ミレニアルズトーク Millennials Talk

ロールモデル不在の時代。女性に多くの選択肢を 石井リナ×福田恵里

  

女性向けエンパワーメント動画メディア「BLAST」を運営するBLAST Inc.のCEOであり、SNSコンサルタントでもある石井リナが、ミレニアル世代を掘り下げる連載「石井リナのミレニアルズトーク」。ミレニアル世代の中でも1990年前後に生まれた人間は、現在27歳前後。社会に出て数年たち、ネットネイティブで育った柔軟な感覚で様々な新しい働き方に取り組んでいる。 中学時代にガラケーを持ち、インターネットとともに育ってきた環境のミレニアル世代たちは、どういった価値観をなにによって形成してきたのか。バブル世代とジェネレーションZのハザマに生まれ、双方のハブとなり得る存在のミレニアル世代を深掘りする。 吉田拓巳さんをお招きした前回に引き続き、今回は、女性が自分の「好き」を見つけて仕事にすることを支援する企業「SHE」のCCO福田恵里さんと、ミレニアルズの価値観を探っていく。 ”好きを仕事に”が叫ばれる現代に、スキルという武器で女性たちを支援する福田さん。職業観も価値観も変わりゆく21世紀に、女性たちが自分らしく熱狂して生きていくためには何が必要なのか。福田さんと共に、新時代の女性キャリア論について考えた。

デザインの力でステレオタイプを変えていく

石井リナ(以下、石井):クリエーターや、発信するひとに向けたハッカソンBUZZ CAMPで恵里ちゃんと出会って、「事業内容は違えど、根本にある思いは同じだな」と、共感することが多かったんだよね。今日は、「新時代の女性のキャリア」をテーマにお話しをできればと思います。まずは、恵里ちゃんが経営するSHEについて簡単に教えてください。

福田恵里(以下、福田):SHEは、「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」を理念に掲げ、女性が新しいスキルを学び、それを生かして働く場所「SHElikes」を運営しています。21世紀を生きる女性たちが、「好き」を見つけ、自分の価値を発揮して生きていく支援をしたいとの思いで設立したんだよね。

石井:起業に至った経緯を聞いてもいい?

福田:起業を志したのは、大学生の頃。サンフランシスコへ留学に行く機会があって、そこで出会った同世代のアントレプレナーたちに感銘を受けたんです。夢に震えた大学生たちが、当たり前のようにプログラミングを習得し、アプリやサービスを作っている。日本でなんとなく学生生活を送っていた私は、その熱気に驚いたの。   

石井:そこからSHE起業に至るまでに、恵里ちゃんの中でどんな変化があったの?

福田:日本に帰ってきてから、私もアイデアを形にできる人になりたくて、独学でデザインとプログラミングの勉強を始めたの。すると、エンジニアに女性が少ないことに課題意識を覚えるようになって。自分の力でアイデアを具現化できるこんなに素敵なツールがあるのに、ステレオタイプな考え方のせいで女性が機会を失っているなんてもったいない。そう思い、女性向けWebデザイン講座「Design Girls」を立ち上げたの。すると、うれしいことにそこから本当にデザイナーやエンジニアになる女性が出てきたんだ。

石井:なるほど。当時の成功体験が、起業につながっていったんだね。

福田:そうそう。平凡な大学生だった自分が、誰かの人生をちょっとでもいい方向に変えられたっていう原体験が、私の起業には大きく関わっていると思う。

石井:ちなみに、起業前に一度、就職しているよね。会社を辞めて起業することへの不安はあった? 福田:もちろんあったよ。いつか起業しようと思って入社したものの、やっぱり居心地も良くて学びもある、安定した場所から抜け出すには不安もあった。ただ、昔から“何者かになりたい思い”が強くて。「このままでは普通の人間になってしまう」、という危機感があったの。今日より若い日はないんだから、失敗を恐れて準備し続けるよりも、失敗しながらでも学んでいく道を選ぶ方がいいと考え方をシフトしたんだ。

キャリアにおけるジェンダー・ステレオタイプ

石井:事業内容は違うけれど、SHEもBLASTも、「自分らしく生きられる女性を増やす」という文脈では共通点があるよね。でも、肝心の日本の女性自身は「男女不平等に気がついていない」のが現状だと思っていて。 世界では、男女不平等であればあるほど、給与の高いSTEM(Science、Technology、Engineering、 Mathematics)にまつわる職業に女性が就くというデータがあるの。ただ、日本は男女格差が大きいのにもかかわらず、STEMに従事する女性の割合が低い。キャリアを選択する時点で、ジェンダーギャップに気づけていない現状があるんだよね。

