キャンピングカーで行こう!

縁の下の力持ち、ヒッチメンバーを知っておこう

 

昨年、キャンピングトレーラーの人気が急上昇中、というお話をしました(トレーラー人気、ますます上昇中、専門のショーに行ってみた )。キャンピングカーショーなどで「トレーラーを検討しているのですが……」という相談を受けることも増えてきました。

トレーラーのメリットの一つに「今持っている乗用車で引くことができる」ということがあります。もちろんいくつか条件はありますが、普段使いの車はそのままなので、好きな車を諦めなくてよいのは、車好きにとっては大きなメリットでしょう。

こういう話をすると大抵、「うちの車でも引っ張れるんでしょうか?」という質問をされます。もちろん、どんなトレーラーを引っ張るかにもよりますが、おおよその条件を紹介すると、

・1800cc程度の排気量があること
・「ヒッチメンバー(けん引用接続器具)」が取り付けられること

この2点です。
つまり、軽自動車やリッターカー、スポーツカーを除けば、大抵の車でトレーラーをけん引できるということです。

日本のトレーラー事情

日本でトレーラーといえば、大型の貨物トレーラーをイメージする人が多いでしょう。最近でこそボートトレーラーやバイクトレーラーなど、遊び道具をけん引している車を見かけることもありますし、キャンピングトレーラーも増えています。

 

一方、欧米ではトレーラーは珍しい存在ではありません。乗用車も、けん引できるのが当たり前。カタログのスペック欄にはTowing Capacity(トーイング キャパシティー)、つまり「けん引能力」の記載が必ずあります。具体的に言うと「この車は、〇〇キロまでのトレーラーがけん引できます」ということです。

しかし残念ながら、けん引文化のない日本では、ごく一部の車種を除いてそうした記載はありません。それどころか輸入車でさえ、日本版のカタログにはけん引能力の記載がありません。“本国では当たり前にトレーラーを引いている車種なのに”です。日本仕様(ハンドルを右ハンドルにするなど)になったからといって、けん引能力がなくなるわけではないのに、これは残念なところです。

では、今乗っている愛車でトレーラーをけん引するにはどうしたらいいのでしょうか。それには(愛車が国産車であれ、輸入車であれ)「ヒッチメンバー」という部品が取り付けられればOK。ヒッチメンバーとは、乗用車とトレーラーを連結するための器具のことです。ヒッチメンバー、トレーラーヒッチ、トウバーなど、いろいろな名称で呼ばれるパーツですが、ここではヒッチメンバーで統一します。

ヒッチメンバーってどんなもの?

トレーラーにはさまざまなけん引方式がありますが、乗用車で引くトレーラーは「ボール&カプラー方式」といいます。乗用車側にヒッチボールという金属製のボールを取り付け、トレーラー側にはそのボールをつかむ「カプラー」というパーツがついています。このボールを取り付けるための台座になるのが「ヒッチメンバー」なのです。

ヒッチメンバーを車体後部に取り付け、ウィンカーやバックランプなどを連結させる配線とコネクターを装備すれば(※1)、けん引の準備は完了です。

さてこのヒッチメンバーにも種類があります。基本は車種ごとの専用設計。ベンツ用のヒッチメンバーはBMWには取り付けられませんし、日産・キャラバン用のものはトヨタ・ハイエースにはつきません。それどころか、同じ車種でもモデルが変われば、取り付けられません。ヒッチメンバーは車両の床の形状に合わせて作られているので、同じ車種でも構造が変更になれば、ヒッチメンバーも変わるというわけです。

 

取り付けは、基本的にはボルト留め。溶接などは不要です。車種やヒッチメンバーの形状によってはバンパーの一部をカットする必要がある場合もありますが、ヒッチメンバー取り付けは改造ではない(※2)ので改造申請も不要。車検もそのままでOKです。

※1 トレーラーのウィンカーやバックランプ、ブレーキランプがヘッド車にも同調するようになっている
※2 ヒッチメンバーを取り付けても、改造申請は不要

どこで入手できる?

