私の一枚

もう一度ピアノを習い始めた家入レオ、新しい気づきと広がっていく音楽

 

最近ピアノを習い始めました。これまでも少し弾いてはいたのですが、ゼロから始める感覚で、先生についてクラシックピアノの指の動かし方から勉強しています。今はまだ、ほんとの基礎の基礎です。

去年の9月、今の日本の音楽シーンのど真ん中にいる素晴らしいミュージシャンのみなさんとライブツアーをする機会をいただき、その中でオリジナル曲の『だってネコだから』を、ピアノを弾きながら歌いました。この写真は、そのリハーサルでの一枚です。

ライブでピアノを弾きながらバンドとセッションするのはこれが初めて。ただ歌うだけの時よりもバンドのグルーヴを感じることができて本当に楽しかったのですが、一方で「まだ自分の血肉になっていないものを簡単に披露しちゃいけないな」とも強く感じました。

いつも私は、私の内側から生まれるものを、体を鳴らして歌として外へと発信していますが、楽器の演奏では、自分の体ではない何かで音楽を表現しなければいけない。それがどれだけすごいことなのか、凄腕のミュージシャンのみなさんと一緒に演奏したことで気がつきました。

デビューから5年が過ぎ、“音楽が好き”っていうだけで突破できる時期は終わったな、と感じています。これからは、ちゃんと自分に根付いているものを出していかなくちゃいけないな、と考え始めました。ピアノと向き合ったことが、音楽に対するそうした気づきを私に与えてくれました。

練習しながら、ピアノを使った作曲も始めています。『だってネコだから』もそのひとつです。
もともとオリジナル曲が作りたくて13歳の時に地元の音楽塾に通い始めたのですが、そこでは、曲作りの準備として、ビートルズの「レット・イット・ビー」をギターで覚えて、そのコード進行をもとに曲を作るレッスンがありました。

デビューしてからはピアノで曲を作ることがほとんどありませんでしたが、改めて作曲のためにピアノに向き合ってみると、いつも作るメロディーとは違うものが出来上がったりして、おもしろいなと思います。ギターよりも歌力(うたぢから)に寄り添ってくれる楽器だと思うので、今後はバラードができやすくなるかもしれませんね。

新しいアルバム『TIME』には、自作曲と、提供していただいた曲の両方が入っています。自作の曲はそれを絞り出してるのが自分なので本能的に歌えますが、提供していただいた曲には自分のDNAがどこにもないので、そのぶん歌唱でどれだけ爪痕を残せるかを考えます。この歌詞をどう歌えばみんなをびっくりさせられるだろう、私の歌でどれだけ歌詞の魅力を磨けるだろうって。そんなふうに思いながら歌った録音を聴いてみると、不思議と自分の曲よりも自分らしさがあふれ出しているように思えることがあります。

シンガー・ソングライターとしてデビューしたので、当初は“書いていない曲を歌っていていいのかな”っていう気持ちが多少ありましたが、最近は演技をやってみたり、いろんなフィールドに出かけたりするようになって、オープンマインドになった自分、歌うことが本当に好きな自分を感じることができています。

私って、ひとつのことに真剣になったら痛い目に遭うまではやめられない(笑)。歌にも、何に対しても。だから、ピアノとも長く付き合っていくんだろうと思います。ちゃんと自分の血肉になったと思えたら、アルバムの中でも弾いてみたいですし、5月から始まる全国ツアーでも弾いてみたいと思っています。

17歳でデビューしてから丸6年。アーティストとしても人としても魅力を増す家入レオさん


17歳でデビューしてから丸6年。アーティストとしても人としても魅力を増す家入レオさん

いえいり・れお 福岡県出身。16歳で単身上京し、都内の高校に通いながら2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャー・デビュー。第54回日本レコード大賞最優秀新人賞など多数の新人賞を受賞する。デビュー5周年だった2017年には初のベスト・アルバム『5th Anniversary Best』の発表、初の日本武道館公演開催、初のドラマ出演、さらに初のCM出演と、活躍のフィールドをますます広げている。今年2月21日にニュー・アルバム『TIME』を発表。5月からは全国ツアーの開催が決定している。

◆『TIME』は1年7カ月ぶり、通算5作目となるオリジナル・アルバム。日本テレビ系日曜ドラマ「愛してたって、秘密はある。」の主題歌「ずっと、ふたりで」、自身が出演する「はじめてのClova WAVE 家入レオ(音楽)篇」のCMソング「Relax」、昨年のライブツアーでピアノを演奏した『だってネコだから』など全13曲を収録。うち6曲の作詞、3曲の作曲を自ら手掛けている。

「原点回帰の1枚になったのかな」と語るニュー・アルバム『TIME』(2月21日発売)


「原点回帰の1枚になったのかな」と語るニュー・アルバム『TIME』(2月21日発売)

演奏や楽曲提供をして下さるミュージシャンのみなさん、レコード会社のスタッフさんや事務所のマネジャーさんなど、私っていろんな人の時間を前借りというか、いただいて生きているんだなと思います。

いま作っているものがどれぐらいの人に届くかなんて何の確約もないのに、みんな全力で、信じて頑張ってくれている。その時間をどうやって返せばいいのだろうと考えると、やっぱり素晴らしい音楽をつくって、聴いてくれた人達が喜んでくれる時間に変えていくことしかない。そんなふうに時間を交換しながら、これからも歩いていきたい。そんな想いで『TIME』というタイトルにしました。
前作からの1年7カ月の間に、アーティストとしても、ひとりの人間としても、女性としてもいろんなことがあって、それをちゃんと音楽として形にできたかなと思っています。

(聞き手・髙橋晃浩)

PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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