小川フミオのモーターカー

アウディはこうして作られる、本国の新デザインセンターを見学

クルマはどうやってデザインされるのか。クルマ好きにとって興味がつきないテーマではないだろうか。デザインにおいて一頭地を抜いている感のあるアウディが、そのプロセスを公開してくれた。

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アウディではこの秋、南ドイツのインゴルシュタットにある本社ちかくにデザインセンターを新設した。デザインセンターとは平たく言うと、クルマのデザインを完成させるプロセスが集約された場所である。

たいていのひとは、クルマをデザインしようとしたことがあるはずだ。紙に車輪を描いてボディーを描く。実際のクルマのデザインもスタートは似たようなものである。

「優れたアイデアからスタートし、最終的には調和のとれた魅力的な製品に仕上げる」。これがアウディの言うデザインの基本だ。

そこには無数ともいえるプロセスがあり、アウディデザインでは400人以上の従業員がその作業に従事しているという。2000年と比較して人員は2倍以上。抱えるプロジェクトは5倍以上だそうだ。

新しいアウディ・デザインセンターは地上5階建て。特徴としては「デザインに関するほぼすべての部門が同じ建物に入ったこと」とデザインを統括するマルク・リヒテ氏は、取材にそう語ってくれた。

アウディにおける設計プロセスは発売の5年前にスタートする。通常、発売時期が決まっており、そこに合わせての作業となるのはデザイン部門もエンジニアリング部門も同じという。

スタジオの見せ場はクレイモデル。特殊な粘土をミリングマシンという切削器がコンピューターデータに基づき削っていく。出来上がると粘土のなかからクルマが現れるという感じである。

奥が仕上げの前で、手前がミリングマシンで仕上げた状態


奥が仕上げの前で、手前がミリングマシンで仕上げた状態

仕上げはクレイモデラーと呼ばれる職人による手作業。手で削り、面をなめらかにし、いわゆる“表情”をつけていく。“ここをもう少し削って”とか“ここは厚みを”など、デザイナーが注文する。

眼と手の感覚が重視され、デザインのなかでもかなり人間くさい工程である。出来あがった粘土のクルマを再度計測してデータ化していく。

さまざまな部署が同時進行でクルマを開発しているデザインセンター。「建物を作るときに何を重視しましたか」と、デザイン統括のマルク・リヒテ氏に尋ねた。

「光です」。リヒテ氏はそう答えた。窓が多いので自然光がよく入り、屋上はオープンスペースでデザインを検証できるようになっている。実際にクルマが走るのと同じ光の環境を作るのが重要なのだ。

そうはいっても、いまはVR(バーチャルリアリティー)グラスをかけてのデザイン作業も行われている。あたかも実車が目の前にあるような三次元の画像を見られるからだ。

現実と仮想現実をうまく使ってこそすぐれて先進的なデザイン作業が可能になるということなのだろう。

アウディのクルマは複雑な工程でデザインされている。でもそこから生み出されるものは、シンプルに誰もが美しいと感じるクルマである。ぼくにはそのギャップがおもしろい。

2017年10月にこの新デザインセンターで、新型アウディA7スポーツバックのお披露目が行われた。世界でこれまで20万台を売り上げたベストセラーである。新型はよりシャープになった印象だ。

新デザインセンターの屋上の特設ドームでお披露目された新型「A7スポーツバック」は少し低くなりフロントマスクと側面のキャラクターラインが新しい


新デザインセンターの屋上の特設ドームでお披露目された新型「A7スポーツバック」は少し低くなりフロントマスクと側面のキャラクターラインが新しい

従来型のスタイリングコンセプトを踏襲(とうしゅう)しつつ、新世代のライトやグリル、それに側面のキャラクターラインが目をひく。

「ここから(新デザインセンターと新型A7スポーツバック両方のことと思われる)アウディはさらに前進します」。発表会でルパート・シュタッドラー取締役会会長はそう述べた。

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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