ヨーロッパでは、ヒッチメンバーは大抵の車にオプション設定されています。では日本車はどうかといえば、数車種ですがオプション設定されている車があります。

・トヨタ・ランドクルーザー
・トヨタ・レクサス・LX570
・三菱・パジェロ
・三菱・デリカD:5(ディーゼル車のみ)
・マツダ・CX-8

の5車種です。

輸入車ではランドローバーとボルボのカタログには、日本仕様でもトレーラーを引くためのオプション類が記載されています。(キャンピングトレーラーの“ヘッド車”を考える

このような純正オプションの設定がない車種はどうしたらよいのでしょう。その場合は専門メーカーのヒッチメンバーを入手すればよいのです。ヒッチメンバーのメーカーには欧米の会社も日本の会社もありますが、輸入車や国産車でも海外で販売されている車種なら、比較的簡単に欧米の専門メーカー製品が見つかるでしょう。日本国内専用車種の場合は、日本にもヒッチメンバーのメーカーがあります。

ヒッチメンバー選びは慎重に!

さて、愛車にけん引能力があることはわかったとして、愛車の車種に合わせたヒッチメンバーを手に入れれば準備OK! でしょうか。実は同じ車種用ヒッチメンバーでも、引っ張るトレーラーの重さに応じて種類があるのです。
ヒッチメンバーはトレーラーの荷重を受ける重要な部品です。安心・安全にトレーラーをけん引するために大切なのは、二つの数字。「けん引重量」と「垂直荷重」です。

「けん引重量」とは文字通り、そのヒッチメンバーで引っ張れるトレーラーの総重量のことを言います。もう一つの「垂直荷重」とは、ヒッチボール部分に垂直にかかる荷重を示します。
同じ車種用のヒッチメンバーでも、製品によって設計された荷重が異なります。

 

大切なのは

・自分がけん引したいと思うトレーラーの重さ以上の能力を持ったヒッチメンバーを選ぶこと
・もし選択肢があるなら、できるだけ能力が高いヒッチメンバーを選ぶこと

その理由は二つあります。

同じトレーラーでも、能力いっぱいのヒッチメンバーで引っ張るより、能力に余裕のあるヒッチメンバーで引いた方が、ヘッド車に優しいこと。
そして、最初は小さいトレーラーでいいと思っていても、やがて大きなトレーラーが欲しくなる人が多いからです。

実際、小さいトレーラーから大きいトレーラーに乗り替えた人で、ヒッチメンバーの能力を詳しく確認しなかったために破損してしまった、というケースもありました。前のトレーラー(軽量)用のヒッチメンバーの能力では、新しいトレーラーを引くには無理があったのでしょう。かまわずそのまま使い続けた結果、ヒッチメンバーを取り付けた床部分が欠損。幸いトレーラーが切り離されるような惨事には至りませんでしたが、トレーラーを引く人は、使っているヒッチメンバーの能力について、理解しておくことも大切です。

また、「自分の車には750kgまでのヒッチメンバーしか発売されていない。けん引免許が必要な大型のトレーラーをけん引したいのだけれど、どうしたらいい?」というケースもあります。この場合はヒッチメンバーを「特注する」ことになります。全車種、とはいかないまでも、さまざまな車種に対応したヒッチメンバーを作ってくれる会社がありますので、相談してみるのが一番でしょう。

ここまで読んで「何だか難しいな……」と思われたかもしれません。でも、大丈夫。キャンピングトレーラーを得意とするショップなら、ヒッチメンバーについても多くのノウハウを持っています。大事なことは、ヒッチメンバーの取り付けや、トレーラーやヘッド車の買い替えなどの変更が発生したら、必ず相談すること。プロの力を最大限に生かして、安全なトレーラーライフを楽しみましょう!

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

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