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軽すぎてもダメ? マラソンランナーにとっての適正体重

Photo : ShotShare / Getty Images


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マラソンランナーにとっての体重管理をテーマに、前回から書き始めている。「マラソンは体重が軽ければ軽いほどいいタイムが出る」とされているからだ。とはいえものには限度がある。ランナーにとっての適正体重とはどれくらいなのか。目安となるのがBMIという指数だ。会社の健康診断などで目にしたことのある人も多いと思うが、次の計算式で導かれる。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

ネット上にさまざまな自動計算サイトがあるので、計算が面倒な人は利用するといいだろう。例えば、このサイトを使って私の身長174cm、体重69.0kgを入力すると、〈BMIは22.8、標準体重は66.6、普通体重の範囲は「56kg以上、75.7kg未満」〉とたちどころに出てくる。では、マラソンランナーにとっての適正BMI値はどれくらいなのか。公表されているトップランナーのBMIを計算すると、けっこうバラツキがあることがわかった。

まず、痩身(そうしん)の代表はフルマラソン日本記録保持者の設楽悠太選手(ホンダ)だ。170cmの身長に体重48kgだから、BMIは16.6だ。世界保健機関(WHO)の判定基準(成人)ではBMI16未満は「痩せすぎ」なので、設楽選手はギリギリだ。一方、今年のボストンマラソンで優勝し、プロ転向を宣言した川内優輝選手はガッチリ体格の代表で、身長172cmに対して体重62kgなのでBMIは20.9だった。私が調べた限りでは、国内の長距離トップランナーは男子も女子もおおむねこの範囲(BMI16〜21)に収まっていた。一般の人の標準体重の基準となるBMIは22とされているのでトップランナーの多くはそれより痩せていることになる。

前出の肥満判定基準では18.5〜25未満が「普通体重」の範疇(はんちゅう)に入る。アマチュアのマラソンランナーであれば、その範囲内に収まっていて、できれば「22」より少ない数値が望ましいというわけだ。私の場合、普通体重の範囲内にはあるがBMI22以下にするには、体重をあと2.5kg削らないといけない。これは、かなりの努力が必要だ。

BMIについては前にも紹介した英セントメアリーズ大学応用スポーツ科学教授のジョン・ブルーワー氏の『ランニング・サイエンス』(河出書房新社)に非常に興味深い調査データが出ていた。それによると、国際レベルのマラソンランナーのBMIは18〜22.5、800mランナーは18.5〜24、400mランナーは20〜25、100mランナーは20.5〜27なのだそうだ。走る距離が短くなればなるほどBMI値が大きく(体重が重く)なっている。長距離ランナーにとって「軽さ」がいかに重要なことかがわかるだろう。

体脂肪を効率よく減らそう!

Ivanko_Brnjakovic / Getty Images


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BMIは身長と体重から導き出される指数だが、ランナーにとってもうひとつ忘れてはならない数値が体脂肪率だ。体脂肪率とは、体重に占める脂肪の量をパーセントで表したもので、「筋肉は脂肪の約10倍電気が流れやすい」という性質を利用した家庭用の体脂肪計(体組成計)で測ることができる。健康機器メーカーのタニタがHPで発表している「体脂肪率判定表」によると、40歳〜59歳の男性は12%〜22%が、同じく女性は22%〜35%が標準的な体脂肪率だという。

では、マラソンランナーにとって理想的な体脂肪率とはどれくらいなのか? 一般の人の標準値より少ないことは容易に想像がつく。結論から言うと、ランナーのレベルによって当然ながら差があるようだ。前出のタニタがランネット経由で行った調査によると、サブ3(フルマラソン3時間切り)ランナーの平均体脂肪率は男性10.6%、女性13.5%だった。これがサブ4になると男性14.4%、女性19.4%、サブ5だと男性17.2%、女性21.8%と、速い人ほど体脂肪が明らかに少ない。

また、横浜市スポーツ医科学センターが発表している「一般人」「市民ランナー」「エリートランナー」の体脂肪率比較表もなかなか面白い。これは同センターの「スポーツプログラムサービス」を受けた人から抽出したもので、それによると「一般人」(30代〜40代)の平均体脂肪率が男性17.7%、女性25.6%なのに対して、「市民ランナー」(同)の平均は男性13.9%、女性19.1%、「エリートランナー」(実業団所属、20代〜30代)は男性9.4%、女性16.8%となっている。これが、オリンピック級の選手になるとさらに圧縮されて、男性5〜8%、女性8〜10%にもなるという。

以上のことから導き出される結論は、前回の繰り返しになるが、ランニングパフォーマンスを向上させるためには、いかにして効率よく体脂肪を減らせるかということに尽きる。

成人した人間の身長が大きく変化することはないからBMI 値を減らすには体重を落とすしかない。しかし、食事制限などで急激に減量しようとすると筋肉もいっしょに失ってしまう危険がある。ダイエット本などには「健康的に痩せるには1カ月の減量は体重の2%〜3%が限度」などとよく書いてある。これはランナーにも当てはまる。マラソンも減量も、なにより“ペース”が重要なのだ。

そこで、目指すレースが決まったらまず現状のBMI(体重)と体脂肪率を把握する。次に、目標とするBMIと体脂肪率(どこまで落とすか)を決定して、減量ペース(週に○kgとか、1日○kcalとか)を設定し、それをレース当日まで粛々と実行するということになる。

さて、2回にわたってマラソンにおける体重管理の理屈を書いてきてたが、次回はいよいよその実行編だ。最近、ランナーの間でひそかに流行しつつある体重管理の“秘密兵器”も紹介したい。お楽しみに。

PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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減量が簡単に!? 体重管理の“秘密兵器”

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