インタビュー

旅するように会社経営をする。株式会社Backpackers’Japanの『新しい働き方』

  
“あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。”という理念のもと、2010年に20代の男女4人が東京・入谷に『toco.(トコ)』というゲストハウスをオープンした。その後、東京・蔵前『Nui. (ヌイ)HOSTEL & BAR LOUNGE(2012年)』、『Len (レン)京都河原町(2015年)』、東京・東日本橋『CITAN(シタン・2017年)』とホステルをオープンしてきた株式会社Backpackers’ Japan。toco.は古民家を、Nui.は空きビルをそれぞれリノベーションした宿泊施設の先駆けとして知られている。

  
同社が運営するホステルは7割が海外からの宿泊客で、特にフランス・オーストラリア・アメリカ・台湾・韓国からの客が多い。四つのホステルで働くスタッフはアルバイトを含め約100人で、平均年齢は27歳と若い。共通するのは、宿泊者以外も使えるバーラウンジが併設されていること。近所の会社員が打ち合わせする隣で、海外の宿泊客がビールを飲み、その隣でチェックイン・アウトしていく。たくさんの人種と言語が混ざり合い、スタッフも含めて誰もがリラックスしている空間だ。

  
同社代表取締役の本間貴裕さん(32歳)は、大学3年のときに路上パフォーマンスをしながらオーストラリアを一周し、帰国後はたい焼き屋の経営で資金を貯めて、同年代の仲間4人で会社を立ち上げた。今回は、1カ月のうち3分の1は海外で過ごすという本間さんに、ミレニアル世代の新しい働き方と、仕事を“私事”にするコツを聞いた。

マーケティングではなく、理念からアプローチする空間づくり

――今日は、Nui.のバーラウンジでお話を聞いています。Backpackers’ Japan が運営するホステルには必ずバーラウンジがありますね。最近は、交流が生まれるように共用部を広くするホテルが増えていますが、この傾向についてどう思っていますか?

6年前にNui.をつくったころに比べて、日本のドミトリーは数十倍に増えた感覚があります。そこにAirbnb(エアビーアンドビー)もやってきて、たしかに共用部をウリにしている宿泊施設は増えました。ただ、僕たちは「これからは共用部が大切になる」とか「1階にバーラウンジをつくったら流行する」という戦略ではなく、あらゆる境界線を越えた宿をやるなら近所の人も集える場所が必要で、宿泊客と混ざり合うなら広いラウンジが必要で……と、理念に沿った空間づくりをした結果、こうなりました。

共用部に重きをおく競合施設が増えたのは事実ですが、それによって逆に自分たちのキャラクターがはっきりしたと思います。

  
――マーケティングから入るのではなく、理念に沿った結果の空間なのですね。

はじめは市場調査やエリアマーケティングの知識も無かったから、自分たちの経験と知識とセンスを掘っていくことしかできませんでした。結果としては、理念からアプローチした空間づくりがよかったし、差別化のポイントになっていると思います。

ミレニアル世代は、「新しい働き方」を提示できる特権がある

――「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。」という理念はどのように生まれたのですか?

創業メンバー4人でこれから何をしていくか話し合ったときに、僕たちが旅の醍醐味だと思っている『視野の広がり』と『自己回顧』を仕事にしようと決めました。いろんな人に出会って、いろんな場所に行くことで視野は広がります。そして、その場所で落ち着いた時間を持ち、自分自身について思考するのが自己回顧、この二つを行うために必要なのが宿。だから、宿屋をつくって、いろんな人が集まる場所をつくることにしました。その流れを言語化した理念です。

  
――今、Backpackers’ Japanはアルバイトを含めて100人のスタッフがいます。マネジメントをする人数が増えるほど、理念の浸透が難しくなりませんか?

スタッフへの理念の浸透は、これといった努力はしていないです(笑)。僕たちの理念にはロマンがあるし、これからの社会が向かう方向に合っているし、そもそも魅力的だと思っているから、スタッフにも自然に浸透すると思う。経営陣として気をつけているのは、理念に対して乖離(かいり)のない判断をすることです。

一緒に働く仲間にしても、僕たちが“一緒に食事をしたい”と思う人を採用します。理念への共感度はもちろん大事ですが、それ以上に一緒に長く楽しく働ける人と仕事をしていきたいと思っています。

――とはいえ、会社としては利益を出す必要があります。楽しさだけではやっていけないのでは?

