

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