  

福田:先日ある女子大で登壇させてもらう機会があったんだけど、「実際仕事をする上でキャリアの性差はありますか?」と質問されたのね。学生の時点ではジェンダーギャップを知ったり感じたりする機会は少ないし、それが女性のキャリア選択に対する情報感度や意識を下げているのかもしれないね。

石井:過去に比べたら徐々に良くなっていると思うけど、幼い頃からの教育や、日本全体を包む空気感が差別的なこともあると思う。小さい頃から植え付けらえてきた“女性観”がステレオタイプなせいで、女性の選択肢が狭められているなって。

ロールモデル不在の時代に

福田:上の世代とは異なる価値観を持っていて、かつ社会に出ているミレニアルズだからこそ、気がついていることってあるよね。

石井:職業観もその一つ。ミレニアルズ以降は「自分らしく働く」ことや「好きを仕事に」することに興味があるし、それが実現可能なことに気がついている世代だと思う。

福田:大事なのは「様々な先行事例を見て、自分に合った生き方を能動的に選ぶこと」だと思う。今までは皆の憧れのような存在のカリスマがいて、その人を目指せば良かったけど、生き方が多様化している現代はロールモデル不在の時代。皆異なった価値観や魅力を尊重し合い、自分らしさを武器に仕事をしていくことが求められていく。だからこそSHEでは、その自分にしかない”価値”を一緒に見つけて育てていくお手伝いをしたいと思ってるの。

石井:ただ、こういう活動をしていても、先日の“東京医科大問題”など、驚くようなニュースもまだまだあるよね。

  

福田:女子受験生の点数が一律に減点されていた問題だよね。女性は結婚や出産を機に離職することが多くて医師不足が発生するから、医大の女子合格者数を抑制するっていうひどい話だったけど……、リナちゃんすごく怒ってたよね。

石井:東京オリンピックを間近に控えた2018年に、何をしているんだろうって。でも、やっぱり日本の未来を信じたいとも思ってるし、将来の少女たちのために私たちが今できることをやっていかないと、とも思ってる。

福田:この問題に対する意見の一つで、外科医の西川史子さんのコメントが話題になってたの。「(成績が)上の人から採っていくと、女の子の方が優秀だから女性ばかりになってしまう。そうすると外科医が減って眼科医や皮膚科医だらけになる」という話だったんだけど。 きっと西川さんは、外科医として現実的な側面を知っているし、そうしたビハインドを実力で乗り越えてきた自負があるから言えることなんだと思うの。ただ、実力を持った人こそ、構造改革に立ち上がってほしいとも思う。強い人だけが生き残るのではなく、全員に等しく機会が与えられるような社会を目指していけたらな、と。

石井:自分の力でサバイブできる人こそ、平等な機会があふれた社会の構築に尽力してくれたら、うれしいね。 あと、経済的に自立してくことも重要だよね。稼ぐことは悪ではないし。経済的にも当たり前に自立した女性が増えるようにしたいよね。

  

福田:女性の場合、お金を稼ぐことにそれほど重きを置いていない人が多いと感じるけど、自分で稼げる力を持っていると誰かに依存する必要もないし、対等な立場でいられるから、もっとそういう女性が増えてもいいと思う。

石井:あと日本社会に渦巻く、「稼ぎすぎると結婚できない」みたいな価値観をなくしていかないとね。

福田:すごく思う! 賢い女性の中には、「馬鹿っぽく振る舞う方が、人生がうまくいく」と気づいていて、本来の能力を隠している人も多い。そうやって女性の可能性に蓋(ふた)をしてしまうのは日本全体にとっても大きな損失だと思う。 男性女性の単純な二元論で語る気はもちろんないけれど、「私はもっとできるはず」と、くすぶっている女性は多いと思うんです。SHEはそんな女性たちに、「未来にはもっと可能性があるんだ」という希望を届けて、人生をより楽しんでもらえるようにしたいと思っています。   

<編集後記>
長い時間をかけて、多くの女性たちの努力の上に、女性の権利や自由は確立されてきた。今もなお続くその戦いの最前線で、スキルを武器に戦い続ける彼女の目には、女性たちが軽やかに日々を生きてゆく未来が映っていた。 21世紀を生きる女性たちは、これから何を求め、何に熱狂して生きていくのか——。“女性観”も”職業観”もアップデートされ続ける今日、女性が“夢に震える”時代の足音が聞こえてきた。 (文:佐々木希海、編集:小原光史、写真:なかむらしんたろう)

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