もちろん、会社なので利益はシビアに見ています。ただ、感情と数字のバランスを取ることも含めて、現場でうまくやってください、というスタンスです。それぞれの施設のアクションプランは、自分たちで考えてほしい。

いま、スタッフが100人になって、その意識が薄れている気がしています。もっと人数が増えると、組織としてきっちりとルールをつくって統率するほうが簡単ですが、そっちには行きたくないと思っています。

――それは、新しい働き方へのチャレンジですね!

世間に新しい働き方の提示ができるというのは、僕たち世代の特権だと思っています。「若いスタッフからの聞き取りベース」で新しい働き方を考えるのではなく、僕たちはそれを地で感じて実践できるから。こんな働き方もあるよね、というものを世間に見せられるチャンスです。

  

これまでは機密だったことも、オープンにしていく時代

――新しい働き方として具体的に動いていることはありますか?

仲のいい会社と人材を交換して、お互いにノウハウをオープンにして学び合い高め合っていく『オープンカンパニー制度』を実施しています。いまは、セキュリティーや情報漏洩を防ぐため閉ざされた企業が多いけれど、僕たちはオープンを好む世代だし、オープンな会社になりたい。新しい働き方も自分たちが実験的にやってみて、その情報を公開してまねしてもらう。そのまねした会社からフィードバックをもらって、お互いに高め合っていくほうが、成長が早くなる。

市場を日本に限定するなら、まねされた会社はライバルになるけれど、目線を世界に向ければ、国内でブラッシュアップしたものを海外に持っていけるということだし、そこでも競合するなら違う世界の地域に出て行けばライバルにはならないと思っています。

  
――会社間の交換留学ですね。一つの組織だけで働くよりも、スタッフも刺激があって楽しく働くことができそうです。

いま社内には、副業をしているスタッフもいます。彼らは、自分の仕事をしながら、宿の仕事もしている。宿のゲストなのかスタッフなのかもあいまいですが、そういう関係性がいいなと思っています。依存しあうとお互いに離れられなくなるけれど、たとえ方向性の違いで離れることがあっても、お互いに成長して接点があればまた一緒にやればいい。

基本的にはBackpackers’ Japanのスタッフも自立してほしいと思っているので、これからは兼業者をもっと増やしていきたい。社内で副業ができるような仕組みもつくっていこうと思っています。」

  
  

元来、仕事とは楽しくするもの

――本間さんは、 “仕事は楽しくするもの”という意識が強いように感じます。そう思うようになったきっかけは何ですか?

大学生のときに、路上パフォーマンスをしながらオーストラリア一周の旅をして、それがすごく楽しかったんです。一度のパフォーマンスで稼げるのは3ドルくらいでしたが、それまでにやっていた時給3000円のアルバイトよりも、働くとはこういうことだと実感できた。

日本では、「社会人になったら遊べなくなるから、学生のうちに遊んでおけ」と言われていますが、僕はどうしても7日間のうち5日も我慢して暮らしていくイメージが描けなかった。
しかし、オーストラリアの旅では、出会った人たちから「仕事は楽しいぞ。学生なんてやめて早く社会に出ておいで」「仕事は自分の好きなことをやった結果、誰かが笑顔になる。人の役に立てるうえにお金がもらえる。学生は、好きなことをやってもお金はもらえないだろう?」と言われた。
そう考えたら、社会人ってすごくすてきだなと思えたことが原体験でした。

  
――御社が導入している1年に一度、2週間の有給休暇をとって旅に出る『Trip-Off制度』もユニークな制度です。

この制度の始まりは、僕が社会人になっても旅をし続けたかったから(笑)。「社長だから自由にしていいよね」なんてずるい。であれば、社員全員が旅に出られる制度にしようと思って。

組織的にも、誰かが一定期間いないのは良いことです。「あの人が一人いなくなるだけで、こんなに違うんだ」という気づきがある。それを、スタッフ・役員・経営陣まで一律で体感できるのが良いことなのです。

取材・文 石川歩/写真・野呂美帆

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