本業は農家 AKIRA TIMESさんが“着物”で表現する日本の美

 

(C)「KIMONO times」AKIRA TIMES

(C)「KIMONO times」AKIRA TIMES

 30歳から着物をテーマにした写真を撮り続け、2017年に7年分の作品が詰まった写真集「KIMONO times」を出版したAKIRA TIMESさん。着物をモチーフにしたスタイリングはどれも伝統を重んじつつ、前衛的ではかなさをにじませる作品だ。一枚一枚に異なる表情が宿り、見る者の視線を捉えて離さない。

 山形に住むAKIRAさんの本業は農家だ。普段は実家の果樹園でリンゴとサクランボを栽培しながら、手入れや収穫のない閑散期に写真を撮りためておき、農作業の合間に編集を行い、SNSで作品を投稿している。

 着物をテーマにした写真を撮る原動力となったのは、胸の中でうずいていた憂いだった。「昔の日本には素晴らしい美しさがあったけど、いまは損なわれてしまっている。思い返せば、若い頃の勝手な思い込みなんですけどね」。そう笑いながら振り返る。

「美術系の学校に進学したわけでもなく、ただ自由に作っているだけ。自分のことをプロだとは思っていないんです」

 衣装や小物集めからヘアメイク、撮影までのほとんどを一人でこなしてきた。写真集に収録されている作品の大半は、自宅にある6畳の部屋で、家庭用のライトを使って撮影している。

 写真に造詣(ぞうけい)が深い人が見ると驚くそうだが、AKIRAさんにとっては当たり前の手法だ。モデルと初めて対面を果たすのは撮影時が多く、事前にイメージを共有して、ポーズの練習をしてきてもらい、着物の文様や柄などは、髪や瞳、肌の色を見て決める。細部にこだわり、1カットに8時間ほどかけたものもあるという。

(C)「KIMONO times」AKIRA TIMES

(C)「KIMONO times」AKIRA TIMES

 イギリス出身の着物研究家シーラ・クリフさんに勧められ、出版に至った写真集は、世界各国の人々の手に渡り、中にはニューヨーク近代美術館(MoMA)にまで持ち込んでくれた人もいるそうだ。

 “着物写真”が評判を呼び、映像作品のディレクションも務めた。創作活動の背中を押すのは、多方面で才能を発揮するフランスのアーティスト、セルジュ・ルタンスの作品を見たときの感動だ。80年代、90年代にルタンスが手掛けた広告ビジュアルを目にした際の衝撃は忘れられないという。

「彼を超えることは到底難しいけれど、目指し続けることはできると思います。少しでも迫りたいという、私ならではの遊びなんです」

 独特な世界観と美に魅了され、これからも多くの人が「KIMONO times」のページを繰(く)ることだろう。

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(文・山田敦士)

PROFILE

AKIRA TIMES(アキラ・タイムス)

1980年生まれ、山形県出身。中学卒業後、実家の果樹園を手伝う。のちに撮影を始め、農業を営みながら作品を発信。撮影や編集、メーキャップやスタイリングまで、全て独学で学び、2017年に初の写真集「KIMONO times」を出版。そのほか、山形県長井市の観光事業のため、イメージ映像製作「NAGAI TIMES」も行っている。

 

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