「光るシルク」を使った動物や人のインスタレーション
尾崎ヒロミ×串野真也が生命のあり方を問う

進化するテクノロジーと生命倫理の問題は、2019年以降も議論を起こしそうだ。2018年11月末には、中国でゲノム編集した受精卵から双子の赤ちゃんが誕生したというニュースがあったばかり。そんな中、遺伝子組み換えのカイコから生まれる「光るシルク」を使い、テクノロジーや生命、人間のあり方について見つめ直そうというバイオアート作品が披露された。

アーティストの尾崎ヒロミ(スプツニ子!)さんとファッションデザイナーの串野真也さんによるアートユニット「ANOTHER FARM(アナザーファーム)」が発表したインスタレーション「Modified Paradise(モディファイド・パラダイス)」。東京・南青山にあるレクサスのブランド発信拠点「INTERSECT(インターセクト) BY LEXUS – TOKYO」で一般公開されている。

「Modified Paradise」

「Modified Paradise」は12月28日まで一般公開

「書き換えられた楽園」では、人間も支配されている?

ANOTHER FARMは、「スプツニ子!」の名前でジェンダーやフェミニズムなどをテーマにした作品を制作している尾崎さんと、シューズデザイナーとして知られる串野さんがコラボレーションし、実験的な制作活動を行っている。作品では、科学者やエンジニアと協力し、人間と自然の新しい関係性を模索しながら、最新のテクノロジーと伝統技術を駆使。過去のコラボ作品「トランスフローラ」は、英国ビクトリア&アルバート博物館の永久収蔵品となっている。

初となるインスタレーション作品「Modified Paradise」は、家畜やペットとして品種改良されながら人間とともに暮らしてきたネコ、ニワトリ、ウサギの動物たちと、人間自身を象徴するドレスを立体作品として展示。動物の皮膚部分やドレスには、「光るシルク」を西陣織で紡いだ生地が使用されている。

光るシルクは、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したもので、量産化が始まっている。カイコにクラゲの遺伝子を投入することによって、吐き出す糸を光らせることに成功した。

「Modified Paradise」

ネコの姿はキュートでもあり残酷にも見える

暗闇の中に浮かび上がる作品は、かわいらしくもあり、どこか不気味さも感じさせる。「私たちの倫理観とか美意識も密接に生命と関わっているからこそ、アートを通して考えたり、倫理観を問い直したり、可能性を探ったりするのも、すごく大事なステージに来ていると思う」と、尾崎さんは制作意図を語っている。

ウサギの中には市販のおもちゃが内蔵されており、ドレスの足元を自由に動き回る。だが、フレームの外にはなかなか出られない。串野さんは「人間自体も、自分たちが全てのものをコントロールしているようで、人間が人間によって支配されているというか、実は動物たちと同じような立場にあるんじゃないかと、今回は作りました」と話す。

尾崎さんは「『modify』には『書き換える』という意味があって、書き換えた先がパラダイスなのかそうでないのかはグレーのままなんですけど。パラダイスの持つユートピア的なイメージ自体が書き換えられているのかもしれない」と、タイトルについて説明している。

「Modified Paradise」は、INTERSECTの1階で自由に鑑賞できる。光るシルクを使って美しい模様も織り込まれており、はっきりと見えるように特殊なグラス眼鏡も用意されている。

グラスを使って見た作品

グラスを使って見た作品(右)

西陣織の細尾さんは「スパイダーシルク」に興味

一般公開に先駆けて13日には、尾崎さん・串野さんの2人と、西陣織の老舗「細尾」常務の細尾真孝さんによるトークセッションが行われた。ファッションなどを通じて西陣織のブランドを世界に発信している細尾さんは、今回の作品にも協力している。

トークセッション

公開前日のレセプションで開かれたトークセッション

ANOTHER FARMとして2人が公式の場に出るのは初めて。ユニットを組んだ経緯や、これまでの活動を振り返った。ユニット名の由来は、「別世界での生のあり方」というニュアンスも込められており、ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』を意識しているという。

作品のテーマについて、串野さんは「江戸時代にも、菊や桜など植物の品種改良は盛んに行われていた。美意識のようなところを求めていった結果、交配が増えた」、細尾さんは「カイコも何千年も交配を続けて、ガになったとしても飛べない。糸をつくり出すための生き物になっている」と話した。尾崎さんは「今のゲノム編集を見て『うわー、こんな時代になっちゃった』と言っているけど、家畜の歴史を考えると、人間は既にずっとやってきた」と、時代とともに変わっていく倫理観の難しさを語った。

話題はANOTHER FARMの今後の展開へと広がった。細尾さんは、農研機構で開発されているスパイダーシルク(クモの遺伝子を組み込んだカイコの作った糸)の強度について触れ、「ぜひ宇宙も絡めて、面白い作品やプロジェクトを」と提案。串野さんは「社会に対してメッセージを伝えていくような作品を作っていきたい。今後の活動に期待していただけると幸いです」と締めくくった。

写真

(左から)Lexus Internationalの宮永悦充さん、串野真也さん、尾崎ヒロミ(スプツニ子!)さん、細尾真孝さん

レクサスでは、フラッグシップセダン「LS」に切子調ガラスの内装を採用するなど、伝統を踏まえながら革新を続ける日本のものづくりの技術や精神を重視し、積極的に発信している。社会や環境に配慮しながらテクノロジーを創造的に活用するブランドの考え方から、ANOTHER FARMの姿勢やテーマに共感して今回の展示をサポートしたという。
(文・写真 北林のぶお)

「INTERSECT(インターセクト) BY LEXUS - TOKYO」

カフェなども併設されている「INTERSECT(インターセクト) BY LEXUS – TOKYO」

ANOTHER FARMインスタレーション展示「Modified Paradise」
日時:12月14日(金)~28日(金)
会場:INTERSECT BY LEXUS – TOKYO(東京都港区南青山4-21-26)
URL:https://lexus.jp/brand/intersect/tokyo/

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