小川フミオのモーターカー

ジウジアーロが手がけたフォルクスワーゲンの原点 初代シロッコ

フォルクスワーゲンをやや強引に大きく二つの時期に分けるとしたら、いまに続く第2期の原点ともいえるのが、1974年発表の初代「ゴルフ」と、ゴルフより少しだけ先に発表されたこの初代「シロッコ」である。私はこのスタイルがいまも大好きだ。

シロッコは当初、ゴルフの大型版として企画され、ジョルジェット・ジウジアーロひきいる「イタルデザイン」にデザインが発注されていた。しかし、途中でフォルクスワーゲンの会長が交代したためコンセプトが変更されている。

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エンジンとドライブトレインはゴルフと共用だった(Volkswagen Group提供)

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「TS」以外のモデルは角形2灯式だった(Volkswagen Group提供)

ジウジアーロはドイツ的ともいえる理知的なパッケージと、イタリア的なエモーショナルな要素をうまく合体させた2ドアのスポーティークーペとしてデザインし直した。

短いルーフと後ろにいくに従い上へあがっていく車体側面のキャラクターラインと、それにホイールアーチを際立たせて車輪の存在感を出すことでスポーティーさをうまくかもし出している。

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ほぼ垂直にカットされたリアエンドには空力用のスポイラーが設けられていて”科学”とエモーションの合体だ(Volkswagen Group提供)

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ゴルフと同様の機能主義的なダッシュボードはスポーツモデルのシロッコにはちょっと似合わない(Volkswagen Group提供)

3874mmの全長と、1624mmの全幅は、姉妹車ともいえるゴルフよりすこし大きめだが、全高はより低く抑えられ、結果として低く幅広くみえるプロポーションが実現している。これもシロッコを大きく特徴づけている点だ。

ジウジアーロの手になる当時のアイデアスケッチを見ると、本人としては、よりスポーティーなデザインにしたかったようだ。しかし生産効率や、フォルクスワーゲンが持っている市場の性格を考えると、高級スポーツカーではないシロッコでは、この辺りでガマンするしかなかったのだろう。

当初はベーシックモデルは1リッターで登場。ほかに1.4リッターや1.5リッターのエンジンが用意された。1976年には、ドイツではゴルフGTIと同じ110馬力の1.6リッターエンジン搭載の「GTI」(同じ出力でぜいたくな装備の「GLi」もあった)も追加された。これは私にとって憧れのクルマだった。

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イタルデザインによるデザイン案は幅広くマセラッティを思わせるところがある(Italdesign提供)

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当時のイタルデザインが手がけたモデルの多くの要素が入っているデザイン案(Italdesign提供)

日本ではピュアな機能主義のゴルフがもてはやされ、正規輸入車では240万円を超えたシロッコは、うまくイメージが喧伝(けんでん)されなかったのか、販売成績以前に存在そのものがぱっとしなかった印象がある。“残念なクルマ”である。しかし、スタイルはいまも古びていない。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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